岩下悠子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
1ページ目、あまりにうつくしい文章に何度も同じ一文を読んでしまった。美文に圧倒され、はじめからおわりまでどっぷりと浸かり、「うつくしい文章の小説しか読みたくない」という普段は口にしない望みを満たしてもらえた。
化学、祈り、運動、恋慕、「反復」することでしか至らない魂の領域。そして至らない、未完であるものしか来世には持ち込めない。
綾部という自裁した男がおこした漣、それを受けた者たち。過ぎた日々の痛恨のまばゆいばかりのうつくしさ。
ミステリとしては日常の謎、に分類されると思うけどそれもよかった。でもなにより物語のうつくしさと文章のうつくしさにノックアウトされてしまい、泳ぐだけのシーンをこのように -
Posted by ブクログ
綾部蓮は見た目も良く、自由形のトップスイマー。常に彼女がいて、直ぐに違う人女性になるような男だが、嫌われたりせず、何時も人に囲まれている。しかし、自殺した。
瑛子は彼にひっそり憧れる1人であり、同じ大学の水泳部員であり、伸び悩むスイマーでもある。そんな瑛子が毎日泳ぐ姿は修行僧のようで、魅せられている人が多数いることを瑛子は知らない。医学部の猫堂もその1人。瑛子、綾部、猫堂、北里舞を中心に綾部が自殺に至る前の大学時代とその後が語られ、何故自殺したのかが最後に明らかになる。
プールの青い透明感がずっと感じられる透明感のある、しかしザワザワと心の揺れる文中を漂っていた印象。脚本家出身らしく、映像が何 -
Posted by ブクログ
ネタバレYouTube「ほんタメ」で紹介されていて、手に取りました。
-------------------------
ただならぬ
緊張感と、
ままならぬ
人生の不穏な謎が、
心をざわめかせる。
巷に溢れる、
底の浅い「真相」に
飽き足らぬ人は、
ぜひご一読を。(恩田陸)
若くして自ら命を絶った天才と、
彼と出会った四人に齎せる
謎と恩寵。
忘れがたき
余韻を残す傑作。
-------------------------
最近読んできたミステリーと
雰囲気(毛色?文体?)が異なり、
想像していたのと違う!と戸惑いました。苦笑
最近転職したばかりで、
心も生活もざわざわしているため、
読みやす -
Posted by ブクログ
京都を舞台にした連作ミステリ。実に「京都らしい」要素がいっぱいです。ミステリとしてのネタはあまり派手ではないのだけれど。じっくりと書き込まれた端正な情景描写と、静かながらも惹きつけられる物語に浸れる一冊です。
美山監督と鷺森さんの一見危ういような関係性も魅力的。二人の抱えた「秘密」については最初からなんとなくわかったけれど、それでも興味を削がれることはなく。最後まで物語に飲み込まれるような印象でした。
京都らしいあれやこれやの要素もいいなあ。いかにも、な所じゃなくて、ひっそりとした知られざる名所、のような感じがします。全体としての雰囲気は地味なのだけれど。奥深いところまでじわじわ入ってくるよう