西東三鬼のレビュー一覧

  • 神戸・続神戸(新潮文庫)

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    戦中・戦後の神戸に棲む、ふてぶてしいまでに逞しく生き抜いていく人たち。そんな人たちや当時の神戸の様子を、俳人らしい目線で描かれた作品です。著者当人の言によると「フィクションではない」とのこと。

    登場人物達は、今の真面目な日本人にはちょっと想像も付かない人たちだと思います。今の時代だと絶対に受け入れられない人たちだけど、私は嫌いじゃない。

    私は神戸で青春時代を過ごしたので、開戦して1年が経とうというのに、大音量のジャズが聞こえてくるバーがあったくだりを読んで、神戸のお役所嫌いや、自由を何よりも尊び、他者に干渉しない気質はこの頃すでにあったのだなと、懐かしく思い出しました。

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    2025年08月03日
  • 神戸・続神戸(新潮文庫)

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    ボクのしっている神戸ではない。戦前のこれは本当に日本の話なのか?という感じ。憧れしかない。すばらしい。読み返せる一冊である。

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    2025年06月23日
  • 神戸・続神戸(新潮文庫)

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    第二次世界大戦中の神戸、アパートを兼ねたホテルに主人公は住む。そのまわりには日本人だけでなくエジプト、ロシア、台湾、朝鮮、ドイツなど様々な出自の怪しい人々が蠢く。
    戦時中だけに物資や食べ物は不足し、住むところに困ったり、体を売ったり、病気で死んだり、という悲惨な状況である。にも関わらず、生々しさがなく別世界の寓話のような仕上がりになっている。
    解説で森見登美彦氏が、三鬼とは天狗の異名だという逸話を取り上げ、著者の書きぶりを「フワリと宙に浮かんで人間たちの営みを俯瞰しているようでありながら、俗世で生きる彼らへの愛情ゆえに見捨てて飛び去ってしまうこともできない」と書いている。「千一夜物語」とも書か

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    2024年01月04日
  • 神戸・続神戸(新潮文庫)

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    ネタバレ

    この頃、生きて明日を迎える事がどれだけ大変だったかがよく分かった。個性豊かで人間味たっぷりの隣人たちがバタバタと死んでいくのはショックだが、それでも人々の毎日は続いていく。あまり感傷的にならずに記しているところが良かった。
    この時代を生きている人にとって死とはどういう感覚だったのだろう。空襲で亡くなった描写は現場の様子が目に浮かぶようだった。生きたい人たちの元にも、暴力的な死が一瞬でやってくるのが怖い。
    女たちがどんな風に神戸の街を生きていたか、考えるのも辛い。困窮の末に辿り着いた人もいれば、モラルの崩壊した人もいて、実情は分からない。でも戦争がなければこんな事にはなっていないだろう。
    どれも

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    2022年10月13日
  • 神戸・続神戸(新潮文庫)

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    何の情報で知ったのだったか、私の好きな作家さんが何人も絶賛してたので、読んでみることにしました。

    西東三鬼は俳人で、新興俳句系の句誌を創刊したりしてた。
    でも、俳人になる前は歯科医師、その後貿易会社役員など経歴が面白い。
    戦時中、京大俳句事件で執筆活動停止処分され、妻子を東京に置いて単身神戸に移住。
    これはその神戸の頃の回顧録的な作品。

    今まで、映画やドラマや小説で知っている戦争中の苦しさ、貧しさ、暗さ、悲壮感...
    その重さで戦争モノは敬遠しがちな私ですが、著者の淡々としていて、ユーモアあふれる文章にぐいぐい引き込まれてしまいました。
    しかも生活していたアパートとホテルの間のような止宿人

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    2022年07月23日
  • 神戸・続神戸(新潮文庫)

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    古い写真を見ながら読むと当時の風景が浮かび上がります。
    戦時中でも人はたくましくそれぞれの人生を生きていたんだと。

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    2021年08月01日
  • 西東三鬼全句集

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    「神戸・続神戸」を読んで、この人の俳句なら絶対好みのはずだと思ったらやはり予想に違わぬ好きな句揃いだった。こうして全句を通して読むと長い物語を読むよう。特に好きなのは初期作品。「滑走路犬と枯草馳けまろぶ/昇降機しづかに雷の夜を昇る」また、「緑陰に三人の老婆わらへりき」の不気味さは「わらへりき」によるものとする小林恭二の解説に膝を打った。

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    2020年10月05日
  • 神戸・続神戸(新潮文庫)

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    戦中戦後の神戸の猥雑な空気や人間模様が、淡々とした距離感と味わいで描かれ素晴らしい。私にとってこんな文章が書きたいと思うお手本のよう。場所柄時代柄の各国の人の交錯が梨木香歩の「村田エフェンデイ滞土録」を思わせる。一人一人の無名の人の持つ大きなドラマをさらりと書くセンスと腕前に感嘆。神戸の民衆史としても興味深い。

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    2020年08月28日
  • 神戸・続神戸(新潮文庫)

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    戦中、戦後を強かに生きた人々の喜怒哀楽が描かれているが、ちょっと不思議な読後感がある。コスモポリタンや自由を愛した人々というと何かが違う。国家の庇護を受けないが、その代わり国家の命令にも従わない。望むと望まざるとに関わらずそういう境涯へと至った人々が力強く生きていく様を、ほとんど心理描写を交えずに断片的に投げ出すように描いていく。この愛すべき人々との交わりに何かしらの感興や心の動きがあって俳人はこの散文を書いたのだか、生涯を損耗させるほど打ち込んだ俳句ではどうだったのか。俳句という器では任が重かったのか。虚子の花鳥風月では描けなかった経験だと思う。ただこれに催された感情の動きを何とか俳句という

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    2020年05月11日
  • 神戸・続神戸(新潮文庫)

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    『神戸・続神戸』は、新興俳句運動の中心人物のひとりであった俳人・西東三鬼が物した随筆である。太平洋戦争末期、三鬼が下宿していた神戸のホテルにおいて、住人たちが繰り広げていた狂騒的な日常を描いたものだ。

    三鬼自身も戦時下で反戦的な俳句を詠んだとして検挙された経験もある人物だが、『神戸・続神戸』に出てくる人物たちは、それに輪をかけた曲者ぞろいである。どこからともなく貴重な食肉を仕入れてくるエジプト人や、体ひとつで渡世している娼婦たち。ロシアの老婆は日本娘をドイツ兵に売りさばき、台湾の青年はバナナの密輸入に精を出す。男たちは闇物資を、女たちは体を売り、特攻や結核や空襲でゴロゴロと死んでゆく。

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    2019年09月07日
  • 神戸・続神戸(新潮文庫)

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    戦時中の日常風景が描かれていて、
    どんなことでもなんとか商売に繋げようとする人はいるもんだとか
    女を武器にして生き延びる逞しさであるとか
    学習としての戦争とはまた違った一面から
    当時の様子を知ることができた。

    書きぶりから
    案外楽しんでいたんだなと思ってしまいそうになるが
    そう思いかけたところで出てくる
    死の描写に現実を思い知らされる気分だった。

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    2024年10月08日
  • 神戸・続神戸(新潮文庫)

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    戦前戦後の日本人、特に女性はほんとにたくましい。生命力がすごい。パワーがページから溢れてくるようです。神戸の雰囲気も、いかにもな感じ。いろんなことがあったんだなあ、としみじみ感じました。今よりずっとダイバーシティが身近で、グローバリズムも相当。こんな社会で生きてた人は強かっただろうな。

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    2023年03月08日
  • 神戸・続神戸(新潮文庫)

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    こんなタイトルだけど、観光案内ではありませぬ。

    「まったくよくいうよ」私が友だちならそんな風にツッコミたくなるような語り口。
    サラリと、時に厳しさや悲しみさえ、ユーモラスな空気で運んでくる。
    彩り豊かな人々と世界。
    あの困難な時代が、なんとおおらかで「生き生き」と描かれていることか。
    そして、そこにある現実を思うとき、つっと何かが胸に留まる。
    人々の足音と息遣いが聞こえるようだった。

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    2022年05月20日
  • 神戸・続神戸(新潮文庫)

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     人にすすめられて読みました。で、びっくり!
     これは面白い。何はともあれ、神戸の本好きは必読(?)かも。神戸の空襲を挟んで数年間のトアロード、実録です。イヤ、すごい!

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    2022年02月19日
  • 神戸・続神戸(新潮文庫)

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    ネタバレ

    お世話になっている古本屋さんからオススメして頂いた一冊。

    著者の作品は初読みとなりましたが、著者が俳人だからなのだろうが味わったことのない文体に惹き込まれてしまいました。

    タイトルにある神戸は私の地元からほど近く、何度か私の地元の地名が出てきたり、知っている地名や通りが一層親近感を与えてくれたとはいえ、時は太平洋戦争の前後のストーリー。

    ストーリーというよりは日記に近い感じと言ったほうが表現としては近い気がします。

    登場する人物も個性豊かであり、それぞれの魅力が詰まっていますが、やはり本作の醍醐味は文体だと思います。

    日本語って奥が深いなぁ…

    改めて実感しました。

    説明
    内容紹介

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    2021年12月01日
  • 神戸・続神戸(新潮文庫)

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    高野秀行さん絶賛の本書。
    なるほど高野さんと同じ匂いのするユーモアが感じられて読んでいて楽しい。
    そのユーモアはよりお洒落な感じで、考え方も変わっていて面白い。
    くすっと笑える軽快な文体ながら、第二次大戦真っ只中のノンフィクションで、戦時中の日本人の日常と国際都市だった神戸の不思議さと、いろいろ考えさせられる作品。特に「続神戸」は戦争と戦後のどろりとしたものが急に迫ってきてハッとさせられる箇所が多かった。
    この頃のしたたかな日本人といまの日本人、なんだか全く別の国の人間な気がしてしまうな。

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    2021年06月23日
  • 神戸・続神戸(新潮文庫)

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    戦時下の神戸を描いたエッセイのような私小説のような一冊です。
    空襲や物資の不足があり悲惨な状況ではあるのでしょうが、登場人物はみなどこかしたたかで自分が大切にするものに従って生きており、哀れみを以て接するのも何か違うなと思います。当時の人々には当時の人々の人生があったのでしょう。ユーモアを持って飄々と暮らす西東三鬼や周囲の人々の人間らしさからか、遠い昔のことであるのが嘘のように思え、背表紙に「魔術のような二篇」と書かれているのもわかる気がしました。

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    2020年08月29日
  • 神戸・続神戸(新潮文庫)

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    小説かと思ったらエッセイ!これ全部事実なのか。
    なんと情緒溢れる作品だろう。
    舞台が神戸ということもあり、あのあたりでのエピソードかと思うと感慨深くなります。
    確かに古い文体なんですが決して古臭さは感じないキレのある文章。
    軽い口当たりで書いてるけど決して軟弱ではない文章。
    これは隠れた名作ではないでしょうか。

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    2020年04月10日
  • 神戸・続神戸(新潮文庫)

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    太平洋戦時下の神戸を舞台にした奇書。

    太平洋戦争さ中、神戸トーアロードにある朱色に塗られたホテル。そこには様々な国籍の人々と、娼婦でもあるバーのマダムたちが下宿人として住んでいた。東京を逃れこのホテルに移り住んだ俳人・西東三鬼が描く、ちょっと不思議な人間模様。

    西東三鬼は新興俳句運動の中心人物の一人として、戦意高揚の俳句作成や使う季語すら国から推奨される時代に、厭戦や反戦の俳句を次々と掲載したことから、治安維持法に基づく言論弾圧事件(京大俳句事件)に連座、検挙された人。
    そんな人物が描く戦中の神戸のホテルの住民は「エジプトのホラ男爵・マジット・エルバ氏」「通俗小説のヒロインの様な娼婦・波子

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    2020年04月06日
  • 神戸・続神戸(新潮文庫)

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    戦時下の神戸の下宿屋のようなホテル。さまざまな国の人たちがいて、それぞれの想い強い気持ちがあって、戦争に縛られているなか一生懸命生きている。それを俯瞰に見ている著者の文章が面白かった。解説で人生は近いと悲劇、遠いと喜劇、とあって、面白いと思ったのはそういうことなんだなと思った。続編の戦後編はツライ理不尽な…と悲しくなった。

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    2020年01月20日