アントニオ・G・イトゥルベのレビュー一覧

  • アウシュヴィッツの図書係

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    大人も子どもも、本が、物語が、世界への扉が、未知への好奇心が、心の騒めきを鎮める重石になり、光を感じる光源となり、自分を外から見つめる道具になりうる。

    本の持つ可能性を強く感じる。
    過酷という言葉では言い表せないであろう時と空間の中で、志を折らずに闘った人達。

    同じ民族でも様々な考えの人々がいて、今の自分、自分のルーツに不利益な事実について、それは事実ではないと言い募る歴史の不確かさ、脆弱性。

    歴史となる中で、どういう声を聴くべきかにも強く気付かせてくれる。

    今のウクライナ侵攻も心を掠めながら読み進める。

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    2022年04月06日
  • アウシュヴィッツの図書係

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    ネタバレ

    アウシュヴィッツで図書係だった少女の話を基にした小説。

    当時の過酷な生活は、想像しても仕切れないものだなと改めて思う。理不尽な死がこんなに近いことなんてない。

    『ごく当たり前の生活が、滑り台を滑るように地に落ちていった。』

    『英雄的行為の大きさを評価し、名誉や勲章を与えるのは簡単だ。けれど、あきらめるという勇気は誰がわかってくれるのだろうか。』

    戦争のもつ力の大きさと、それに抗えない無力感を感じることが出来る上の表現と、目に見えないものの繊細さと美しさを再考させてくれる下の文章に心奪われた。

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    2021年10月11日
  • アウシュヴィッツの図書係

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    「どんぐり文庫」で借りる。

    辛すぎる歴史だけど、
    人間の崇高さ、人類が本や言葉を紡いできた意味、希望の光、そんなこんなが心の奥に深く静かに染み込んでくる、そんな本。

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    2021年03月27日
  • アウシュヴィッツの図書係

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    アウシュビッツという過酷で不条理な世界を懸命に生きた少女の姿に感銘を受けると共に、彼女がその中で大人になるしかなかったことに悲しみとやるせなさを感じた。しかもこれが実話に基づいているとは…

    海外著書の内容や聞き馴染みのない名前や知名が沢山出てくるので、読みやすい本ではなかったが、心に重く残る本だった。

    本や文化は生きるために必須なものではないが、人が希望を失わないために大切な要素。

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    2025年11月02日
  • アウシュヴィッツの図書係

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    歴史的背景の入り口としては良い作品だと思うけど、惨禍を伝える点を優先しすぎた感は否めない
    実在の人物をモチーフにしているのだから、主人公自身の痛みや内面をもっと掘り下げてあったらなー

    「人類の歴史において、ー独裁者、暴君、抑圧者たちには、ーみな共通点がある。誰もが本を徹底して迫害するのだ。本はとても危険だ。ものを考えることを促すからだ。」

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    2025年10月30日
  • アウシュヴィッツの図書係

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    3.8 状況が厳しすぎて、読んでいてしんどくなってなかなか進まなかった。絶望の中のわずかな希望の話。どれだけ過酷な環境でも人の心まで従わせることはできない。命を選別する権利は誰にもない。実行した責任を体制のせいにしてはならない。

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    2025年04月04日
  • アウシュヴィッツの図書係

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    ネタバレ

    なんとなくで知っていると思っていた
    戦争の悲劇

    この本を読んだからと言って
    分かったことはそれほど多くはないのだろうけれど
    思わず眉間に皺が寄ってしまう
    そんな光景を想像することはできた

    人は誰しも失敗から学んで
    次はこうしようと無意識に生きている

    歴史を知るということも
    同じことなんだろう
    ただ無関心で生きていくこともできるけど
    そうはなりたくないと思う

    ディタが80歳まで生きられたこと
    一言では言い表せないけれど
    心からよかったと思う

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    2025年01月28日
  • アウシュヴィッツの図書係

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    夜と霧から入ってアウシュビッツについての本は2冊目です。

    劣悪な環境の中、ユーモアと想像力を忘れない女の子が本守り本に守られながら生き抜く話。

    あとがきの文章がまたいいです。引用いたします。

    『人間が生き残るために必要なのは、文化ではなくパンと水だ。しかし、ただそれだけでは、人間性は失われる。もしも美しいものを見ても感動しないなら、もしも目を閉じて想像力を働かせないなら、もしも疑問や好奇心を持たず、自分がいかに無知であるかに思いが及ばないなら、男にしろ女にしろ、それは人間ではなく、単なる動物にすぎない。』

    ちゃんと人間として生きような。

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    2021年06月12日
  • アウシュヴィッツの図書係

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    文学は、真夜中、荒野の真っただ中で擦るマッチと同じだ。マッチ一本ではとうてい明るくならないが、一本のマッチは、周りにどれだけの闇があるのかを私たちに気づかせてくれる。

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    2021年04月12日
  • アウシュヴィッツの図書係

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    史実を基に肉付けしている小説。
    後半に進むにつれ、当時の収容所の劣悪な描写がひたすら続き、読んでいて辛かったです。

    開放された瞬間の収容者の
    「どうしてもっと早く来てくれなかったの?」
    という一言が印象的で、涙が出ました。
    このあたり、小説としては主人公自身のセリフや感情をもっと読みたかったところですが…。

    あとがきに登場人物のその後が書かれていて、とても興味深く読めました。

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    2021年03月02日
  • アウシュヴィッツの図書係

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    実話に基づいた創作ということで、アウシュヴィッツでの出来事とは思えないほど平和な展開が続く。特に驚いたのは、登場人物たちの気持ちに余裕があるという点だ。ビルケナウ収容所の家族棟にいる人たちは労働から逃れられ、大人から学べる時間があり、時には恋愛をしたり外見を着飾るという、信じられない内容である。最後のほうで主人公がベルゲンベルゼンへ移送されてから、ようやく物語が現実味を帯びてくる。だがこれも数十ページで終わる。途中でシュロモ・ヴェネツィア氏、アンネ・フランク姉妹の話が混ぜ込まれているので、著者は彼らの物語を知っているはずである。特にシュロモ氏は壮絶な体験をしているため、それと比較すると家族棟で

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    2020年11月01日