感情タグBEST3
Posted by ブクログ
なんだろう…スケールの大きい海外文学を読んだ読後感。
京都っていう限定された空間の話なのに、時間的にも空間的にも無限が広がってた。
めちゃくちゃ刺さった。
Posted by ブクログ
キリスト教、イスラム教、仏教、源氏物語、そして京都という舞台がなんとも表現できない不思議な読後感を生み出します。どちらも京都が舞台ということもあり、同じ作者の作品「水底は京の朝」にも通ずる不思議な感覚でした。
蓮には何も感じなかったけれども、蓮に直接的・間接的に人生を翻弄された者に心をかきむしられる思いでした。アリジゴクと薄羽蜉蝣を思い浮かべました。
今年のベストテンに入る好きな作品になりました。
Posted by ブクログ
YouTube「ほんタメ」で紹介されていて、手に取りました。
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ただならぬ
緊張感と、
ままならぬ
人生の不穏な謎が、
心をざわめかせる。
巷に溢れる、
底の浅い「真相」に
飽き足らぬ人は、
ぜひご一読を。(恩田陸)
若くして自ら命を絶った天才と、
彼と出会った四人に齎せる
謎と恩寵。
忘れがたき
余韻を残す傑作。
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最近読んできたミステリーと
雰囲気(毛色?文体?)が異なり、
想像していたのと違う!と戸惑いました。苦笑
最近転職したばかりで、
心も生活もざわざわしているため、
読みやすくて読み応えのある(なんて贅沢)本ばかり手に取っていたみたいです。
本書は、
仏教、キリスト教、イスラム教、
そして源氏物語に狐に猫、
舞台は京都が登場します。
このキーワード…!
他の方のレビューにもある通り、
詩的でどこか象徴的で不思議で耽美な文章が連なります。
神の贈り物というべ才能に恵まれ、
美貌を持って周囲の人々を傅かせた綾部漣という青年。
彼は何故自ら命を絶ったのか。
彼に影響を受け、翻弄され、
心を奪われた人が登場します。
物語全体に綾部漣という青年が薄膜のように存在しますが、本書は周囲の人間から見える景色の短編集です。
最初は、
創元推理文庫さんの小さな文字たちと、
内容の読みにくさで、
(通勤で集中できない私が悪い。笑)
読み進めるのに時間がかかりました。
印象的だったのは、
「綾部にかき乱された水はいつも幸福そうに見える。」
という一文。
そんなか…!というのが第一印象でしたが、
綾部漣という男がいるだけで、世界が変わるというような圧倒的というか抗えないものを持っているんだな、と。
後半は、
そんなカリスマ性?を持った綾部漣の
悲哀、渇望が垣間見え、
周囲が傅くような王様ではなく、
ただの青年として描かれることで、
彼が中心ではなく、
そう見えるようにされていただけと思わされました。
結局、彼も見えない運命の中で転がっていただけ。
これはもう少し時間と心に余裕があるときに、ゆっくり読み返したい一冊でした。
Posted by ブクログ
自ら命を絶った肉体と才能に恵まれつついつも退屈を持て余せていた綾部蓮という1人の青年を取り巻く人たちについての連作ミステリー小説。
極めて流麗で端正な文章で、宗教的知識が散りばめられていて、ミステリーとしてもよく練られており、とても読み応えのある小説らしい小説だった。
Posted by ブクログ
内容紹介に惹かれて読んでみた作品。
『綾部漣という青年は、私達にとって遠い国の王様のような存在だった。神の贈り物と呼ぶべき肉体と才能に恵まれ、美貌をもって周囲の人々を侍臣のごとく傅かせ、それでいて何時も退屈を持て余していた。だから彼が自殺した時、その理由を知る者もいなかった』
読む前の予想としては、端からは分からない綾部漣の真実に迫る話なのかと思ったが少し違っていた。
読み始めると、この徒花のような男が男女関係なく周囲を虜にし惑わせるというのは予想通りだったのだが、彼らが綾部漣から離れると、全く違う世界へ入って行くというのは興味深かった。
ある者は綾部漣と同じ水泳の道を突き進み、綾部漣よりも極めていく。そこに医学的ヒントと仏教を絡めていく。
ある者はキリストへの祈りの道に、ある者は仏教の中でも厳しい修行の道へと突き進む。
だがいずれの物語は綾部漣は華やかなパレードが時折交差するだけの、ちょっとした脇役でしかない。
しかし第三話でようやく元彼女の話となる。ここでついに綾部漣の真実が…と思いきや、ここでも彼は女も男も気ままに弄ぶ悪い男でしかない。
水泳の道も第一話の瑛子のような求道者のような熱心さは全くなく、気ままにしかやらない。
だがこの第三話、源氏物語とイスラムの女性たちとの共通点があり、そういう視点で読んだことはなかったと新鮮な気持ちになった。
ついに最終の第四話。これまで度々登場してきた人物が主人公となり、もう一人、やはり度々登場してきた謎めいた教授がクローズアップされる。
ここでついに綾部漣の真実が明かされるのだが、なんとも虚しく切ない物語だった。
綾部漣の物語だったはずが、いつのまにか狐塚教授の物語に取って代わってしまったような、そしてその狐塚教授すら曖昧な存在になってしまっている。
『所詮はうたかた』ということなのか。
『来世に持ち越せるものは』『成就しなかったものだけ(=修行)』という教えはなかなか興味深い。
瑛子が思うように、永遠なのは相愛ではなく片恋なのか。ならばやはり綾部漣の思いは永遠となるのか。そして綾部漣を思う人々の気持ちも永遠なのか。
なんだか堂々巡りのようになってきた。
扱いが難しい宗教を絡めて興味深い物語を描いてくれたのは面白かった。突き詰めすぎでは?と思う部分が無きにしも非ずだが(特に第二話)、興味深く読めたので良しとしよう。
個人的には綾部漣よりも狐塚教授の方が王国を築いていたように見えたのだけれど。