全体的にXでの男女論争を詰め込んだような一冊だった。
性別入れ替えというフィクションならではの設定は面白かったけど、「男女差別」に対する筆者の固定概念に終始していたような気もしていて、現実的な時代背景に触れてもらえるとより読み応えがあったかも。
『別にこちらを当て擦っているわけでもない誰かを否定したり、攻撃していないと自分が揺らぐのなら、今の在り方そのものを見直さないといけない。
〜誰かの不幸から蜜の味がするなら、そう感じる己の味覚こそ不幸だと…そう思います』
男女差別をテーマにしながら、劣等感ゆえに人を攻撃している自分に気づくこと、自分が持っていないものを他人で補うべきでないこと、周りの固定観念や当てはめられた役割意識で自分の意思を潰さないで、というメッセージは良かった。
あとセリフみたいな口調に慣れるのに時間かかったかな、後半から結末にかけての展開は映像化されたら面白そう〜
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▼家庭での男女観
『ブラザーペナルティ』
弟のいる長女は、無意識に家庭内で役割を与えられたり教育の機会を失ったりして、弟のいない女性と比較して進学や就職で不利になり、家事や家族のケア労働の負担が重くなる傾向があること
自分は男女差別をあまり感じずに育ってきた方で、それは両親の価値観や関係性によるところが大きかった。
(実家で家事をしているのは母親だけではあったけど、夫婦仲も良く、父親が偉そうに振る舞うことはなかったし家庭内外での役割を分けているという環境だった。)
だけどそもそも両親が家庭内で男尊女卑を出さなかった背景に、子どもが三姉妹だった = 「ブラザーペナルティ」が発生しない環境だったからかもしれない、ということに今回初めて目を向けだ。
同時に思い至ったことがなかった自分の視野の狭さも痛感。
『いつもは当たり前と捉えていた前提が揺らぐ』
「当たり前」は人の数だけあって、私たちの生活を回す一方で滞らせてもいる。
ブラザーペナルティに限らず、すべての家庭では互いが影響し合ってそれぞれのポジションや振る舞いを形成し、それが一人一人の性格や価値観になっていっている。
ほかにも私が認識していない日々の無意識な差別的意識や切り分けがたくさんあって、就職や結婚とか人生の重大な選択、本人の性格にまでも影響してるんだろうなぁ。
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▼社会の男女観
職場でも女性軽視を感じることはあまりないけど、それでも自分より歳上の大人たちの意識下にある男女差別には拭えないものを感じる。
差別的な態度(「男だから」と雑に扱ったり経済的負担を押し付けたり、「女だから」と控えめさを求めららたりセクハラ発言をされたり)は確実に減っている。
だけどそれらは、世間が「男女で差別してはいけない」「個人の能力を評価すべきだ」と、そうなっているからそれに順応しているという大人たちも多い気がして。
社会の状況として、働き続けられる女性が少ないこと、20代後半になると女性は一気に結婚を急ぎ始めること、男性30代の婚活では稼ぎが最も求められることも変わってはいないし。
価値観と社会状況の2面とも、 3世代ぐらい入れ替わらないと完全には変わらない気がするなー。
あと、「自分が加害者になるかもしれない」という意識常に晒されている男性特有の生きづらさについて。
理緒は女として男に警戒心を抱いてきた背景があるからその事実に敏感になったけど、初めから男として生きている男性たちの中には気づいていない人も多いだろうなとも思う。
逆にその認識がある人はどこで学ぶんだろうか、姉妹がいるとかSNSで知るとか?
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▼友情(同性・異性)、婚活について
理緒のハンドメイドを褒めてくれた実乃里も、結婚に躍起になって人生の基準を見誤って友達までもその不幸かもしれない道に引き込もうとした実乃里も、どちらも実乃里なのよね〜
10代で出会った友達は、長い間一緒にいて定期的に会う関係が続けばこそ、相手の変化を殊更に感じて会いづらくなったり逆に心の距離を縮められたりもする。
趣味の場みたいにお互いに見せる部分が限られている関係や、社会人になってある程度価値観が固まったあとに出会う友達ならその変化に気づきにくく、平和に友達で居られるのかもしれないけど、、、青春時代を過ごした友達だからこそわかりあいたいと思うこともあるしな〜
『誰かとの関わりあいで、確実に変えられるのは、己の心の持ちよう、一つきりだ。そう、実乃里は「悪い」んじゃない、ただ「実乃里」なだけ。そして、私ができるのは、彼女に応じる時の姿勢を変えることだけ』
理緒がそうしたように、誤魔化さない私で誠実に友達と居続けたいな。
婚活は自分を売り込んで相手を値踏みして交渉する場なんだなーと改めて。
でもそれより生々しかったのは、理緒と結弦が入れ替わった世界で、実乃里が理(=理緒)に向けていた感情と関係性。
経済力のない理を恋人にはしないけど、実乃里自身の日々の潤い(愚痴のはけ口、異性から好意を向けられている(実際は違うけど)という優越感)のために保留しながら婚約を進めてたんだろうなっていう。
実際には婚活が上手くいかなくても、理が本気で実乃里のことを好きだったとしても、実乃里は理を選ばないと思う。たぶん一晩の過ちすら起こす可能性は低い。きっと2人は友情関係のまま続いていく。
表面上は友情を装いながら、水面下に男女ゆえに生まれる粘着性に見覚えがありすぎる…
春井さんみたいに同性としてはいいやつだけど異性にとっては害のある人っている、わかる…!
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落語かってぐらい語ってくる心情とわざとらしいセリフ口調が、取っ付きやすくもあり違和感拭えずで正直苦手だったな。
主人公も優柔不断すぎ&ちょっと共感性羞恥も感じる語りで、多分友達にいたらイラッとしちゃう。
結弦と聖別が入れ替わることで、そういう自己を押し込めてなあなあに過ごす性格が前向きに変わっていくわけだけど、正直途中で断念しそうになった。
後半は筆者からのメッセージ感が強くて、もはや主人公別人??ってぐらい変化してたし。
ほかの登場人物もあまり好きになれなくて…とくに実乃里の強引で押し付けがましい態度は好きじゃないな。
極端なキャラ設定やセリフ口調は、筆者がラノベ出身っぽいのも理由の一つかもしれないなとは…