栩木玲子のレビュー一覧

  • 無限角形 1001の砂漠の断章
     娘を失った実在のイスラエル人とパレスチナ人を主人公とした小説。
    二人は子供をなくした親が入る「親の会」の会員として深い友情で結ばれており、各地でのスピーチなどの二人の活動/言動が主軸として描かれる。
     二人は復讐や恨みを越えて、「話し合わなければ終わらない」をモットーに世界各地で講演を続けている共...続きを読む
  • 無限角形 1001の砂漠の断章
    子を亡くした市井の人々のパレスチナ問題への取り組みは対話すること、そして他者へ物語ること。

    様々なエピソードを交えながら、断片的に語られる1001の物語。

    一面を囲う壁の鉄条網の上に羽ばたく鳥の中、裏表紙を開いたところで、唯一のモノクロではない赤い風船が宙を舞う本のカバーイラストに、何かを感じざ...続きを読む
  • 無限角形 1001の砂漠の断章
    星6つ、いや7つでも足りないくらいだ。
    政治史、外交史では捉えられない空気を体験できる稀有な書。アイルランド出身でアメリカ在住の作者は、パレスチナ問題の当事者カナファーニの「ハイファ…」が訴えかけるのとは全く別の地平を視界に入れている。もはや政治的なもの一切が信用できないこの世界を動かすためには、こ...続きを読む
  • とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢
    面白かった!

    どの話もバイオレンス感が強く、「狂」が濃く漂うまさしく悪夢。

    人種問題やきょうだいの確執など明確なテーマが組み込まれており‘ただの不思議な物語’には収まらない奥行きを感じる。

    p459の訳者あとがきに曰く「ミステリー、ホラー、ファンタジー、幻想小説、あらゆるジャンルをまたぐような...続きを読む
  • とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢
    海外のミステリ/ホラー系アンソロジーの読者ならおなじみの、ジョイス・キャロル・オーツの短編集。文学系の長編はともかく、ホラー系の短編はあちこちのアンソロジーで探して読むしかなかったから、こうしてまとめて出るのは嬉しい。その代わりに初訳は半分ほどのようだ。収録作はどれもグロテスクで胸糞なエピソードを描...続きを読む
  • とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢
    現代社会に生を受け、生きていかなくてはいけない私に、冷や水をこれでもかと浴びせる本。
    しかし、冷や水はただ生を拒否させる類ではなく、生きる力や慰めを伴う甘さも含んだ、一筋縄ではいかない作品群。
  • とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢
    稀代のストーリーテラー、ジョイス・キャロル・オーツが語るのは心の闇。嫉妬、孤独、欲望などが怒りを暴走させ、狂気や残虐さを生み出す過程だ。それは他人事のように書くのではなくその心を巧みに描くことで読者は気持を同化させてしまう。そんなことより話の展開が面白いから読後にふと気づいてそのことに怖さを感じる。...続きを読む
  • とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢
    二項対立的な人物配置が面白い。
    表題作の「とうもろこしの少女」はいわゆる恐ろしい子供ものではあるが、ただ被害者として描かれた少女に人格がないように見えるのが特色か
  • とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢
    もっと残酷で、おぞましい話を沢山読んでいたりするのに、グッと引っ張り込まれるオーツの短編に冷や汗。
    子育て失敗したとか悔やむ母にはキツかった…orz
  • とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢
    悪夢に絡め取られていくかのような登場人物達が語られる7編。
    「タマゴテングタケ」とか読んでて胃の辺りが重苦しくなってくる。
    「化石の兄弟」同じ遺伝子、生まれた日さえ同じという存在に向ける愛憎。萩尾望都「半神」を一寸思わせる。
    「頭の穴」手術シーンの泥沼にはまりこんで身動き取れなくなっていくような怖さ...続きを読む
  • とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢
    ・ジョイス・キャロル・オーツ「とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢」(河出文庫)を読んだ。実を言へば初めて読む作家であつた。名前は知つてゐた。しかし、それだけであつた。年齢も90にならうといふ人であり、しかも多作といふ形容詞が必ずつけられるほどの人であるらしい。それを知らずにきた。なぜか読む機会に...続きを読む