牧野伊三夫のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
東京旅行中に立ち入った書店で目に止まり購入しました!
帯の「情報があふれかえる今だから、せめて旅くらいはアナログがいい。」という言葉にきっと羨ましい気持ちを抱いたのだと思います。
僕は事前に行きたい場所を調べ、電車を確認し、どちらかと言うと計画的に旅行をしていました。そこで出会ったこの作品。読んでいてこういう旅がしたい!と思ってしまいました。
羨ましい気持ちを抱くと同時に共感できる部分もあり、それがまた読み進める手をとどんどん加速させていきました。
牧野さんは画家ということで、僕も旅行で回ったあれこれを絵に書いてみました!影響されやすい性格で笑
よし、1人で旅に出て酒飲んで温泉入ってダラダラしよっと。 -
Posted by ブクログ
呑んべえによる美味エッセイ
はじめましての作家さん。(画家らしい)
でもはじめましてな感じがしない。
惹かれたのはタイトル。
かぼちゃの煮物が好きなので、いつも何も疑わず砂糖と醤油で美味しく煮て美味しく食べていました。いつだったかかぼちゃは塩で煮るだけで美味しいと何かで目にして以来ひっかかってはいたもののいざ煮ようとおもうと砂糖と醤油を入れてしまう。
なかなか塩で煮たかぼちゃが作れずにいたところのこのタイトルだったので迷わず手にとる。
結果凄くタイプでした。
こんなにも炭で炙っためざしに惹かれる日が来るとは思いませんでした。
これからはワンプレートではなくちゃつと言おうかしら。
最後の稲垣えみ子さんの文庫解説も凄く面白くて良かった。仙人って。ふふふ。
そこで知る牧野さんは暮らしの手帖やクウネル(リニューアル前)の人でしたのね。
じゃぁはじめましてではないです。 -
Posted by ブクログ
著者は現役の画家。夕刻には絵筆を置き、ひとっ風呂浴び、いそいそと晩酌に臨む。その晩酌は3時間に及ぶとか。晩酌を豊かなひとときにするために、その準備は朝、妻との2時間の散策の際、「今夜は何を食べよ?」という語らいから始まる。著者曰く「寝ても覚めても頭の中は食うことばかり」が渦巻く御仁。確かに台所に立つことうん十年だけに、そのレパートリーは広い。
野菜とにんにくを煮込んだだけのやさしいスープ、せっかちな酒呑みのための3分おつまみアレコレ、不味いマグロを美味しく食べる方法、コーンビーフホットサンド、まずいまぐろのうまい食べ方、バナナフランベ、めざしの炙り方、鰹出汁をきかせたカレー鍋など料理の大まかな手順がエッセイの中に溶け込んでいる。料理に大事なのは、分量ではなく塩加減と火加減と言い切る。
そう、本書の醍醐味は、著者の日々の暮らしの中の大部分を占める「食べることの愉しみ」実現に向け、著者が嬉々として取り組む様子が味わいのある筆致で描かれている。その象徴が、食卓の傍らに置かれた「火鉢」。
著者は語る。「夏は羊肉やとうもろこしを焼き、冬は小鍋をかけて湯豆腐やとり鍋などをやる。よほど忙しいときでないかぎり炭火の隣に座り、2,3時間酒を飲む。それが我が家の晩ごはん」。システムキッチンやル・クルーゼがあるわけではない。小さいけど行き届いた台所に夫婦で立ち、冷蔵庫の3段の棚は各々食材を置き場所が決められ、それらを使い込んだ調理器具で作る。七輪では旬の食材を焼き、炙り、煮込み、酒を燗にする。
著者は決して風流を気取ったり、文明社会へのアンチテーゼとか原発反対と言ったイデオロギーさなんてものは微塵もない。炭火生活は四半世紀にわたり20代後半からやっているから、かなりの年季が入ってる。
著者は坦懐する。「画家になったものの絵はほとんど売れず貧乏をしていたが、料理をしていたおかげか心が荒んで貧しい気持ちにならなかった」というから、著者の場合、仕事のない不安や貧乏や寂しさや惨めさを乗り越えるためにあった料理は、癒しであり、励ましであった。
確かに一日なんてあっという間だけど、その一日には大きく立ちはだかる山が待ち構えている。それをどうにかこうにか乗り越え、晩酌に辿り着く。著者は、まず風呂につかり、炭火を眺めながら盃を傾ける。愉楽の宴の幕開け。今日の全力に乾杯し、明日への活力をゆっくりと蓄えていく。
今風に言えば「リア充」な暮らしそのもの。平たく言えば「豊かな暮らし」が紙面から立ち昇る。手元にある食材が足りてなければ、「無きゃ、無いなりに」が夫婦の合言葉。足ることを知り、いかに日々の暮らしを愉しむか…を、教えてくれる一冊。