アントニオ・タブッキのレビュー一覧

  • 島とクジラと女をめぐる断片

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    ヨーロッパの最西端と言われるポルトガル領の群島、アソーレス諸島。その近海を泳ぐクジラと島の捕鯨手たちの物語を、虚構混じりの断片から浮かび上がらせていく掌篇集。


    再読。何度読んでも美しい本、同じフォーマットを使って自分の好きなものを語りたいと憧れる本だ。史実に即した事柄を語るときにもタブッキは夢を見ながら語っているかのようで、それがクジラの泳ぐ大海を身一つで漂うような読感を生みだす。
    深夜に見たNHKの番組でアソーレス諸島近海のクジラを取り上げていたのをきっかけに再読したのだが、あの海の青さを見てからだと、本書を読んで頭のなかに結ぶ像の色彩設計がガラッと変わってしまった気がする。「水みたいに

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    2022年07月20日
  • 島とクジラと女をめぐる断片

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    虚構と隠喩
    仕掛けられた世界を始終彷徨うも
    掴めそうで掴めない島・クジラ・女の話

    詩的情緒湛える散文は
    時間と空間を歪める印象を残す

    150頁に満たない物語
    思考するほど厚みが増すような
    タブッキ…煩雑な出会い

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    2022年06月08日
  • 島とクジラと女をめぐる断片

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    まえがきからあとがきに至るまで、すべてのテキストが作品の要素となっている詩的な作品集でした。

    まず自分はアソーレス諸島がどこにあるのかも分からず、どこか空想の産物のような気がしつつページをめくっていました。世界地図で確認したら、ポルトガルから大西洋へだいぶ行った先にちゃんとあるではないですか。この世にアソーレス諸島はあります。

    とはいえ大陸からはなれて地図の1番端にあるため、世界からはみ出しているというか、まるで世界の果てにあるようです。タブッキの文章と合わせると、やっぱりどこにもない島のような気がしてきます。文章を通してたどり着ける島は、逆に言えば、永遠にたどり着けない島でもあります。テ

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    2022年05月22日
  • 島とクジラと女をめぐる断片

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    ネタバレ

    インド夜想曲を読んだあとに読んだ。インド夜想曲のほうが、主人公の目的がある分、全体としての話ははっきりしている。ただ島とクジラと女をめぐる断片のほうが、一つ一つの挿話の質は高かったように思える。
    好みの問題ではあるが、私はこちらのほうが面白かった。

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    2022年04月21日
  • 島とクジラと女をめぐる断片

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    ネタバレ

    役に立たない原典探しでたどり着いた本。読んで良かった……。会話文と地の文がひと続きになっているだけでなく虚構と現実もひと続きになっていて、詩情におおいに溢れており、女をめぐる断片とクジラの断片には感嘆させられてしまった。

    女は名前以外全て嘘をついていたということは、下男だと言い放ったのも嘘だったのだろう。そう思うと、裁判で真実が明らかにされて男は後悔したのかもしれないが、大陸から追いかけてきた奴から女が逃げるためには男に銛で殺してもらうしかなかったのかもしれないので、確かに男(ルカーシュ・エドウィーノ)と女(イェボラス)の間には愛があったのかもしれない。

    クジラから見た人間の姿は本編を総括

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    2018年10月13日
  • 島とクジラと女をめぐる断片

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    誰かの語る物語に耳を傾けているような、隣りの会話を盗み聞きしているような、旅をしている心地になる詩のような一冊。物語を深く味わうというよりは歌に身を任せてたゆたうよう。
    須賀敦子さんの解説が素晴らしい。

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    2023年10月03日
  • 島とクジラと女をめぐる断片

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    ネタバレ

    この作品を味わうには、今の己の知見では不足しているな、と感じさせられた作品。けれど数年後に読み返したら違う感覚を得られそうだとも思えた作品。
    「この本の主題は、主としてクジラだが、生き物としてのクジラというよりは、むしろ隠喩のクジラだと言いたい。」とあるように、隠喩が多いからか、物語の輪郭がはっきりせず夢の中のような感覚に陥る。
    アントニオ・タブッキの構成も然ることながら、おそらく訳者の意図でもあるのだろうと感じた。

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    2023年03月14日
  • 島とクジラと女をめぐる断片

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    物語のようでいて実のところは“詩集”なのだろうか…
    解説や訳者の後書きにもあるように、クジラは暗喩のようなのだけれど、自分にはそれがよく分からず、つまりは浅い読みに終始しまたのかもな…

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    2024年09月04日