【感想・ネタバレ】とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢のレビュー

あらすじ

金髪女子中学生の誘拐、双子の兄弟の葛藤、猫の魔力、美容整形の闇など、不穏な現実をスリリングに描く著者自選のホラー・ミステリ短篇集。世界幻想文学大賞、ブラム・ストーカー賞受賞。

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Posted by ブクログ

面白かった!

どの話もバイオレンス感が強く、「狂」が濃く漂うまさしく悪夢。

人種問題やきょうだいの確執など明確なテーマが組み込まれており‘ただの不思議な物語’には収まらない奥行きを感じる。

p459の訳者あとがきに曰く「ミステリー、ホラー、ファンタジー、幻想小説、あらゆるジャンルをまたぐような、少しずつすべてであるような、こわくておもしろい」点が大いに魅力的。

いずれかのジャンルが好きであればまず満足できるであろう作品集。


1刷
2021.4.10

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2021年04月10日

Posted by ブクログ

海外のミステリ/ホラー系アンソロジーの読者ならおなじみの、ジョイス・キャロル・オーツの短編集。文学系の長編はともかく、ホラー系の短編はあちこちのアンソロジーで探して読むしかなかったから、こうしてまとめて出るのは嬉しい。その代わりに初訳は半分ほどのようだ。収録作はどれもグロテスクで胸糞なエピソードを描いてるのに、読後感は決して悪くなくて、これがオーツの色なんだなあと思わせてくれる。

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2021年01月07日

Posted by ブクログ

現代社会に生を受け、生きていかなくてはいけない私に、冷や水をこれでもかと浴びせる本。
しかし、冷や水はただ生を拒否させる類ではなく、生きる力や慰めを伴う甘さも含んだ、一筋縄ではいかない作品群。

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2022年02月02日

Posted by ブクログ

稀代のストーリーテラー、ジョイス・キャロル・オーツが語るのは心の闇。嫉妬、孤独、欲望などが怒りを暴走させ、狂気や残虐さを生み出す過程だ。それは他人事のように書くのではなくその心を巧みに描くことで読者は気持を同化させてしまう。そんなことより話の展開が面白いから読後にふと気づいてそのことに怖さを感じる。表題作は美しい金髪の女子中学生を生贄のために誘拐する歪んだ女の子の話。誘拐された被害者、その母、誘拐犯、はめられる教師、それぞれの心がまるで悪夢のように、善悪ではなく起きている事象だけが描かれる。ラストは明確な解決や結末が用意されていない。差別や劣等感をストレートに書き対立が生む歪んだ怒りをフェアに描く。スティーブンキングと並ぶホラー作家としても評価されるが、ホラーではないしミステリでもファンタジーでもない。ちょっとそんな香りがふと舞い上がるシーンがあるだけだ。最近はノーベル文学賞候補に毎年名が上がる現代アメリカ文学の女王だけのことはある。

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2020年11月16日

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二項対立的な人物配置が面白い。
表題作の「とうもろこしの少女」はいわゆる恐ろしい子供ものではあるが、ただ被害者として描かれた少女に人格がないように見えるのが特色か

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2018年12月17日

Posted by ブクログ

もっと残酷で、おぞましい話を沢山読んでいたりするのに、グッと引っ張り込まれるオーツの短編に冷や汗。
子育て失敗したとか悔やむ母にはキツかった…orz

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2018年02月16日

Posted by ブクログ

悪夢に絡め取られていくかのような登場人物達が語られる7編。
「タマゴテングタケ」とか読んでて胃の辺りが重苦しくなってくる。
「化石の兄弟」同じ遺伝子、生まれた日さえ同じという存在に向ける愛憎。萩尾望都「半神」を一寸思わせる。
「頭の穴」手術シーンの泥沼にはまりこんで身動き取れなくなっていくような怖さ、死体を処理するシーンは滑稽ささえ感じられてくる。
「私の名を知る者はいない」両親、周囲の関心も愛情も生まれたばかりの妹に向かっていると感じてしまう幼い姉の不安や焦燥。果たして猫は本当に存在していたのか?
一番印象に残るのは「とうもろこしの乙女」。マリッサ、母親、講師の身に起こった事はまさに悪夢に他ならず、ジュードのしたことは決して許されるものではないが、両親から見放され一緒に暮らす祖母も決して愛情深く接してくれず、世界に敵意と怒りを感じていた13歳の少女は、とうもろこしの乙女の儀式により何を願い、叶えようとしたのだろう。

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2019年03月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

・ジョイス・キャロル・オーツ「とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢」(河出文庫)を読んだ。実を言へば初めて読む作家であつた。名前は知つてゐた。しかし、それだけであつた。年齢も90にならうといふ人であり、しかも多作といふ形容詞が必ずつけられるほどの人であるらしい。それを知らずにきた。なぜか読む機会に恵まれなかつたといふだけかもしれない。それにしてもと思ふ。本書がおもしろかつたのである。
・本書は表題作「とうもろこしの乙女」が3分の1を占める。170頁弱、中編であらう。へたをするとこれで一冊にさへなりうる分量である。物語は、主人公 が6年生の時に博物館に行き、オニガラ・インディアンの展示を見たことに始まる。そこで「とうもろこしの乙女に釘付けになった。三つ編みにしたゴワゴワの黒髪、平らな顔に虚ろな目、それにぽかんと開いた口。恐怖すら通り越して驚くだけの表情がジュードのハートを射抜いた。」(8~9頁)からである。これを機に事件が起きる。同じ学校の年下のマリッサが誘拐、監禁される。警察に手がかりはない。生徒の証言から、ある臨時教師が犯人扱ひされる。さうかうするうちに……といふわけで物語は進む。このやうな物語の場合、被害者の関係者は得てして普通ではない行動をとる。ここでは母親である。帰つてこないと分かつたらすぐに然るべき手段をとれば良いのに、どうもそれをためらつてゐるらしい。わざわざ回りくどく書いてゐるだけかもしれないのだが、それにしても回りくどい。せつかちな私はこのあたりでいらだつ。しかし、これも「技を駆使したリアルな人物描写」(452頁「役者あとがき」)の一つだと考へれば納得がいく。 読む人をしていらだたせるのは相当な力量であらう。主人公のジュードにしても似たやうなものではないか。わざわざ母親を見舞つたり、手下の少女が身を引きつつある中でも譲らない態度は、ある意味、普通ではない。臨時教師にしても同様であらう。かういふのがオーツの特徴であらうか。「化石の兄弟」の兄と弟の葛藤もその例と言へる。葛藤といつても、兄が一方的に攻め弟はただ何もしないであるだけといふ感じだから、実際には葛藤などないもかもしれない。「タマゴテングタケ」の双子の弟はこれより葛藤してゐる。そして兄を殺さうと思ふのである。弟の殺意を招いた兄の態度も相当なものである。ただし、両方とも死ぬ時は一緒で、「化石」では古い家の中で、「タマゴ」では交通事故で死ぬ。兄も弟も死ぬのである。盛者必衰の理ではあるまいが、裏と表の関係は死ぬまで変はらないとでもいふのであらうか。それならばもつと書きやうがあらうにと思はないではない。そんな事情もあつて、やはり読んでゐていらだつてくることがある。 「ふだんはフタをしてあまり目を向けたくない、ちょっと油断するとすぐに暴走してしまいそうな心性を、どんな技巧を用いれば効果的に描き、伝へることができるのか。オーツの作品は、スタイル、プロット、話法、人称、構成、時代設定、果ては字体に至るまで、ベストな技巧を考え抜いた結果として存在する。」 (457頁「訳者あとがき」)のであるらしい。さう、確かにそんな「心性」を描いてゐる。それが見事であるゆゑに、オーツの登場人物から私はいらだちを感じるのであらう。それがおもしろいと言へるかどうかは、実は分からない。ただ、そんな作家はそれほど多くない。いや、ゐるのであらう、たぶん。ゐてもオーツほど見事ではないだけ、それでお終ひなのであらう。そんなわけで、私は本書をおもしろいと書いたのだが、実際はどうなのであらう。他の作品も読んでみようと思ふ。

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2018年03月04日

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