岩下悠子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
1ページ目、あまりにうつくしい文章に何度も同じ一文を読んでしまった。美文に圧倒され、はじめからおわりまでどっぷりと浸かり、「うつくしい文章の小説しか読みたくない」という普段は口にしない望みを満たしてもらえた。
化学、祈り、運動、恋慕、「反復」することでしか至らない魂の領域。そして至らない、未完であるものしか来世には持ち込めない。
綾部という自裁した男がおこした漣、それを受けた者たち。過ぎた日々の痛恨のまばゆいばかりのうつくしさ。
ミステリとしては日常の謎、に分類されると思うけどそれもよかった。でもなにより物語のうつくしさと文章のうつくしさにノックアウトされてしまい、泳ぐだけのシーンをこのように描写するのかと、趣味として文章を書く身が引き締まる思いである。
いますぐに新作を読ませて欲しいし、本作にもあった幻想小説の匂いをもっと濃くした話などはどうだろう? 読みたい、この美文に絶対に合うはずだ。
猫堂くんって萌えキャラですか? -
Posted by ブクログ
綾部蓮は見た目も良く、自由形のトップスイマー。常に彼女がいて、直ぐに違う人女性になるような男だが、嫌われたりせず、何時も人に囲まれている。しかし、自殺した。
瑛子は彼にひっそり憧れる1人であり、同じ大学の水泳部員であり、伸び悩むスイマーでもある。そんな瑛子が毎日泳ぐ姿は修行僧のようで、魅せられている人が多数いることを瑛子は知らない。医学部の猫堂もその1人。瑛子、綾部、猫堂、北里舞を中心に綾部が自殺に至る前の大学時代とその後が語られ、何故自殺したのかが最後に明らかになる。
プールの青い透明感がずっと感じられる透明感のある、しかしザワザワと心の揺れる文中を漂っていた印象。脚本家出身らしく、映像が何度も心に浮かんだ。個性的なキャラクターが多いのも読みやすかった。生きることに恵まれているのに上手く立ち回れない登場人物多すぎやろ…。
子をなすことへの言及多く、小学校には向かない。中学校以上。基本は高校生くらいから。 -
Posted by ブクログ
ネタバレYouTube「ほんタメ」で紹介されていて、手に取りました。
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ただならぬ
緊張感と、
ままならぬ
人生の不穏な謎が、
心をざわめかせる。
巷に溢れる、
底の浅い「真相」に
飽き足らぬ人は、
ぜひご一読を。(恩田陸)
若くして自ら命を絶った天才と、
彼と出会った四人に齎せる
謎と恩寵。
忘れがたき
余韻を残す傑作。
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最近読んできたミステリーと
雰囲気(毛色?文体?)が異なり、
想像していたのと違う!と戸惑いました。苦笑
最近転職したばかりで、
心も生活もざわざわしているため、
読みやすくて読み応えのある(なんて贅沢)本ばかり手に取っていたみたいです。
本書は、
仏教、キリスト教、イスラム教、
そして源氏物語に狐に猫、
舞台は京都が登場します。
このキーワード…!
他の方のレビューにもある通り、
詩的でどこか象徴的で不思議で耽美な文章が連なります。
神の贈り物というべ才能に恵まれ、
美貌を持って周囲の人々を傅かせた綾部漣という青年。
彼は何故自ら命を絶ったのか。
彼に影響を受け、翻弄され、
心を奪われた人が登場します。
物語全体に綾部漣という青年が薄膜のように存在しますが、本書は周囲の人間から見える景色の短編集です。
最初は、
創元推理文庫さんの小さな文字たちと、
内容の読みにくさで、
(通勤で集中できない私が悪い。笑)
読み進めるのに時間がかかりました。
印象的だったのは、
「綾部にかき乱された水はいつも幸福そうに見える。」
という一文。
そんなか…!というのが第一印象でしたが、
綾部漣という男がいるだけで、世界が変わるというような圧倒的というか抗えないものを持っているんだな、と。
後半は、
そんなカリスマ性?を持った綾部漣の
悲哀、渇望が垣間見え、
周囲が傅くような王様ではなく、
ただの青年として描かれることで、
彼が中心ではなく、
そう見えるようにされていただけと思わされました。
結局、彼も見えない運命の中で転がっていただけ。
これはもう少し時間と心に余裕があるときに、ゆっくり読み返したい一冊でした。 -
Posted by ブクログ
京都を舞台にした連作ミステリ。実に「京都らしい」要素がいっぱいです。ミステリとしてのネタはあまり派手ではないのだけれど。じっくりと書き込まれた端正な情景描写と、静かながらも惹きつけられる物語に浸れる一冊です。
美山監督と鷺森さんの一見危ういような関係性も魅力的。二人の抱えた「秘密」については最初からなんとなくわかったけれど、それでも興味を削がれることはなく。最後まで物語に飲み込まれるような印象でした。
京都らしいあれやこれやの要素もいいなあ。いかにも、な所じゃなくて、ひっそりとした知られざる名所、のような感じがします。全体としての雰囲気は地味なのだけれど。奥深いところまでじわじわ入ってくるような読み心地でした。