伊藤薫のレビュー一覧
-
-
Posted by ブクログ
映画「八甲田山死の彷徨」を見た人なら、徳島大尉に憧れたことだろう。高倉健演じる徳島は冷静沈着、用意周到で、寡黙ながら思いやりを感じさせた。ところがどっこい資料を丹念に調べると全く正反対だったりする。この企画そのものが福島氏(映画では徳島)の出世欲と虚栄によって成立した側面もあるようだ。ただ確かに冷静沈着で用意周到ではある。案内に立った地元の村人への扱いが苛烈極まることが映画との決定的な相違で、村人たちは後遺症に苦しめられ、悲惨な余生を送った者もいたという。もう一方の神成大尉たちのダメさは言うに及ばず。著者は現役自衛官時代に八甲田山の雪中行軍を実体験しているのでその経験も活かした叙述には信頼を置
-
Posted by ブクログ
ネタバレ映画「八甲田山」は観たことはなかったが内容はなんとなく知っていた。やはり映画と同じように成功したほうの隊のトップはちゃんとした人なんだろうなと軽い気持ちで読んだら全く違っていたので驚いた。どちらの隊でもこんな上司の下で働くのは嫌だ。ましては生死が関わる場所でのところとなると・・・。部下を人と思わず、道案内人の恩を仇で返すような態度をとる上司って本当にどこの時代でもいるんだな。こういう人たちがいなくなればもっと日本が、世界が変わっていくんだろうな。
本当に備えあれば患いなしです。
防げたであろう事故だったのにと思うと亡くなった人たちが可哀そうです。 -
-
-
Posted by ブクログ
著者は元自衛官。八甲田山の遭難事故については、新田次郎の本や映画を見たことがあり、多くの人達はそれが真実だとして受け止めているが、様々な資料生存者の証言で検証してみると、多くの点で間違いがあるらしい。著者は、青森の自衛官時代の経験をもとに丁寧に当時の状況を考察しており、大変面白く読めた。映画では、有能だが不遇な神田大尉と統率力がある徳島大尉という架空の人物として主人公が設定され、二人の指揮官の物語とされていた。モデルとなった実際の二人は、著者によると映画とは性格がかなり違っていたようだ。また映画では分かりにくかった装備の問題(ソリ等)、情報収集の問題(目的地の情報が不明、地図が大雑把)、段取り
-
-
購入済み
八甲田山遭難の原因がわかる!
当時の新聞や、生き証人の証言をもとに書かれている。八甲田山の遭難の原因が、何であったのかが検証されていて、よくわかる。大変読みごたえのある一冊!
-
Posted by ブクログ
ネタバレ事故報告の隠蔽や捏造は現在でもよくあること…。
また第五聯隊が遭難中に関わらず、転出将校の送別会を優先というのも、問題が起きてもゴルフや会食を継続する現政府に通じるものがあります。助かった第五聯隊の殆どが下士官であり、一般兵卒でなかったところもまた、今も昔も犠牲になるのは下の者なのだな、という印象です。
計画は師団長からの命令ではなく、福島大尉の考えであったこと、それに対抗した津川聯隊長が第五聯隊第二大隊に命じたこと、というのが「八甲田山死の彷徨」と大きく解釈の異なる点と思います。小説では第三十一聯隊の徳島大尉(福島大尉)が人格者であり、計画に際しても少数精鋭を選び抜いた印象でしたが、実際 -
Posted by ブクログ
この本を読んでかえって『ストーリーの強さ』を実感した。
これだけの資料・証言をもって史実の八甲田事件を語られてもなお、映画や小説の八甲田を信じたくなる。「ウチらの健さんを悪く言うな!」とさえ。人はつくづく信じたいものしか信じない。真実は異なることをわきまえた上で「こうだったらいいな」のストーリーを持つのが読者の務めだ。
本書は現実を知るという意味では非常に役立ったが、そのためだけに読むには堅く長くちょっと労力がいる。
ご本人が自衛隊出身とのことで、軍に対する厳しい批評的な目線を感じる。
特に第五連隊がパニック離散したところは、一般人の私からすると自分の命第一優先な状況で当然、むしろそれまで -
Posted by ブクログ
ネタバレ事件後に陸軍大臣等に出された報告書を検証しつつ、事件の全体像を描いている。
基本的に事前の準備がほとんどできていない。現地踏査もしていない。
露営も非常に安易に考えられている。
事件報告も、聯隊長等が非難されないよう都合良く事実をねつ造している。
ただ、遭難して寒さのため責任行動がとれず、十分に思考されたとは思えない行動を辛辣に非難しているのは酷ではないか。
全体的に聯隊長を初めとした幹部に対しての批判は、やや感情的に過ぎる気もしないでもない。
生存してほぼ無傷の倉石大尉らについて、何故なのかと思っていたが、それは服装に注意が払われていたから。それは装備が自弁の将校だからなせること。さらに日清 -
Posted by ブクログ
ネタバレこういう解釈もあるというところが、妥当かと。
映画「八甲田山」やその原作小説が史実のように思われるのに憤慨するのはわかりますが、キレてどうすると。
5連隊長の捜索の遅れですが、二次遭難を考えたのかもしれません。ただ、200人遭難して、1人の救助に13人と仮定すると、連隊規模を越えるので、さっさと師団案件にするべきではありました。
凍傷対策における情報の共有がなされていないのは、組織としてどうなのかと。
証言、当時の新聞、公式資料を基にしていますが、それらの信頼性は低いと思います。
助かった人の証言も、低体温症で空腹の状態で日時、場所、誰が何を言ったなんかを憶えていられるものでしょうか。
文中に