この本の付章 内乱の余波 ということで、以下のように書かれていました。
わたくしは、一つの歴史的事実の意義を評価する場合、いつもその前後の半世紀、通じて1世紀を明らかにすることを主張している。
歴史の移り変わりをながめてみると、半世紀すなわち人間で言えば1世代(ふつう30年をいう)がすっかり変わると
...続きを読む、どんな問題でも新しい変化が生まれてくるようである。
そうしてはじめて、歴史的事実に対して客観的な評価ができるような気がする。
と書かれていました。
その上で、この本では、南北朝の内乱は、ふつう4つの段階に分けて考えられるとし、
第一は建武新政府の成立を最後として、王朝権力の没落する過程であって、そこには結城宗広、楠木正成、そして足利尊氏がそれぞれの立場で活躍するであろう。
第二は、武家幕府の中枢部の分裂によって、南山にも天下統一が夢みられた時期であって、そこでは後村上天皇という苦難の人の生涯を点描することにした。
第三は、守護勢力の強化によって権力が分散し、やがて再編される過程であるから、守護の勢力の典型を佐々木道誉に見ることにしたのである。
最後は国内統一の完成期であるから、当然足利義満に登場ねがわねばならないであろう。
こうして、南北朝内乱の推移をそれぞれの人物に焦点をあてながらたどってみたいと思う。
したがっていわゆる人物史というのとは、また異なるであろうが、これも内乱史の一つの試みに過ぎない。
というアプローチのやり方ですが、残された文献を俯瞰する態度で読み解き、読者に説明されている。
楠木正成をただ単に「太平記」で分析しないところが、私にとっては新鮮で面白く読めました。