農家の獣害対策としての罠猟を描いていたらいつの間にか食肉処理施設やジビエまで描写の手が広がっていたJK罠猟漫画の第8巻。
今巻はキョンとマガモの解体、狩猟肉処理施設、ジビエ料理について描かれている。
とくに印象に残ったのは狩猟肉処理施設。具体例をあげると、
・行政のガイドラインに従って、工程ごと
...続きを読むにエリアが仕切りで分けられている。
・白い衛生着・帽子・マスク・手袋などを着用して自身の汚れが肉につかないようにする。
・紫外線と熱でナイフを消毒する専用の消毒装置を導入している。
・解体した動物はチェックリストで捕殺時の状況や解体時の肉の状態を記録している。
このようにジビエを市場に流通させるにあたっては、食品衛生法にのっとり畜肉の処理施設と同程度の安全基準を求められる。細心の衛生管理によって泥や土にまみれた野生動物が安全できれいな肉となって人の口に運ばれるのだ。
解体手順についても、猟師と処理施設とで差異があるのが興味深い。
猟師は内蔵摘出→皮剥ぎの手順が多いが、作中の処理施設は皮剥ぎ→内蔵摘出としていた。
内蔵摘出は動物の体温を下げることで肉を傷みにくくする効果があるので猟師は先に内蔵を除去する場合が多いのだと思われるが、冷蔵設備がある処理施設では先に汚れの多い皮を処理して菌が肉につかないようにしている。
これも安全で美味しいジビエを市場に送り出すために考え抜かれた結果なのだろう。
残渣や食用に向かない屠体は機械で破砕・加熱・乾燥して堆肥にする。
捕獲頭数の多い地域では処理が追いつかないらしいが、野生動物を自分で埋設するのはとても大変。山中に獲物を埋めるのは何時間もかかるし、埋却作業を嫌って山中に放置する人もいる。そのため、処理する機械はないよりあったほうが絶対にいい。
作中の狩猟肉処理施設は獣害に困っていた農家がはじめたものだという話を読んで、農家と猟師の関係は現代でも変わっていないのだなと感じた。
農地は野生動物にとって格好の餌場になるため、大昔から農家は獣害に手を焼いてきた。
いっぽう猟師は狩りすぎると獲物が減ってしまうジレンマがある。
両者が同一地域で活動することでお互いの泣き所を相補することができた。あるいは農家自身が野生動物を捕獲する場合も少なくなかった。
しかし猟師の減った現代では仕留めたあとの処理が難しく、農家が自分で獲物の処理をすると本業に手が回らなくなってしまう。なので処理施設があることで農家は農業に集中でき、施設側は肉が手に入ると双方に利益がある。
農家と猟師が分業することでお互いの生業を確保できるという関係が現代でも続いている。
この漫画を読むと、野生動物とのいたちごっこに苦慮しながら食品を送り届けている生産者たちに頭が下がる思いがする。いつもありがとうございます。美味しくいただいております。