松平定知のレビュー一覧
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かつて日本で繰り広げられた、戦国大名たちによる国取り合戦。破天荒な生き様だけでなく、時代の先見性で日本自体を前に進めた織田信長。一介の素浪人からのし上がり、民のために領国相模の発展に尽くした北条早雲、幾度も刀を交えながら互いを認め合った武田信玄に上杉謙信、中国地方の覇者毛利元就に、四国を収めた長宗我部元親など、挙げたらきりがないほど多くの戦国大名達が互いの命を懸け、知力と武力をぶつけ合わせてきた時代があった。彼ら自身も他人には無い能力を持っていたに違いないが、その施策・政策・軍事を陰で支え、時には命を懸けて主君に提言するなどし、実質的には歴史を動かすような活躍をするナンバー2の存在があった事は誰もが知るところである。
本書はかつてNHKで放送されていた「その時歴史が動いた」のキャスターを9年間もの間勤めていた、同局アナウンサーの松平定知氏が、番組の終了に合わせて、埋もれてはいけない歴史のナンバー2達を取りあげて、如何にして成功したか、のヒントを得ようとする一冊だ。なお、松平という名字でピンと来るかもしれないが、定知氏は徳川家康に仕えた異父弟の松平定勝を祖とする。未だフリーの現役でご活躍されているが、静かな口調と、時にユーモアを交えて語る姿に、自分の理想の上司像を重ね合わせた方も多いのではないだろうか。正に私もその1人ではあるが、今、現役で働き理想に近い上司に仕えながら(支えられながら)最強のナンバー2にならんと日夜努力を重ねている最中でもある。本書では歴史を動かしたと言える偉業実現を、陰で支えたナンバー2達の持っていた能力に着目する。そこに挙げられる武将達は黒田官兵衛、直江兼続、石田三成、本多忠勝、片倉景綱、藤堂高虎、細川幽斎と、その主君と共に戦国時代に名を馳せた人物達のオンパレードだ。それぞれの優れた特徴として、現代ビジネスにも欠かせない能力を列挙する。
黒田官兵衛の人の心を読む力、相手の立場や状況を理解し何がその人にとって一番重視されるかを読み解く読心術や交渉術。そして立場が上のものを相手にしても、時には毅然とした態度で論理的に正しいことを伝える直言力を持っていた直江兼続。会社を発展させ、事業成功に導くために欠かせない壮大なビジョンと緻密な計画を立案し、実施フェーズに於いても人を上手に動かせる石田三成の構想実現力。攻めと撤退の時期の見極めに優れ、主君家康の勢力拡大を生涯支え続けた本多忠勝。家康の市場開拓には欠かすことのできない人物だ。片倉小十郎景綱は伊達政宗を兄のような立場で支え、東北の覇者にのし上げるが、彼の持つ人の心を動かすプレゼンテーション力は、現代ビジネスにも多くのファンの心を震わせたスティーヴ・ジョブズを思い起こさせる。何度も主君を変えながらも、確実に時代の変化を読み、信念に従って行動を続けた結果、主君家康の絶大な支持を得るまでになった藤堂高虎の転職力。晩年まとめ上げた200ヶ条なるものは、是非原文を読んでみたいものである。そして最後に登場するのは、後に代79代総理大臣細川 護煕を輩出する名門細川家にあって、歌や茶などの一芸を持って家を守り続けた細川幽斎の一芸力。
どの人、どの能力をみても現代人がビジネスを成功させるためには必要な要素であり、憧れの働き方である。本書を読みながら自分に足りない力を知ると共に、能力研鑽のヒントにしながら、自身のキャリアを磨く道標になるかもしれない。流石にビジネスで切腹したり、斬り殺されるような事は無いから、何なら、もっと積極的に勇気を持って能力発揮にチャレンジすることも可能だ。多くの知恵と行動を松平氏と一緒に学びながら、前へ進むヒントが散りばめられた一冊である。 -
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松平氏は「その時歴史が動いた」の番組中、一切カンニングペーパーなしで言葉を紡ぎ出している。秘訣は書くこと。書くという作業を通して自分の頭の中、体内に言葉を巡らせ、言葉を言葉としてではなく肉体化しているという。だからメモは捨ててしまう。その方がその時にふさわしい言葉が出るし、助詞を間違えてもパニックに陥らない。時にはつっかえたり、「おー」とか「うー」とか余計な言葉が入るが、日本語として不完全かもしれないけれど、言葉にはパッションが乗り移る。語順が乱れていても、聞いている人には伝わるもの。劇作家の平田オリザもかっちりした言葉で過不足なく伝えても却って伝わらないと言っている。そのため、演劇ではあえて「あー」とか「うー」を入れる。流暢に原稿を読むだけではあまり人の心に響かない。プロンプターに慣れてしまうと自分の発言でさえ、どこかに書いてないと不安で一言も喋れなくなる。不安定はダメだが非安定はいい。要は伝えようとする気。これが一番大事なのだ。
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このところ読書のペースが落ちていたので、ちょっと気楽に読める本として選んでみました。
テーマは「言葉」。元NHKアナウンサーの松平定知氏と10人のゲストとの対談です。
山根基世さん、藤原正彦さん、姜尚中さん、鴨下信一さん、半藤一利さん、檀ふみさん、ジョン・カビラさん、佐高信さん、落合恵子さん、そして、田辺聖子さん。これらゲストの面々も松平氏に輪をかけて一家言ある方々ですから、なかなか辛口のコメントも登場します。
そういうやり取りもおもしろかったのですが、評論家佐高信氏との対談の章で紹介されていた詩人吉野弘さんの作品「祝婚歌」は、私にとって素晴らしい発見でした。 -
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吉野弘「祝婚歌」
二人が睦まじくいるためには
愚かでいるほうがいい
立派すぎないほうがいい
立派すぎることは
長持ちしないことだと気付いているほうがいい
完璧をめざさないほうがいい
完璧なんて不自然なことだと
うそぶいているほうがいい
二人のうちどちらかが
ふざけているほうがいい
ずっこけているほうがいい
互いに非難することがあっても
非難できる資格が自分にあったかどうか
あとで疑わしくなるほうがいい
正しいことを言うときは
少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは
相手を傷つけやすいものだと
気付いているほうがいい
立派でありたいとか
正しくありたいとかいう
無理な緊張には
色目を使わず
ゆったり ゆたかに
光を浴びているほうがいい
健康で 風に吹かれながら
生きていることのなつかしさに
ふと胸が熱くなる
そんな日があってもいい
そして
なぜ胸が熱くなるのか
黙っていても
二人にはわかるのであってほしい
落合恵子:オーストラリアのフェミニスト、ジュディ・スモール「Mothers, Daughters, Wives」