山本知子のレビュー一覧
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私たちが「自分」と呼んでいるものは何でしょうか?
それは、過去に出会った人の面影だったり、ふとした瞬間に眺めた風景の記憶だったり、あるいは選ばなかった選択肢への小さな傷跡のような、かたちのないものが寄り集まってできるものなのかもしれません。
そして、様々な人と関わり、傷つき、あるいは救われるなかで、少しずつ削り出されるようにして「自分」になっていくようにも思えます。どこか掴めないけど、深く広い。まるで、どこまでも続く青のように。
谷川俊太郎の「青は遠い色」がこの本のことをよく表してるようにも思えたので、載せておきます。
どんなに深く憧れ、どんなに強く求めても、青を手にすることはできない。
すくえば海は淡く濁った塩水に変わり、近づけば空はどこまでも透き通る。
人魂もまた青く燃え上がるのではなかったか。青は遠い色。
自分とは、消えない手触りを誰かの中に残していくことなのかもしれませんね。
ジョアンヌとエミルがこの詩を知っていたら、きっとあのノートに認めていたんじゃないかな、と思います。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ若年生アルツハイマーの青年と心に傷を負った女性のキャンピングカーの旅。2人は家族から離れることを望んだが、その旅の中で他者に助けられ、壮大な自然を感じて自分たちの傷を癒していく。それに比例して病気の進行はすすみ、最後子を亡くした母としてエミルの母親に連絡して家族が看取る。
途中の病気の進行で幼児退行してしまったり心臓の病気だったり、最後にエミルが亡くなってしまうことが最初からわかっているからこそ今まで築いた2人の関係性がエミルの中から失われていくのがとても辛い。最後にエミルのお母さんに電話したジョアンナの決意が素晴らしかった。エミルとジョアンナに最後言葉はいらなかったんだね。徐々に明かされて行くジョアンナの過去、ブルートムって息子だったんかと驚き、素晴らしいお父様や夫のレオンの意気地がないことよ。
お父さんが死んだ後もジョアンナに合図を送るとか、ノートを通じてジョアンナが1人にならないようにするエミルだったり、やっぱり人って独りでは生きていけないんだな、ジョアンナ愛されてるな。
途中で2人が性的交合をしたのは解釈違いだなぁって思っていたけど最後の妊娠でそうだよエミルはローラと結婚して幸せになりたかったよなって腑に落ちた。家族としてどんどんつながりをもちエミルもその中でジョアンナのそばにトムといてあげてるって考えたいね。 -
Posted by ブクログ
2026/8/30
若年性アルツハイマーを患い、余命宣告を受けた26歳の青年エミル。
ネットで、旅への同行者を募集し、申し出てきた女性ジョアンヌと共に、最後の旅に出る。
エミルはもちろんなんだけれど、私はジョアンヌにとても感情移入して読んだ。
初めは何を考えているのかわからなかった彼女だけれど、後半、ジョアンヌの過去が語られてからは一気に引き込まれた。
エミルと徐々に絆を深め、そして彼女自身も過去と向き合い、最後に彼女がとった選択にとても共感した。
死にゆく人、死を看取る人、そして彼を愛する人々。
たくさんの人の思いに、涙が止まらない。
優しくて、温かい感動の物語だった。
ジョアンヌが、穏やかで幸せな人生を歩めますように。 -
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表紙の綺麗さに一目惚れ。もうこれ絶対泣くやつやんとわかってはいてもアルツハイマーになってしまった青年が最後どうするのかが知りたかった。自分の最期は自分で決めたいと固執するあまり細かいところまで目が届かず、ここ抜けたらあかんやろってところが抜けている笑。この旅の同行者、見届け人のジョアンヌとの関係で少しずつノートに記録したり手紙を書いたり家族と少しでもつながろうとしてるのがこれまたメンタルくる。1番辛かったのは老婦人に病気のことを打ち明けるシーン。老婦人をこれ以上困らせないために打ち明けるけどそれもまた老婦人側からしたら苦しいよね。受け止められる器量の大きさよ。あとは旅を通じて主人公の世界が広がるけど、比例して病気は進行していく。家族も無理に病院にずっと入院させる気はないと思うけど内服ぐらいはした方がいいのではないかと思ってしまう。病気を免罪符に最後の旅をするのはいいけど、残される家族のことを思うと苦しむんじゃないかとも思ってしまう。
下巻でずっと未練たらたらの元恋人、ブルートムなど関わってくるんだろうなと伏線を感じ、病気が進行していく葛藤と苦悩が想像でき、泣く準備を始めます。 -
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『空、はてしない青』(メリッサ・ダ・コスタ)
上下巻まとめての感想です!
※読み終えてから少し時間が空いてしまったので、細かな出来事よりも、今でも心に残っていることを中心に感想をまとめました。
若年性アルツハイマー型認知症を患った青年エミルが、残された時間で「行きたい場所へ行く」という夢を叶えるため、キャンピングカーで旅に出る物語。
ただ、一人で旅をするのは心細い。
そこでインターネットで同行者を募集し、現れたのがジョアンヌという女性だった。
ほとんどお互いのことを知らないまま始まった二人旅。いろいろな土地を訪れ、人と出会い、同じ時間を過ごすことで、少しずつお互いが抱えているものが見えてくる。
この作品で印象に残ったのは、「病気と闘う物語」というよりも、限られた時間の中でどう生きるのかを描いた物語だったこと。
エミルの病気は少しずつ進行していく。
今まで当たり前にできていたことができなくなり、大切なことを忘れ、自分自身すら分からなくなっていく。その怖さが描かれる一方で、旅先で見る景色や、出会った人との時間、誰かと一緒に暮らす何気ない日常の温かさも丁寧に描かれている。
そして、これはエミルだけの物語ではなかった。
同行するジョアンヌにも彼女なりの過去があり、二人が一緒に旅をすることで、お互いの人生が少しずつ変わっていく。
読んでいる途中は、病状が進んでいくことが分かっているからこそ苦しく、「この旅がずっと続けばいいのに」と思う場面も多かった。
それでも読み終わった後に残ったのは、悲しさだけではない。
人の記憶や命には限りがある。それでも、誰かと一緒に過ごした時間や、その人が誰かの人生に残したものまで消えるわけではない。
長い上下巻だったけれど、旅を通して少しずつ変化していく二人を最後まで見届けたことで、タイトルの『空、はてしない青』がとても印象に残る作品になった。
人生の終わりを描きながら、それでもその先へ続いていくものがある。
悲しいけれど、最後にはどこか温かさが残る物語だった。 -
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ネタバレちょっと昔、「インドに行って自分探しをしてくる」みたいな言説が流行った時期があって
それに対して「いやいや、インドで見つかる自分ってなんだよ(笑)」というカウンターまでがひとまとめだったのだけど。
よくよく考えてみると、インドという何もかも今までの常識が通じない場所に自分がどう対応するか……の部分がいわゆる「自分探し」なのだなぁ、という考えがふと思い起こされた。
この旅は、同情されたくないというエミルの逃避的な行動から始まっている。
旅の中では予測できないこと、自分からは出てこなかった発想、見ようと思わなかった景色、そんな様々な出来事が起きていく。
エミルもジョアンヌも人生に傷を抱えていたけれど、旅の中で新しい価値観に触れそれを昇華する。
まぁ確かに、あてのない旅は放浪と呼ばれ、帰る場所があるからこそ旅と呼ばれるのですね。最後の最後にエミルは家族のもとに帰ったのだと……。
人生はただの記憶の積み重ねではなく、青が持つ深さのように無限の意味を持っているという希望にあふれた物語でした。
つかジョアンヌがヒロインとして完璧すぎてな。エミルはなぜあんなにローラを引きずっていたのか……。 -
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自然を感じる旅をすると、生きてることがどんなに幸せで美しいか思い知ることがある。
フランスのピレネー山脈の雄大な景色を想像しながら、いつか私もこんな旅をしてみたいと思いを馳せながら読みました。
日常のしがらみから解き放たれて、生きることの意味を味わってみたいな。
それはやっぱり、死を間近に感じるからこそ、なのかなぁ。
エミルとジョアンヌが徐々に打ち解け、心を通わせていくのだけど、一箇所びっくりしたところがあった。それは↓
"ジョアンヌがトイレで「クソまみれ」になっている姿に、体が痙攣するほど笑い、さらに、
「目を閉じて、マインドフルネス状態で今このときを感じて」
「きみの肌についたクソの臭い、手触り、その温かさに集中してください」"
終始美しい文脈だったから、びっくり笑
でも二人のが笑い転げてる姿も想像して、
ジョアンヌやるじゃん!!
という具合に、個人的にジョアンヌが大好きになった瞬間でした笑
「美しさとは見たもののなかにあるのではなく、それを見る目のなかにある。」
ほんとにその通り。
同じ空を見ていたって感じ方は人それぞれ。
小さな幸せに気づける心を、真実を見つけられる目を持ちたいなって思いますね。
エミルの症状の進行が、認知症の母の状況と相まって、その介護が優しすぎるジョアンヌはほんとに素晴らしい人。ジョゼフの子育ても素晴らしいってことね。子を育てる親として、ジョゼフの言葉が私には刺さりました。
"本物の知識は資格で測れるものじゃないんだよ、ジョアンヌ。読んだ本の冊数でも測れない。彼に、空の星や、生まれては枯れていく植物や、夕日の美しさを見せてあげなさい。ライラックの香りを嗅がせ、海の音を聴かせてあげなさい。"
ジョゼフの教育に共感。
(なかなか難しいんだけどね…)
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Posted by ブクログ
#立ち上がる時 下
#メリッサ・ダ・コスタ
『「ふたりで生きていくことは砂時計のようなもの」というエレオノールのセリフがありますが、カップルは、どちらかがうまくいっている時、もう一方はそうではなく、同時にふたりが幸せになることはないんだと。そういう、誰かと生きていくことの難しさや、口幅ったく言えば、愛することの本質がリアルに描かれた物語です。』〜翻訳者山本知子氏のインタビューより〜
でもふたりは人生の急峻な山道を、九十九折りのように、時に寄り添い、時に激しくぶつかり、時には後戻りしながらも懸命に登る。周囲の人に助けられながら。
#読書好きな人と繋がりたい