【感想・ネタバレ】アウシュヴィッツの図書係のレビュー

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Posted by ブクログ 2023年11月03日

実話をもとにしたフィクション。だが、ほぼノンフィクションに近いと思う。

辛く悲しい気持ちで読み進めたが、これは人類である以上、知るべき内容だと思う。

知ることしかできないということは、知ることならできるということ。

まずは知ることから。

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Posted by ブクログ 2022年08月12日

あれれ。感想書くの忘れてた。
アウシュアヴィッツの悲惨さは伝わってくれけど、本作主人公は其れを乗り越えて生き残った人。
感動します。読み終わって3ヶ月も経つと流石に文章がうかんでこない。失礼しました。

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Posted by ブクログ 2022年08月09日

家畜以外の扱いを受けながら、死と隣り合わせな凄惨なアウシュビッツの収容所で続けられた子供たちへの教育。そこで取り扱う八冊の本を管理する図書係のディタ。図書係と言ってもナチス公認では無いから、それを隠し通さねばならない。次に死ぬのは自分かも知れないという状態にありながら、家族を庇い合いながら、本を守り...続きを読む抜く。実話に基づいた話であり、物語には『アンネの日記』で有名なアンネ・フランクも登場する。

ディタは、目の前の現実から逃避するために人目を忍んで読書する。本の世界に没入する事で、想像の世界に友人を求め、悲惨な収容所から外の世界へ行けるのだ。読書には力がある。そう考えると、反対に私がディタのいる世界に没入するという事を考える。凄惨な世界に行けるのか。ディタと私の読書の質の違いを考えざるを得ない。恐らく、想像世界への没入感にはある種の現実世界の濃度による浸透圧の差や距離感が影響するのだろう。

地獄からの解放。本記録では、戦争の終わりによる状況の好転以外に、脱獄、死、叛逆、買収などの手段が描かれる。リスクを伴い、自らの運命が分からぬ中での判断。多くは、状況も知らされぬ中で、耐え忍ぶしか無かったのだ。自分ならどうするのだろうか、威勢の良い事を妄想してみても、それこそ読書にリアリティがないのかも知れない。答えは出ない。しかし、自らを場面に投影する事に、追体験的意味があるような気がした。いや、その時代のアウシュビッツに行きたい訳ではないのだが。

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Posted by ブクログ 2022年07月06日

実話を基にした お話です。
アウシュヴィッツから 生きて出られるという奇跡
そして アウシュヴィッツで 正気を保てたのは
本という 心の支えがあったから・・・・

当時 本は 回収されてしまっていたけど
必死になって 隠し持っていた
よれよれになってしまった本が
子供たちにとって 笑いや 感動を与え...続きを読むてくれた・・・・

アウシュヴィッツについての本では
以前読んだ 夜と霧でも そうでしたけど
生き残るには 心が大事でした。
食べるものがなく 病気が蔓延している中で
生きていくのは どれだけ 大変なのか 想像もできませんが 本を読む事で 少しでも 悲惨な事を 理解できます。

この本は 夜と霧よりも 読みやすいので
多くの人にも読んでもらいたいと思いました。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年07月03日

「アンネの日記」は捕まるまでの話だけれど、こちらは捕まってから解放されるまでのお話。以前、アウシュヴィッツに郵便があるという話があって驚いたけど、こちらは学校まであってさらに驚いた。家族収容所なるものがあったことにも。
話ももちろん素晴らしかったけれど、あちらこちらに名言が散りばめられている。特にヒ...続きを読むルシュの話は本をあまり読まない人たちにも響きそうだと思った。
今更ながら、強制収容所の暮らしが想像以上に酷くて驚いた。その中でもみんなが逞しく生きていく姿にも驚いた。人は希望がなければ生きてはいけないのだと改めて思った。
主人公はアウシュヴィッツからの解放後、イスラエルに移住したけれど、そこでもまた戦争があり、大変だったんだろうなと思った。

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Posted by ブクログ 2022年02月15日

アウシュヴィッツには生半可な気持ちで行ってはいけない。昔、ポーランドに旅行する際に読んだガイドブックにそう書かれていたことを思い出した。

実話に基づいたフィクション。だけど真実が垣間見える。読んでいた沸き起こった感情や情景。作中にもあるように、「本は別の世界へ連れてってくれる。」そう、知らなかった...続きを読む世界へ。

戦争は人の心を蝕む。それでも本はどんな地獄でも希望の種になる。本当に勇気ある人は怖がる人。心強いユダヤ人リーダー、フレディ・ヒルシュはどれだけの人を救ったか。そして図書係エディタ。今も彼の意志を引き継いでいることは十分伝わる。

この本読むと杉原千畝のやったことがいかに神がかりであるかを実感する。

あんな狂気の世界を二度と作ってはいけない。

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Posted by ブクログ 2022年01月10日

14歳から16歳まで、収容所で過ごした実在の人物のノンフィクションを交えたフィクション。
一貫して冷静に少女目線で描かれている。生き延びてくれて心から本当にありがとう!

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Posted by ブクログ 2021年12月11日

実話に基づいていることに驚く。

収容所の中なのに、どこかファンタジーのように
感じてしまうのは、、少女ディタの目線だからか。

絶望の淵で、本によってほんのひととき救われる、その場面に感動。

人間は、ストーリーによって救われてきたのだ。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年02月11日

2回読んで、読み終わった時の印章がどちらも鮮明に残りました。恐らく、ホロコーストを自分が体験していないから、現実とかけ離れた世界に圧倒されてしまうのかもしれません。
8冊の本が楽園への入口というのは、当時の状況を鑑みると幸運だったのかは私が論じていい話ではないですが、今本が救いになっている人には...続きを読むわかる事なのかなたま思いますり

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Posted by ブクログ 2021年02月10日

全ての人に読んで欲しい

私たちが生まれる前にこんな過酷かつ理不尽な環境で、
命がけで生きていた人たちの日々を、こんなに鮮やかに描いた作品は見たことがありません。

今もコロナウイルスで厳しい状況ですが、
この頃の人たちと比べたら全くもってマシだと思います。

どんな環境でも生きる希望を失わないこと...続きを読む
苦しい環境でも何かできることを探すこと。

そして、本は人に夢や希望与えてくれる。

本当に良い作品でした。

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Posted by ブクログ 2020年11月30日

これ程までの壮絶な絶望の日々の中にいても、本が心を支えるとは。
この物語を読み終えた後、本を撫でて愛おしんだ。平和に感謝しながら、これからの読書時間を噛み締めたい。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年11月29日

これを読み終わったあとの気持ちをなんと表現すればいいだろうか。
悲しくもあり、でも主人公の女性が生き延びたことへの安心の気持ちもわいた。この女性が収容所で見た光景はいくら生々しく語られたとしても自分には到底実感することのできない、それぐらい深いものだと思った。
この本はフィクションではあるが、主人公...続きを読むは実在していて、真実も書かれている本であり、当時収容所でどんなことが行われていたか、リアルを知ることのできる本。
自分はこの本を読んで、収容所の悲惨さを感じるとともに、人をそこまで狂気にさせてしまう環境の怖さも感じた。収容所で毎日ユダヤ人をガス室送りにしていたドイツ兵も、その環境にいなければ、きっと心優しい人だったかもしれない。誰しもが狂気の言動を取る、強制的に取らされる、そんな可能性があるということを考えさせられた。もっと収容所の現実を知りたくなった。

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Posted by ブクログ 2020年09月27日

アウシュビッツといえばアンネの日記は有名だけれど、そのほかの実話に基づくホロコーストの話はあまり気が進まなかった。現状のパレスチナの問題もあるが、あまりにも悲惨で胸が痛んで読み進められない、というのが大きい。けれどこの本は、本屋でてにとり、冒頭の一頁、
 文学は、真夜中、荒野の真っ只中で擦るマッチと...続きを読む同じだ。マッチ一本ではとうてい明るくならないが、一本のマッチは、周りにどれだけの闇があるのかを私たちに気づかせてくれる。
で、読もうと思った。本が好きだからこそ、この本に出会えたわけだが、やはり、アウシュビッツの過酷な環境の中でも、本は、物語は、人々に希望と夢を与えたのだ。そして、やっぱり胸が痛くなる。

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Posted by ブクログ 2020年09月08日

実話をもとに小説化した作品。
アウシュビッツやユダヤ人の迫害について、さまざまな作品があるが、図書係がいたとは初めて知った。
日本の戦争体験もそうだが、何人、という数の裏には一人一人違った経験がある。みんなが生きている人間であり、それぞれの人生があったことをこうして思い出していかなくては、いつまで経...続きを読むっても戦争は無くならないのではないだろうか。そこには文学の力も必要だ。
また、厳しい生活の中で、楽しい経験を頭の中でできるのは本があるから。本がなくても読んだ本のことを思い出して楽しむ。文学にはそういう力がある。このcovid19 によってそういう楽しみを奪われた時、その力がいかに生活に浸透していたかを知った。

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Posted by ブクログ 2020年08月16日

「地球上のすべての国が、どれだけ柵を作ろうと構わない。本を開けばどんな柵も飛び越えられるのだから。」

好きな本を好きな時に読めることがどれだけ幸せなことなのか……
絶望の日々でも決して投げ出さなかった彼女の生命力に勝てるものなんて何もないと思った。

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Posted by ブクログ 2020年07月14日

過酷で劣悪な環境の中、大きなリスクを負い、実際に命を脅かされるほどの危険を感じながらも図書係としての役目を担う14歳の少女ディタ。
あまりに現実離れした世界。絶望せず希望を持ち続けることがどれだけすごいことか…。
ディタの意思の強さと未来を信じる力強さをヒシヒシと感じた。
客観的な事実、隠れた真実や...続きを読む当事者の声を知ることはとても大事なこと。
本は未来へ繋がる大いなる可能性を秘めている。
この

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Posted by ブクログ 2020年07月11日

実話に基づくフィクション。
これが実際に起こっていたこととほぼ相違ないなんて、戦争を知らない私は本当に信じられない。
こんなに壮絶な体験をした主人公の少女が、90歳で今でもご健在と知って驚き。
ホロコーストについては、どうしてそんなことが起きたのか、一体どんなことが実際に行われていたのか、本当に人間...続きを読むは悪魔のようなことができるのか、子供の頃から興味があった。
これがたった75年前のことだなんて。
ガス室や処刑などの描写はもちろん、飢えや病気の蔓延、劣悪な環境についてのシーンも読むのが本当につらかった。
そんな絶望でしかない世界で、本は唯一の希望の証。
子供にとっての学校や教育の存在も然り。
本さえあれば、世界中どこへでも行ける。
たとえ身動きができなくても、心だけは旅できる。
ユダヤ人としての誇りやプライドを失わず、自分らしく最後まで闘い続けた姿には、心打たれた。

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Posted by ブクログ 2020年07月04日

世界大戦時でのアウシュビッツの酷さが分かる。
そんな中、本に希望を求め、また本が人々に少しでも勇気を与える存在だった。
もっといい本に巡り会えるよう、これからも読書を続けよう。

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ネタバレ購入済み

ある少女の凄絶な人生

2019年11月15日

読書すら禁止のアウシュビッツ=ビルケナウ強制収容所。たった8冊の本を命を懸けて守る少女ディタ。絶滅収容所とも呼ばれるその中では、常に死の恐怖と隣り合わせ。1日に何千という命が何の躊躇もなく流れ作業のごとく殺されていく。さらに暴力、飢え、チフス、コレラ、悪臭、シラミ、強制労働。生きていくこと自体が辛い...続きを読む中にあって、人間らしさや希望を保つ原動力となるのは紙の本や教師たちの話す物語、生きた本だ。勉強や本が嫌いという日本の子どもたちにぜひ読んでもらいたい一冊。そして90歳近い現在のディタの生き様にも感服。

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Posted by ブクログ 2020年11月07日

アウシュヴィッツ=ビルケナウ。
移送された者はすぐに振り分けられ、弱者はそのままガス室に送られ、生き残った者は死ぬまで強制労働をさせられるという死の施設。
その一角に、家族収容所があった。そしてそこには学校があって、禁止されている本の管理を託された図書係の少女がいた。
飢えと死の恐怖がはびこる悲惨な...続きを読む現実の中、わずか8冊の本と生きた本(語り手)から語られる物語の世界は、人々の救いとなり、希望を与え続けた。

読みながら胸が痛くなるような厳しい現実の中にあっても、物語の世界に浸る喜び、新しい世界を知る喜びは、何ものにも奪われるものではないことを教えてくれる。

事実を基にしたフィクション。
でも、ノンフィクションの部分がほとんどなのかも知れないという印象を受けます。

基本的に戦争モノは好きではありませんが、「図書係」という言葉に魅かれて読み始めました。

図書係になったディタが、本の中に自分の世界を広げる喜びが痛いほど伝わります。
そして、大勢の仲間と最大の指導者ヒルシュを失い、自分たちの未来の希望さえ失いかけていた時にも、彼女は物語の力で周りに笑顔を取り戻させます。

ただそこに来た人たちが持っていたものをこっそり集めただけの、寄せ集めの8冊の本が、多くの人たちの心の拠り所となり、結果として命の炎を保つ働きをしていたとは。
本の持つ力の大きさを強く強く感じます。

あんまり悲惨な状況に胸が痛むので、小学生にはお薦めしませんが、主人公は14歳の女の子。YAならイケるでしょう。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年08月18日

アウシュヴィッツには行ったことがあった。この本の主人公であるディタが収容所に送られるほんの少し前の年齢くらいのときに。当時のことはもうよく覚えてないけど、メガネと髪の束と暗い収容所の空気だけをよく覚えてる。
アウシュヴィッツの物語を読む度見る度に、ここで生き延びようとした人たちの生命力に驚きを覚える...続きを読む。運命による抑圧をどうにか跳ね飛ばそうとするその気力に、人間の底力を感じて、毎回涙が止まらなくなる。一方で、運命によって退けられてしまった人たちへの共感と悲しみも。自分はここにいれられてどちらの側に行くだろう。右と左にわけられるだろう。子供がこんなところに入れられて、果たして1日でも正気でいられるだろうか。子供のために体を売れるだろうか。
戦争の愚かしさをこうやって目の当たりにする度に、今でも世界で続けられている同じようなことに絶望する。戦争によって人間性を奪われるすべての人たちに悲しみを覚える。どうやったらやめられるんだろう。どうして人は忘れるんだろう。
せめて自分はどうにかして愚かしい人間であることを忘れずに、せめて足を踏み外さないように、生きていければなと思うばかり。

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Posted by ブクログ 2023年05月01日

たった八冊の本が、荒野どころか地獄の真ん中で、どれほどの意味があるのだろうかという問いに、ウィリアム・フォークナーが冒頭で答えを示してくれる。
⭐⭐「文学は、真夜中、荒野の真っただ中で擦るマッチと同じだ。」⭐⭐

話の構成は上手く作られていて、現在と過去(アウシュビッツ前とアウシュビッツBⅡb区画に...続きを読む来てから図書係になるまで)が交差しながら、語られる。
登場人物たちの感情は、冷静に表現され、その分、比喩表現などが上手く使われており、心の動きはよくわかる。
この世界で感情表現に重きを置かないのは、もっともかもしれない。事実、山のような死体が自分の横を通って行くのにも慣れてしまう日常だったのだから。
翻訳の力もあるかもしれないが、普通の小説以上に読みやすい。
前半、収容所内にも関わらず、やや学園ドラマ的なムードが続き冗長さも感じたが、いよいよBⅡb区画に死神が訪れ、ヒロインのディタは家族やたくさんの仲間を失う。
それまでの、異常な日常の中で彼らが求めた「ささやかな日常」(読んだり、書いたり、学んだり、身だしなみを気にしたり、恋心を抱いたり)を思い返すと胸が詰まった。人はどうにかこうにか飢えをしのぐだけでは生きていけない。ボロボロの本はもちろん、皆で歌う唄、そしてちっぽけな石鹸の匂いや安物の髪留めでさえ、心のよりどころとなり得る。
だが悪魔の所業は、いとも簡単に彼らの希望の光を踏み躙った。ガス室の描写はもちろんないが、数頁前に登場していた人物の台詞が蘇り、哀しみが聞こえてくる。そしてディタがいた家族収容所も閉鎖され、目の前には死しか見えない過酷な強制労働の日々が続く。
ユダヤ人というだけでなぜ?

アイヒマンなど歴史的に知られているナチスの人物も登場する。しかし、彼らもナチズムのプロパガンダに狂わされてしまった“普通のドイツ人”だったのかもしれない。

幸せをつかむディタだが、プラハで今度は、ソ連共産党に夫とともに苦しめられる。
時代は繰り返すのか?いや、たとえ繰り返したとしても、ディタのような賢く強い人間を根絶やしにすることなど出来ない。そして必ずや正義は息を吹き返す。

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Posted by ブクログ 2022年12月03日

なぜ人はこれほどまでに残虐になれるのか。信じがたいことが強制収容所では行われていた。世界中が戦争のない社会になるにはどうしたらよいのか。考えさせられた。

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Posted by ブクログ 2022年06月29日

これが実話ベースというのが怖すぎる…ナチスの作品に触れるたび、人間ってこんなに簡単に残酷に人を殺せるんだって恐ろしくなる。著者がジャーナリストなだけに、毒ガス室での殺戮の様子や、バラックでの病に苦しんだ様子が刻々と記録されていて、とても心が痛んだ。でも、希望だったのは、たった8冊でも、理解ができない...続きを読む言語で書いてあっても、本は人々に希望や現実からの逃避を与えられるということ。読書にはそんな大いなる可能性があるということ。そして、ディタの志と使命感、決して諦めぬ心、そして知恵や登場するキャラクターの優しさにとても心が救われた。ナチス側の人物も実在する人物たちで、その後どうなったか、が語られるのも良い。克明な記録として、後世に受け継ぎたい逸品。

p.35 それは君が勇敢だからだ。勇気がある人間とそれを知らない人間は違う。恐れを知らない人間は軽率だ。結果を考えず危険に飛び込む。危険を自覚しない人間は周りを危ない目に合わせる可能性がある。そういう人間は僕のチームにはいらない。僕が必要とするのは、震えても1歩も引かない人間だ。何を危険にさらしているか自覚しながら、それでも前に進む人間だ。

p.44 アウシュビッツは罪のない人を殺すだけでなく、良心を殺す場所でもあった。

p.54 子供ですって?とんでもないわ。子供時代がないのに、何が子供よ。

p.57 ナチスが音もなく更新してきた1939年3月、全てが始まった。突然全てが崩壊したわけではない。しかし、ディタの周りの世界は崩れていった。最初は少しずつ、次第に加速しながら。配給手帳が配られ、いろんなことが禁止された。カフェので入り、他の市民と同じ時間帯に買い物に行くこと、ラジオの所有、映画館や劇場に行くこと、りんごの購入…。その後、ユダヤ人の子供は学校から追放され、公園で遊ぶことも禁止された。それは子供時代を取り上げるに等しかった。

p.59 ささやかな思い出だが、ファーストキスは決して忘れない。あの後後の嬉しさを思い出すとウキウキとした気持ちになり、戦争と言う砂漠の中でも、喜びを感じることができた。大人は決して手に入らない幸せを求めて必死にあがくが、子供はその手の中に幸せを見出せる。

p.87 子供たちもその方がよく聞いてくれるのですよ。頭のおかしいの年寄りの言うことなどだれも耳を貸さないけど、それが本に書いてある事なら…別です。本の中には、それを書いた人の知恵が詰まっています。本を消して記憶を失わない。

p.104 ディタは12回目の誕生日のために自分で考えていることがあった。夜、母さんが彼女の部屋におやすみを言いに来た時、リサはもう一つの音をだおねだりした。お金はかからないからと断り、12歳になったのだから大人の本を何か読ませてほしいと頼んだのだ。

p.171 エディタ…。まるで彼が悪いことをしたみたいに言うのね。ただ女ではなく男に惹かれるだけのことでしょう。それが、そんなに悪いことかしら?

学校では病気だって教えられました。

本当の病気は、人を許すこともできない、心の狭い考え方だわ。

p.236 アウシュビッツの夜がふける。暗闇の中、列車が到着し続け、途方に暮れて木の葉のように震える罪のない人々を置き去りにしていく。そして煙突の赤みがかった強い光が、休むことなく炉を燃やし続けていることを物語る。家族収容所に入れられている者たちはシラミだらけのわらぶとんに横になり、恐怖と闘いながら眠ろうとする。一晩一晩を生き抜くことが小さな勝利だ。

p.283 ディタが本を閉じると、子供たちは立ち上がり、またバラックの中を騒々しく走り回り始めた。消えていた命の灯がまた灯った。ディタは何度も糸で縫い直されたその古い本を撫でた。そしてフレディー・ヒルシュは自分のことを誇りに思ってくれるだろうと幸せな気持ちになった。「いつも前に進み続けること、あきらめないこと」と言うヒルシュとの約束を果たしたのだ。

p.312 ナチスは私たちから何から何まで取り上げたけど、希望を奪うことはできない。それは私たちのものよ。連合国軍の爆撃の音も前より大きくなってるわ。戦争は永遠に続くわけじゃない。平和が来たときの準備もしなくちゃ。子供たちはしっかり勉強しておかねばね。だって、廃墟になった国や世界を立て直すのはあなたたち若者なんだから。

p.335 周囲には武装したナチスもいなければサイレンの音も命令の声も聞こえない机の上で、パンのかけらをかじるこの自由な瞬間は、誰にも奪えない。

p.368 並べられた本が小さな列になった。奥ゆかしい古参兵のパレードだ。この何ヶ月か、何百人もの子供たちが世界中を旅行し、歴史に触れ、数学を勉強するのを助けてくれた本たち。フィクションの世界に誘い込み、子供たちの人生を何倍にも広げてくれた。本の数冊の古ぼけた本にしては上出来だ。

p.370 強くて前に進もうとすると、勇気がいるでしょう。でも強くない人は、何をやるにも平気なんだから、偉くも何ともないわ。

p.392 数時間前まで生きていた人間が、まるでゴミのように穴に投げ入れられる。作業員のハンカチは腐臭に耐えるためではなく、顔を隠すためではないかとディタは思った。人間をゴミとして処理するのを恥じているのだ。

p.412 ディタは振り返って笑顔を向けるが、立ち止まる事は無い。英語なのも、自分には読めないものなのもわかっている。でも構わない。母さんが眠っている間、空きベッドに座って本の匂いをかぎ、ページをパラパラめくって上の音を楽しむのだ。背表紙をもう一度撫でて、表紙ののり付けの厚みを感じる。そこに書いてある作者の英語の名前もエキゾチックだ。再び本を手に取ると、人生がまた始まるような気がする。誰かが蹴散らしたジグソーパズルのピースが少しずつ元に戻る。

p.418 オータは微笑む。生き生きとした、ちょっといたずらっぽい目が、君が生きていて嬉しい、また会えて嬉しいよ、とディタに語りかけている。ディタをまた、なぜかしら微笑んだ。その微笑みは人と人を結ぶと、それが強い絆になる。彼の朗らかさが出たの心も明るくする。

作中で出てきた本たち
・『兵士シュヴェイクの冒険』
・『幾何学の基礎』
・『世界史概観』
・『ロシア語文法』
・『精神分析入門』
・『モンテ・クリスト伯』
・『ニルスのふしぎな旅』
・『ユダヤ人の歴史』
・野村路子『テレジン収容所の小さな画家たち詩人たち』
・『ポーランドのボクサー』
・オータ・D・クラウス『塗られた壁』
・ルディ・ローゼン『私は許せない』

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Posted by ブクログ 2022年04月06日

大人も子どもも、本が、物語が、世界への扉が、未知への好奇心が、心の騒めきを鎮める重石になり、光を感じる光源となり、自分を外から見つめる道具になりうる。

本の持つ可能性を強く感じる。
過酷という言葉では言い表せないであろう時と空間の中で、志を折らずに闘った人達。

同じ民族でも様々な考えの人々がいて...続きを読む、今の自分、自分のルーツに不利益な事実について、それは事実ではないと言い募る歴史の不確かさ、脆弱性。

歴史となる中で、どういう声を聴くべきかにも強く気付かせてくれる。

今のウクライナ侵攻も心を掠めながら読み進める。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年10月11日

アウシュヴィッツで図書係だった少女の話を基にした小説。

当時の過酷な生活は、想像しても仕切れないものだなと改めて思う。理不尽な死がこんなに近いことなんてない。

『ごく当たり前の生活が、滑り台を滑るように地に落ちていった。』

『英雄的行為の大きさを評価し、名誉や勲章を与えるのは簡単だ。けれど、あ...続きを読むきらめるという勇気は誰がわかってくれるのだろうか。』

戦争のもつ力の大きさと、それに抗えない無力感を感じることが出来る上の表現と、目に見えないものの繊細さと美しさを再考させてくれる下の文章に心奪われた。

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Posted by ブクログ 2021年03月27日

「どんぐり文庫」で借りる。

辛すぎる歴史だけど、
人間の崇高さ、人類が本や言葉を紡いできた意味、希望の光、そんなこんなが心の奥に深く静かに染み込んでくる、そんな本。

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Posted by ブクログ 2021年06月12日

夜と霧から入ってアウシュビッツについての本は2冊目です。

劣悪な環境の中、ユーモアと想像力を忘れない女の子が本守り本に守られながら生き抜く話。

あとがきの文章がまたいいです。引用いたします。

『人間が生き残るために必要なのは、文化ではなくパンと水だ。しかし、ただそれだけでは、人間性は失われる。...続きを読むもしも美しいものを見ても感動しないなら、もしも目を閉じて想像力を働かせないなら、もしも疑問や好奇心を持たず、自分がいかに無知であるかに思いが及ばないなら、男にしろ女にしろ、それは人間ではなく、単なる動物にすぎない。』

ちゃんと人間として生きような。

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Posted by ブクログ 2021年04月12日

文学は、真夜中、荒野の真っただ中で擦るマッチと同じだ。マッチ一本ではとうてい明るくならないが、一本のマッチは、周りにどれだけの闇があるのかを私たちに気づかせてくれる。

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Posted by ブクログ 2021年03月02日

史実を基に肉付けしている小説。
後半に進むにつれ、当時の収容所の劣悪な描写がひたすら続き、読んでいて辛かったです。

開放された瞬間の収容者の
「どうしてもっと早く来てくれなかったの?」
という一言が印象的で、涙が出ました。
このあたり、小説としては主人公自身のセリフや感情をもっと読みたかったところ...続きを読むですが…。

あとがきに登場人物のその後が書かれていて、とても興味深く読めました。

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Posted by ブクログ 2020年11月01日

実話に基づいた創作ということで、アウシュヴィッツでの出来事とは思えないほど平和な展開が続く。特に驚いたのは、登場人物たちの気持ちに余裕があるという点だ。ビルケナウ収容所の家族棟にいる人たちは労働から逃れられ、大人から学べる時間があり、時には恋愛をしたり外見を着飾るという、信じられない内容である。最後...続きを読むのほうで主人公がベルゲンベルゼンへ移送されてから、ようやく物語が現実味を帯びてくる。だがこれも数十ページで終わる。途中でシュロモ・ヴェネツィア氏、アンネ・フランク姉妹の話が混ぜ込まれているので、著者は彼らの物語を知っているはずである。特にシュロモ氏は壮絶な体験をしているため、それと比較すると家族棟での出来事はすべて非現実的に思えてしまい、フィクションを楽しめなかった。

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