星月渉のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
最恐小説大賞受賞作。えげつないホラーでありながら、どこかしら悲しみを感じさせられるイヤミスでもあります。
「郷土資料研究会」を立ち上げ、自分の目に適った生徒を集めていた一人の少女。そしてある日、何者かに殺されてしまった彼女。彼女は何のために、その生徒たちを集めていたのか。そして彼女を殺したのは誰なのか。各登場人物の物語が順番に綴られ、すべての意図が明らかになっていくのだけれど。
これは予想以上に酷かった! 筆致は軽妙で読みやすいのだけれど、どこまでも悪辣で醜悪な立場に置かれた登場人物たちの物語があまりに痛い。それをあんな風に利用するというのも卑劣。なのだけれど、彼ら彼女らを繋ぐものが何なのかがわかった時、その残酷さに戦慄させられます。結局のところ、諸悪の根源であるあの人以外はみんな被害者だったと言えるのかもしれません。そして、彼女のささやかともいえる望みが切なくてたまりませんでした。 -
Posted by ブクログ
私の死体を探してください。
著者:星月 渉
⸻
あらすじ:
人気ミステリー作家・森林麻美が、突如自身のブログに「私の死体を探してください。」という意味深な言葉を残し、姿を消す。その後もブログは予約投稿という形で更新が続き、関係者の過去や秘密が次々と暴かれていく。義母、夫、担当編集者、かつての友人――麻美を知る者たちは、ブログの内容に翻弄され、次第にそれぞれの闇と向き合うことになる。果たして麻美の目的は何だったのか。そして彼女は本当に死んでいるのか? 欲望と復讐が渦巻く、現代型ノンストップスリラー。
⸻
感想:
星月渉さんの作品を読むのは初めてでしたが、本作は非常に濃密かつ斬新な構成で、読み応えがありました。王道のミステリーとは異なり、SNSとブログという現代的なメディアを巧みに取り入れ、読者に対して直接問いかけてくるような臨場感がありました。
「私の死体を探してください。」というタイトル自体が強烈なフックであり、ただの遺書的な言葉ではなく、まるで読者や関係者への挑戦状のように感じられます。麻美が本当に死んでいるのかどうか、という謎のもとで進行する物語は、複数の視点が交錯しながら、真実と嘘、善意と悪意の境界を曖昧にしていきます。
特に印象的だったのは、麻美が自身のブログ内で小説『白い鳥籠の五羽の鳥たち』を同時連載しているという構造で、現実と虚構が入り混じり、読者としての立ち位置が何度も揺さぶられました。死体という言葉が単なる遺体を指すのではなく、麻美の過去や心、あるいは作家としての「死」を象徴しているという読み方ができ、タイトルと物語のテーマが深く結びついていることに気づかされます。
登場人物それぞれが抱える執着や依存、後悔や憧れが生々しく描かれており、それぞれの視点から麻美という人物像が少しずつ浮かび上がってくる構成も見事でした。とくにラストに向けての伏線回収と真相の明かされ方には、「ああ、そういうことだったのか」と読後にしばし呆然とさせられるほどの衝撃がありました。
読み終えたあと、「では、死体とは何だったのか?」と改めて問い直したくなる、そんな深い余韻を残す一冊でした。星月渉さんの他の作品もぜひ読んでみたいと思わせてくれる、鮮烈なデビュー作です。