アントニオ・G・イトゥルベのレビュー一覧
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家畜以外の扱いを受けながら、死と隣り合わせな凄惨なアウシュビッツの収容所で続けられた子供たちへの教育。そこで取り扱う八冊の本を管理する図書係のディタ。図書係と言ってもナチス公認では無いから、それを隠し通さねばならない。次に死ぬのは自分かも知れないという状態にありながら、家族を庇い合いながら、本を守り抜く。実話に基づいた話であり、物語には『アンネの日記』で有名なアンネ・フランクも登場する。
ディタは、目の前の現実から逃避するために人目を忍んで読書する。本の世界に没入する事で、想像の世界に友人を求め、悲惨な収容所から外の世界へ行けるのだ。読書には力がある。そう考えると、反対に私がディタのいる世界 -
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実話を基にした お話です。
アウシュヴィッツから 生きて出られるという奇跡
そして アウシュヴィッツで 正気を保てたのは
本という 心の支えがあったから・・・・
当時 本は 回収されてしまっていたけど
必死になって 隠し持っていた
よれよれになってしまった本が
子供たちにとって 笑いや 感動を与えてくれた・・・・
アウシュヴィッツについての本では
以前読んだ 夜と霧でも そうでしたけど
生き残るには 心が大事でした。
食べるものがなく 病気が蔓延している中で
生きていくのは どれだけ 大変なのか 想像もできませんが 本を読む事で 少しでも 悲惨な事を 理解できます。
この本は 夜と霧より -
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ネタバレ「アンネの日記」は捕まるまでの話だけれど、こちらは捕まってから解放されるまでのお話。以前、アウシュヴィッツに郵便があるという話があって驚いたけど、こちらは学校まであってさらに驚いた。家族収容所なるものがあったことにも。
話ももちろん素晴らしかったけれど、あちらこちらに名言が散りばめられている。特にヒルシュの話は本をあまり読まない人たちにも響きそうだと思った。
今更ながら、強制収容所の暮らしが想像以上に酷くて驚いた。その中でもみんなが逞しく生きていく姿にも驚いた。人は希望がなければ生きてはいけないのだと改めて思った。
主人公はアウシュヴィッツからの解放後、イスラエルに移住したけれど、そこでもまた -
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アウシュヴィッツには生半可な気持ちで行ってはいけない。昔、ポーランドに旅行する際に読んだガイドブックにそう書かれていたことを思い出した。
実話に基づいたフィクション。だけど真実が垣間見える。読んでいた沸き起こった感情や情景。作中にもあるように、「本は別の世界へ連れてってくれる。」そう、知らなかった世界へ。
戦争は人の心を蝕む。それでも本はどんな地獄でも希望の種になる。本当に勇気ある人は怖がる人。心強いユダヤ人リーダー、フレディ・ヒルシュはどれだけの人を救ったか。そして図書係エディタ。今も彼の意志を引き継いでいることは十分伝わる。
この本読むと杉原千畝のやったことがいかに神がかりであるかを -
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ネタバレこれを読み終わったあとの気持ちをなんと表現すればいいだろうか。
悲しくもあり、でも主人公の女性が生き延びたことへの安心の気持ちもわいた。この女性が収容所で見た光景はいくら生々しく語られたとしても自分には到底実感することのできない、それぐらい深いものだと思った。
この本はフィクションではあるが、主人公は実在していて、真実も書かれている本であり、当時収容所でどんなことが行われていたか、リアルを知ることのできる本。
自分はこの本を読んで、収容所の悲惨さを感じるとともに、人をそこまで狂気にさせてしまう環境の怖さも感じた。収容所で毎日ユダヤ人をガス室送りにしていたドイツ兵も、その環境にいなければ、きっと -
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アウシュビッツといえばアンネの日記は有名だけれど、そのほかの実話に基づくホロコーストの話はあまり気が進まなかった。現状のパレスチナの問題もあるが、あまりにも悲惨で胸が痛んで読み進められない、というのが大きい。けれどこの本は、本屋でてにとり、冒頭の一頁、
文学は、真夜中、荒野の真っ只中で擦るマッチと同じだ。マッチ一本ではとうてい明るくならないが、一本のマッチは、周りにどれだけの闇があるのかを私たちに気づかせてくれる。
で、読もうと思った。本が好きだからこそ、この本に出会えたわけだが、やはり、アウシュビッツの過酷な環境の中でも、本は、物語は、人々に希望と夢を与えたのだ。そして、やっぱり胸が痛くな -
ネタバレ 購入済み
ある少女の凄絶な人生
読書すら禁止のアウシュビッツ=ビルケナウ強制収容所。たった8冊の本を命を懸けて守る少女ディタ。絶滅収容所とも呼ばれるその中では、常に死の恐怖と隣り合わせ。1日に何千という命が何の躊躇もなく流れ作業のごとく殺されていく。さらに暴力、飢え、チフス、コレラ、悪臭、シラミ、強制労働。生きていくこと自体が辛い中にあって、人間らしさや希望を保つ原動力となるのは紙の本や教師たちの話す物語、生きた本だ。勉強や本が嫌いという日本の子どもたちにぜひ読んでもらいたい一冊。そして90歳近い現在のディタの生き様にも感服。
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アウシュヴィッツ=ビルケナウ。
移送された者はすぐに振り分けられ、弱者はそのままガス室に送られ、生き残った者は死ぬまで強制労働をさせられるという死の施設。
その一角に、家族収容所があった。そしてそこには学校があって、禁止されている本の管理を託された図書係の少女がいた。
飢えと死の恐怖がはびこる悲惨な現実の中、わずか8冊の本と生きた本(語り手)から語られる物語の世界は、人々の救いとなり、希望を与え続けた。
読みながら胸が痛くなるような厳しい現実の中にあっても、物語の世界に浸る喜び、新しい世界を知る喜びは、何ものにも奪われるものではないことを教えてくれる。
事実を基にしたフィクション。
でも、 -
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本によって人は
知識や知恵を得ることができる。
視野を広げることができる。
心を豊かにすることができる。
だからこそ強制収容所では本を所有することが禁止され、
そして、だからこそ図書係のディタは
アウシュヴィッツにおける、本の貴重な価値を理解した上で、
自分の意思で、
命懸けで8冊の本を守った。
ディタの勇気によって何百人ものこどもたちが
たとえ一瞬だとしても
本を通じて現実を忘れることができた。
本を通じてimagineすることは人間らしく在ることで、それは誰にも奪えない。
子どもではいられなかった14歳の、偉大な功績。
広く伝えたいお話です。 -
Posted by ブクログ
ネタバレアウシュヴィッツには行ったことがあった。この本の主人公であるディタが収容所に送られるほんの少し前の年齢くらいのときに。当時のことはもうよく覚えてないけど、メガネと髪の束と暗い収容所の空気だけをよく覚えてる。
アウシュヴィッツの物語を読む度見る度に、ここで生き延びようとした人たちの生命力に驚きを覚える。運命による抑圧をどうにか跳ね飛ばそうとするその気力に、人間の底力を感じて、毎回涙が止まらなくなる。一方で、運命によって退けられてしまった人たちへの共感と悲しみも。自分はここにいれられてどちらの側に行くだろう。右と左にわけられるだろう。子供がこんなところに入れられて、果たして1日でも正気でいられるだ -
Posted by ブクログ
たった八冊の本が、荒野どころか地獄の真ん中で、どれほどの意味があるのだろうかという問いに、ウィリアム・フォークナーが冒頭で答えを示してくれる。
⭐⭐「文学は、真夜中、荒野の真っただ中で擦るマッチと同じだ。」⭐⭐
話の構成は上手く作られていて、現在と過去(アウシュビッツ前とアウシュビッツBⅡb区画に来てから図書係になるまで)が交差しながら、語られる。
登場人物たちの感情は、冷静に表現され、その分、比喩表現などが上手く使われており、心の動きはよくわかる。
この世界で感情表現に重きを置かないのは、もっともかもしれない。山のような死体が自分の横を通って行くのにも慣れてしまう日常だったのだから。
翻訳 -
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Posted by ブクログ
これが実話ベースというのが怖すぎる…ナチスの作品に触れるたび、人間ってこんなに簡単に残酷に人を殺せるんだって恐ろしくなる。著者がジャーナリストなだけに、毒ガス室での殺戮の様子や、バラックでの病に苦しんだ様子が刻々と記録されていて、とても心が痛んだ。でも、希望だったのは、たった8冊でも、理解ができない言語で書いてあっても、本は人々に希望や現実からの逃避を与えられるということ。読書にはそんな大いなる可能性があるということ。そして、ディタの志と使命感、決して諦めぬ心、そして知恵や登場するキャラクターの優しさにとても心が救われた。ナチス側の人物も実在する人物たちで、その後どうなったか、が語られるのも良