ギュスターヴ・ル・ボンのレビュー一覧
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難解な書 「群衆とは何か」の問いに答える書。
自分なりにくみ取った主旨とは次の3つです
①群衆とは個人の集合体ではない 個性、理性は消え失せて、本能的な人間、野蛮人と化す。
②群衆を支配するのは、群衆の想像力を刺戟する能力をもつ指導者のみである。感情に訴えるものであって、決して理性に訴えるものではない。
③群衆の根底には、民族の伝統があり、それを変えることは、時間がかかる。
ゆえに、指導者は最良の現在の策よりも、1つ前の旧来の策を取らざるを得ない。
気になったのは次の言葉です。
■群衆の時代
・国家の運命が決定されるのは、国王の意見ではなく、群衆の意向による
・最も不当な税目でも、少目 -
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ネタバレ近くの書店の店頭で平積みにされていて、何気に購入したものですが、最近読んだなかでは白眉の内容です。
集団における人間の性質や指導者の関わりなど、類書では「自由からの逃走」「大衆の反逆」「自発的隷従論」などがあると思いますが、冷徹な洞察という点で、この「群集心理」も勝るとも劣らないと思います。断片的ですが、曰く、
・群衆は力を尊重して、善良さには心を動かされない。
・群衆は、弱い権力には常に反抗しようとしているが、強い権力の前では卑屈に屈服する。
・動物の群にせよ、人間の群にせよ、ある数の生物が集合させらるやいなや、それらは、本能的に、首領、すなわち指導者の権力に服従する。
・群衆の精神を常 -
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ギュスターヴ・ル・ボン(1841~1931年)は、フランスの社会心理学者・人類学者・医師。パリ大学で医学を学び、博士号を取得したが、臨床医としての道を選ばず、心理学・社会学・歴史・物理学など幅広い分野に関心を持ち、独自の研究を展開した。1870~71年の普仏戦争に軍医として従軍した経験や、フランス第三共和政下での1871年のパリ・コミューンの暴動を目撃したことが、群衆に対する関心を深めるきっかけとなり、世界各地を旅して人類学的研究を行いつつ、1895年に『群衆心理』を発表した。晩年には物理学にも関心を示し、エネルギーと物質の関係についての先見的な考察を残した。
本書は、個人が群衆の中で理性を失 -
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原書が刊行されたのが1921年であるにも関わらず、2025年の現在でも通じる内容が多く驚いた。
群衆の性質や指導者の性質について事細かに分析しており、特に指導者の人心掌握の手法には共感する所も多くあり興味深い内容であった。
最初から最後まで気になるトピックで構成されており、本書が気になる方は目次だけでも是非目を通して欲しい。
本書では、"あらゆる集団は精神的に低下している為、制限選挙は是認することが出来ない"と述べられているが、集団内で意見が完璧に一致する可能性は低いとしても、多数派が賢い選択を行える場合は民主主義国家において有益ではないだろうか。 -
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マーケティングでよく言うのは「単純明快繰り返し」ですが、宣伝や販促の売り文句は誰でもわかる簡単な短い言葉でまとめ、いたるところで繰り返すのが肝要ということ。繰り返して言っていると、聞いている人は嘘でも段々と信じ始めるから、と…。
「指導者たちは主として次の三つの手段に頼る。すなわち、断言と反復と感染である」
嘘はいけないが、群衆を操作する指導者のテクニックである。
まずリーダーに大事なのは群衆の前での演説ですね。才智や学識は指導者にとって有害で、論理的な思考になってしまう人は歴史的なリーダーにはなりにくいとある。天下取った学者なんていませんからね。一般的に頭が良いと言われる論理的な人はリ -
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フランス革命により起きた大転換を中心に社会を動かす中心は何かを考察した古典的名著。
書かれたのは1895年と古いものではあるが、その内容は恐ろしくも現代にも当てはまる。
群衆とは、ただ人が集まったものでなく、ある指向された思想の元に集まり、個人個人の考えや思想とは別に群相ともいうべき思考様式が発現し、社会を変える程のうねりとなる事である。
その、不思議な特徴は群衆を構成するメンバーの知性や批判的精神は関係なく、人数すら関係ない。
2人以上の複数人がいれば群衆を形成しうる。
仮に個人個人は頭脳明晰で、合理的判断のもとに批判的思考に富んでいたとしても、群衆の一員となるとその理性は抑制され、無 -
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読みながら最近の事件を思い起こすことがめちゃくちゃ多かった。自らも群衆になり得るということに自覚的でありたいと思った。SNSの発達でより群衆化しやすい社会になっているとも思う。群衆を動かす方法も書いてあるのでマーケティングやらマネジメントやらにもちゃんと使えそう。
断言と反覆と感染
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論議の的にされる威厳は、もはや威厳とはいえない。久しいあいだ威厳を保つことができた神々や人々は、決して論議をゆるさなかった。群衆から称賛されるには、常に群衆をそばに近づけてはならない。
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諸民族が束縛に甘んずれば、悪い結果を生ぜずにはいない。諸民族は、あらゆる束縛に堪えることに慣れて、やがて自ら -
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群衆心理
19世末にフランスの心理学者ギュスターヴ・ル・ボン氏が、心理学者の視点で群衆の心理を考察した著書です。
群衆の中で生じる心理、群衆を操る方法などが論じられ、ヒトラーの愛読書でもあったという逸話もある名著です。
【本書で学べること・考えること】
- 心理学的な群衆の定義
- 群衆心理の特徴
1. 衝動的で動揺しやすく昂奮しやすい
2. 暗示を受けやすく、物事を軽々しく信ずる
3. 感情が誇張的で、単純であること
4. 偏狭さと横暴さと保守的傾向(単純かつ極端な感情)
5. 徳性(自己放棄、献身、無私無欲、自己犠牲、公正への要求
- 群衆の説得方法
1. 断言(推理や論証 -
購入済み
今こそ読むべき名著
訳本も半世紀以上たっているので、現代では違和感があるところもあるが、群衆とそれを構成する個人のギャップを見事に分析しているところは名著の価値がある。民主主義が揺らいでいる現代に再度注目すべきい一冊であろう。
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雑に言うと基本的には群衆をボロクソに言っている本だが、なぜ群衆がそのようになるのかを分析しているし、逆に群衆を動かすには?という点にも言及。
現代だとマスコミやSNS、インターネットがあるので、物理的に集まらずとも群衆になり得て、様々な影響出てるよなあというのを照らしながら読んでいた。
理論ではなく心象(イマージュ)によってのみ群衆は動き、それは当時演劇が大きな影響を与えるものとされていたらしいが、今だと人々が劇場に行かずとも影響を与えられるので恐ろしい。
また、「百の小事件より一の大事件が群衆を動かす」とあり、今までも起こっていただろうにマスコミに取り上げられて世間が動く、みたいなのも多々