当事者本人の筆なので、客観性の欠如は否めない。特に著者
逮捕のきっかけとなった実弟の動きには謎の部分が多い。この
部分が明確になれば…ともどかしさを感じる。
それでも、検察の「まずは事件ありき」の姿勢には唖然とさせされる。
著者や関係者に対する東京地検特捜部による取り調べの様子は、
記憶にも新しい
...続きを読む障害者郵便不正事件とあまりにも重なり過ぎる。
「知事は日本にとってよろしくない。いずれは抹殺する」
著者の実弟の取り調べを担当した検事の言葉だ。贈収賄事件は政治家
などの公的身分のある人間が関わっていなければ事件として成立しない。
水谷建設が絡んだ一連の事件のなかで、霞が関と喧嘩をして来た著者が
検察から格好の獲物にされたのではないか。
謂わば、パズルのピースを探していたのではないだろうか。
結局は有罪判決が出るのではあるが、東京高裁は賄賂額ゼロという
判断を下した。汚職事件では前代未聞ではないのか。
さて、検察の取り調べの模様や公判の過程よりも興味深いのが、知事
時代の著者の活動である。
特に福島原発及び東京電力への対応に関しては、現在の原発事故を
予言したようでもある。決して反原発ではなかった著者が、東京電力の
事故隠し・データ改ざんに憤り、不信感を深めていく様はまさに今の
避難地域住民の感情とシンクロするであろう。
鎌田慧『原発列島を行く』では電力会社が過疎地域を金の力で原発立地に
変えて行く様を知ったが、本書では電力会社及び原子力安全保安院の
いい加減さを改めて知った。