かこさとしのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
今年(2026年)生誕100年の節目となるかこさとしさん。
そういえば、今年は安野光雅さんも生誕百年だそうで、日本の絵本の歴史に名を遺すお二人が同年であったことにいまさらながら気づく。
子どものころ、ずいぶんこの人の絵本を楽しんできた。
この本を通し、ひさしぶりにだるまちゃんにも、とこちゃんにも、カラスのパン屋さんにも出会った。
かこさんのお嬢さんが大好きだったという「どろぼうがっこう」にも。
さて、本書はかこさんの自伝的エッセイ。
こどもたちへのメッセージを託した本である。
「不肖の父」という話が面白い。
子煩悩だが、あまり子どもの気持ちがわからないお父様であったそうだ。
子どもの頃のかこさんは、おもちゃ売り場で、どうやtったら自分で作れるかと考えて眺めていれば、「そうか、それがほしいんだな」と買ってしまう。
まず自分で作りたい、と思う子どもであったというところに驚いてしまうのだが、そういうお父さんの好意を「親に無駄金を使わせた」と思ってしまう。
子どもはおとなの思うようには生きていない、と悟る原体験のような出来事であったそうだ。
会社員(昭和電工)と、絵本作家の二足の草鞋を20年ほど履き続けるのだが、会社員として120%の力を出さないといけない、という心構えでやってきたそうだ。
100%以下では、何か失敗した時、必ず絵本作家としての活動を批判されるからだとのこと。
昭和の人らしいモーレツぶりだなあ、と一瞬思ってしまったが、あれだけの仕事量をするには、生半可な気持ちではできなかったのだとすぐに思い至る。
終戦時、二十歳少し前。
自ら航空兵になることを志願し、視力が悪くて断念。
同級生で選考に残った人たちが、二十歳たらずで死んでいったのに、自分は生き残ったという負い目と、終戦(彼ははっきり「敗戦」と書く)を境にいうことを180度変えた大人たちへの不信感が、その後のかこさんにつながっていく。
戦場に行くことはなかったけれど、加害者としての自分の立場から目をそらさない人だったとわかる。
加担する者の責任といえば、原発(本書は東日本大震災の後に出版されている)に対するコミットメントの姿勢にも加担した責任に向き合おうという姿勢が感じられた。
出版されかけていた原子力のことについての本の出版を急遽差し止め、大幅に修正したそうだ。
責任を取るということばは簡単だが、実際どうやったら責任を取れるのか、よくわからないことがある。
しかし、かこさんの場合はこれが責任の取り方だった。
「子どもたちに生きることをうんと喜んでいてほしい」という願い。
それを原動力に生きていた人の言葉の重みを感じる。 -
Posted by ブクログ
かとさとし先生の絵本にはもちろんお世話になっていたし、だるまちゃんも大好きだったけど、こどもの頃は作者という概念もなかった。長じてから、あれもこれも同じ人が描いていたのかとやっと気づかれるのが絵本作家というものだろう。
大人になったあとも、絵本作家の大御所くらいにしか認識していなかったし、特別ファンというわけでもなかったが、表紙のだるまちゃんが懐かしくて手にとった。初めて訪れた駅でたまたま立ち寄った小さな本屋の品ぞろえが気に入って、応援したい気持ちもあって購入した。
かこさとしは、終戦を19歳で迎える。軍国主義から手のひらを返したように態度を変えた大人に絶望し、未来を子どもたちにみた。東大を出て、会社員として働きながら、セツルメント活動、絵本や劇の創作、研究や論文執筆(博士号取得)に取組んでいたという。こんな人だとは全く知らなかった、専業の絵本作家だと思っていたし、科学的な絵本も手掛けているのはなんとなく知っていたけど、依頼を受けて何でも描いていたのだろうくらいに思っていた。
本書ではどんな意志をもって、仕事に子どもに人生に向き合っていたかが本人の言葉で語られている。セツルメント活動への情熱、子どもの文化や人格に対する敬意が印象的だった。また、自身の家族のことはほぼ放っておいたらしく、家庭人としては落第だったと素直に吐露されている。ご家族以外は知る由もないが、昭和の男性の働き方や家庭との関わりを考えると、それを自伝に書けるのが正直なお人柄を語っていると思うが、そもそも「こどもは自分で遊ぶものだ」「自分にはやらねばならぬことがあるのだから、たとえ暇があっても遊ばない」という主義だったそう。
最近の子どもを見ると、学校や学童保育、習い事で常に大人に管理されると感じる。少子化や生活時間の違いのせいかもしれないけど、街をぶらぶら歩いている子どもとか自転車で群れをなしている子どもを全然見かけない。私が子どもの頃は学校が終わったら友だちと公園で遊んで、チャイムが鳴れば家に帰って親の帰宅を待っていた。かぎっ子だって珍しくなくて、寂しいと思ったことすらなかった。心細く感じることもあったけど、そういう子どもの心理をあらわした児童文学もたくさんあった気がする。大人なのに、子どものそういう気持ちを描ける作家さんたちは本当にすごいと思うし、時代が変わってもちゃんと子どもに支持されていて感慨深い。 -
Posted by ブクログ
友人がSNSで紹介していたのを機に購入。お名前は知っていたが、なぜか絵本に触れることもなく過ごしてきた。しかし、一読して、素晴らしい表現者であることに唸らされた。覚悟もやり方も、表現も、とても簡単に真似できるようなシロモノではない。けれど、物語を書くものとしてハッとさせられる箇所、学びを得る箇所はたくさんあって、なにより「正直」に居たいと痛感した。
(24.7.30.奥さんのことを書かない作家はちょっとな、という自分流分類を思い出し星ひとつ減)
余談だが、戦中から戦後の「手のひら返し」は、皆川博子さんの幻想短編集「蝶」や、ドナルド・キーン氏の「日本人の戦争 作家の日記を読む」中の永井荷風らの著述にて、文人の目にはやはりそらぞらしかったことが述べられている。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ絵本作家として有名なかこさとし氏の半生と、未来の子供たちへの想いが綴られた本作。
前半は朝ドラを楽しんでいる感覚で、後半は子どもを育てていく大人のための参考書として読ませてもらった。
著者は絵本作家だが、工学部出身で、50代半ばまで一般企業の研究員として働いていたということに驚かされた。
幼いころから絵が好きで、親の目を盗んで風呂沸かししながら絵の練習をしていたこと、学生時代には工学を学びながら、文学や演習の勉強をしていたこと、社会人になってからは仕事と子どもとの交流や作品作りを2足のわらじを履きながら続けてきたこと…常に生活とバランスをとりながら絵本作家としての自身を築き上げてこられてきた。
純粋にすごいバイタリティだと思うし、人間本当にやりたいことであれば置かれた環境を言い訳にせずに、どれだけでも打ち込めるものだと思い知らされた。
また、専攻してきた学問の知識や、社会人としての経験が、作品を作る上での基本的な哲学になっているのも感じた。子ども騙しの見かけのみの演出だけではなく物事の本質に迫ろうとする姿勢が、何世代にも渡って子どもの心を掴み続けてきたのだと思う。
自分も幼少期に愛読していたカラスのパン屋さんなどのあの好きなページに隠された作者の考えなども知れてよかった。自分の子どもにもぜひ読み聞かせしてあげたいと思う。