山本薫のレビュー一覧
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現代パレスチナ文学の騎手である、アダニーヤ・シブリーが2017年に発表した小説。
1949年8月、ナクバ渦中のパレスチナで起きた実在の少女強姦事件から着想を得た作品とのこと。
本作は第一部と第二部で分かれており、第一部では1949年8月のその事件をイスラエル軍の兵士の目線で語る。
そして第二部は飛んで2004年現代のイスラエルで暮らすパレスチナ人女性が少女強姦事件の記事を見たことでパレスチナに渡って事件の痕跡を辿るという物語。
虐殺は個々人の人生を大きな出来事として括ってしまい、彼ら彼女らの人生を剥奪してしまうものだ。「とるに足りない細部」として。
この物語はそんなパレスチナで人知れず個人に降 -
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アラビア語の原題は“تفصيل ثانوي”、英語では”Minor Detail”。 ثانويはminorやsecondaryにあたる言葉らしく、副次的や従属的を指し、いずれにしろ「主流ではないもの」を意味するようだ。
著者はパレスチナ生まれ。現在はエルサレムとベルリンを拠点にしている。
本書の原著はアラビア語で書かれている。各国語に訳されているが、邦訳は重訳ではなく、アラビア語から訳されている。
第一部と第二部に分かれた中編。
いずれもテーマは、1949年8月、ナクバ(「大惨事」)に付随して起きた、イスラエル兵によるベドウィン少女の集団レイプ殺人である。第一部では、当事者のイスラエル軍将 -
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物語は烏丸酒造の「風の壱郷田」の田んぼの山田錦に、刺激臭のある青紫色の薬剤が撒かれたことから始まる。烏丸酒造は、一本100万円以上になる純米大吟醸を作っている。その100万円の価値が決まったのは、オークションである。パリオークションとニューヨークコレクションがあり、パリオークションで、最高値がついた。烏丸酒造は、1600年代初頭、大阪の陣の頃からの創業。400年の歴史を持つ酒造屋である。先祖伝来、一子相伝で口伝の玉麹の技法がある。通常は麹米を総破精麴であるが、吟醸は突き破精麴が使われる。玉麹は、米の中に麹ができるようだ。
田んぼに毒が撒かれて稲が枯れ、脅迫状が届いた。身代金の要求は500万 -
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「山田錦」をご存知だろうか。イネの品種の1つで、酒造好適米(いわゆる酒米)の代表格である。兵庫県で大正年間に育種され、以来、多くの酒造家に好まれてきた。現在でも酒米の最大生産量を誇る名品種である。
本書の主題はその「山田錦」。
1本100万円という高級日本酒の醸造元である烏丸酒造に、脅迫状が届いた。日本酒の原材料となる「山田錦」を育てている田んぼに毒を蒔く、やめてほしければ500万用意しろという。実際、田んぼの一部に毒が蒔かれているのが発見され、酒造会社は大騒ぎとなる。
由々しき事態。しかし、超高級日本酒を相手取ったにしては要求が低すぎないか・・・? 犯人の狙いは何なのか。
警察も捜査に乗り