谷口長世のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
この著者が、あのアンネ・フランク一家を自らの命をかけて助けたというミープ・ヒースに直接会い、話を聞いたということが知れただけで、既に物凄い価値がある。
遺憾ながら彼女は2010年に逝去してしまった。
しかしながら、彼女が語るアンネ・フランクの姿は、たとえ戦争が終わって何年経とうとも後世の人間を引き留め、往時に想いを馳せようとするのだ。
ヒトラーが苦労人だったことや、隠れ家を密告した人はいなくて、SSが偶然見つけたかもしれない、なんてこともこの本から知れたことだ。
とにかく著者の取材範囲が広く、深い。
1985年5月、西ドイツ大統領の ワイツゼッカーの演説
「過去に目を閉ざす者は、現在においても盲目である。」
その言葉が頭に深く刻み込まれた。
戦争、ホロコーストを知らないこと、それは当時に生きていないのだから当たり前で、仕方の無いこと。
しかし、知らないからどうでもいいと他人事として流してしまっては、事が前に進んでいかない。
誰もが当事者意識を持ち、過去を自分のこととして受け止め、問題意識を持つことで、戦争を起こさせない世界を作る、保っていくことに繋がるのではないか、と思う。
本書のジャンルは岩波ジュニア新書だが、中身はかなり骨太で大人向けである。
お気に入りの1冊になった。
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Posted by ブクログ
【アンネの足跡から歴史の教訓へ】
ちょっと軽い感じのタイトルのノリから、最初はアンネの楽しい思い出を巡る旅かと思ったら、
著者がアンネの足跡を辿り、過酷な時代に想いを馳せる、ノンフィクションだった。
本書を読む前に『ヒットラーのカナリヤ』と『あのころはフリードリヒがいた』を読んでいたため、人間の弱さや愚かさ、優しさと強さが、まさに点と点が線で結ばったように感じた。
特に、命懸けでアンネ一家を支えたミップ・ギースの証言には、『ヒットラーのカナリヤ』の主人公の家族が人間らしさを失わずに抗った姿が重なった。
しかし生存者の語る収容所の体験談は命が軽く扱われ、「なぜアンネや何の罪もない普通の人々が殺され傷付けられなければいけないのだろう」と言葉が出ない。
そして歴史の結果を知っているだけに、過酷な状況でもユーモアを忘れなかったアンネの笑顔が脳裏をよぎり、切なさが込み上げてくる。
特に印象的だったのは、ヒトラーが当時の国民の選挙によって「合法的」に誕生したという事実。
現代もポスターやSNS、知名度だけで政治を判断すれば、第2、第3のヒトラーを自分たちの手で生み出しかねない。現政権も「戦争ができる国」へとじわじわと近づく危うい世情に強い危機感を覚える。
作中にあるアイゼンハワーの「軍産複合体」への警告も重い。「防衛」を理由にした武器開発競争や輸出は、周辺国の軍拡に拍車をかけ、平和と逆走しているように思えてならない。
ジュニア新書と侮るなかれ、大人にとっても骨太な内容に深く考えさせられた、今こそ読まれるべき一冊。 -
Posted by ブクログ
新聞記者からジャーナリストに転じた筆者が、世界の軍事状況をサイバー空間をメインに説明している。筆者はフリーのジャーナリストなんだろうか。各国の要人や、現場でのかなり中枢の部分にも取材源があるようだ。
冷戦時代と違って「多極化」と言われる現代において、「どこか特定の国や組織の陰謀が全てを牛耳っている」ような単純な図式があり得ないことが読み取れる。
情報や技術の進歩によって汎用化され、超大国でなくても軍事面・地政学的なリスクとなり得るようになった結果、各国、ひいては各々の企業、団体レベルでの思惑が絡み合い、それぞれの目先の利益のための行動が「誰にも止められれない」状況を作り出して収拾がつかなくなっているのではないか、という感想を持った。 -
購入済み
サイバー時代の戦争
かなり具体的に世界のサイバー事情の内容が記述されており筆者の谷口長世氏の長年の努力が感じられる。1991年にソ連が崩壊したのち新たな第五の空間であるサイバー世界がヘゲモニーをとるための条件になった。しかし、サイバーの奥深さ、制御できない一面がサイバー世界を混沌とさせている。しかし、毒は毒で制すというようにネットはネットで制す必要があることを述べており、そのためにはどのようにネットと向き合えばいいのかというのが書かれている。
時折筆者が入れてくる情景描写が緊張した場面を和らげ重々しい内容にもかかわらず読みやすかった。
この本を読んでよかったと思うのは混沌としたサイバー世界を少し理解することができ、なぜネットの世界は不気味なのかを理解できたことだと思う。 -
Posted by ブクログ
タイトルがよくない。
サイバーとかレトロフューチャーな言葉出しちゃってまぁ。
でも、内容はしっかりしている。
著者がしっかり取材をして影を追っているというのがよく分かる。
だが、ここには主体が見えない。
この本が描こうとしたのは、技術的な問題ではない。
この状況における主体性の希薄さだと思われる。
クラウド的な主体がアメリカから湧き上がっている。
気がつけば雲が上を漂っている。
おそらくそれ自体を避けることはできない。
雲はどのようにしても影を落とすだろう。
直接対峙するというのではなく、態度を示すことが
唯一有効な方法であるように思う。
主体性を明け渡さないという態度を。 -
Posted by ブクログ
サイバー戦争は21世紀で最も警戒すべき分野だと思っていたが、本書でいろいろな示唆を得られた。ネットを使って多国籍軍部隊を統合的に処理できるシステムが創られているが、実は今はすでにそれを凌駕するシステムができているのではないか、という可能性には恐れ入った。
・1982年6月、シベリアでパイプラインが大爆発したが、2004年3月のニューヨークタイムズは、それがCIAの仕業であるとリークした。
・2011年暮れ、イランはアメリカの無人偵察機センチネルを、GPSを利用して拿捕したが、実はその背後にはロシアがいそう。
・アメリカにある新唐人電視台という独立系テレビ局がある。中国人が対中国政府内容を放送し、中国からサイバー攻撃があるが、仕返ししている。
・キャサリーン・ガン:国連代表部を盗聴してくれ、というCIAからの英国への要請文をリーク。
・携帯のスイッチを切っただけでは、スイッチを遠隔操作でオンにして、周囲2メートルを盗聴することが可能。
・無人機だけを見ていてはだめ。それを支える全システムを一体として見るべき。
・アフガン戦争では、多国籍部隊を統括するネットワークシステムが構築されている。リビア戦争でもこれがあり、おそらく反リビア政府勢力はこれにリンクを許可されているのだろう。前者のネットワークを維持しているのはフランスのタレース社である。
・暗号システムの最大の弱点は、人間そのものである。にんげんの裏切りには勝てない。