エドワード・ケアリーのレビュー一覧

  • おちび

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    マダム・タッソーの伝記風小説.15年かかったという歳月が決して無駄ではない熟成された物語.小さなマリーが心の中の大きな愛を抱えて強く健気に生きていく.物語の前にまず小さなマリーの人形があったというのもむべなるかな,そのマリーへのケアリーの愛がしみじみ感じられる風変わりで歴史に忠実な物語だった.それと,訳がとてもいいと思いました.

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    2020年03月30日
  • 肺都

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    こうなってほしいなあという期待は裏切らない形で終わったので何もかも大満足.ロンドンの薄暗い犯罪の潜むビクトリア女王治世の雰囲気が炙り出されたかのような,もちろんもっとそれを膨らませ汚穢に満ちた舞台で生き生きと動き回る物や人間にアイアマンガー達.挿絵も素晴らしかった.

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    2020年02月18日
  • 堆塵館

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    ゴミの山に囲まれた館,堆塵館は一つの宇宙である.この世界の中の秩序はアイアマンガーと分かち難く結ばれた誕生の品にかかっているようだ.一人の少女ルーシーがアイアマンガーのクロッドと出会い,その逢瀬が恋と館の崩壊へと進んでいく.最後,クロッドの善良なる心の結果のもたらしたものを思うと残念で,だから次の巻でのなんらかの展開が気になる.

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    2020年02月09日
  • 肺都

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    三部作完結。あとがきにもあったけど、本当に読み終えるのが惜しかった。先が気になるけど、まだまだこの世界観に浸っていたいっていう感覚、ありそうでなかなか味わえない。そういう意味でも希少な読書体験でした。何となくわかっていたことだけど、改めてアイアマンガーと物との関係性が明らかにされ、多くの人が犠牲になる最終戦へともつれこんでいく。展開としては王道ながら、扱っている内容の孤高性もあって、読後も興奮冷めやらぬ感じ。いやいや、存分に満喫させてもらいました。

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    2019年08月20日
  • 堆塵館

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    BURRN!の書評欄で、そこを担当する本訳者自身が勧めているのを見て読みたくなった作品。まだ三部作の一だけど、のっけからグイグイ惹き込まれる内容。ゴミ屋敷が舞台で、冷静に考えると気持ち悪くなってくるんだけど、たぶんそこに住まう人同様、読み手の側もだんだん慣れてマヒしてくる。人とモノの関わりが物語の中心だけど、ふとしたきっかけでタガが外れて、だんだん対立構造へと移ろっていく不気味さ。作者自身が描いたというイラストのおかげもあって、いやでも応でも世界観に飲み込まれる。読み終わって尚、ちょっと酔ってるくらい。続きを早く読まなくちゃ。

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    2019年06月25日
  • 堆塵館

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    物語の舞台となるのは19世紀後半のロンドンのはずれにあるゴミ捨て場である。そのゴミ捨て場中央には大きな屋敷が鎮座し、アイアマンガーという一族が付近を管理・支配していた。
    アイアマンガー一族には生まれつき誕生の品が与えられる。誕生の品は大事なもので肌身離さず持っているというのが、決まりであった。
    そして主人公、クロッドは誕生の品の声が聞こえるのだ。

    歴史的背景とファンタジー的設定が絡まり合って独特の世界観をなした本作は、特殊な能力を持ったアイアマンガーであるクロッドと無理やりアイアマンガー家に連れてこられた孤児のルーシー・ペナントという2人の人物を中心にして、読者の前で何度も何度も万華鏡のよう

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    2019年06月03日
  • 堆塵館

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    ネタバレ

    表紙を見ただけで絶対この本面白いと思わせる妖しさ!表紙も中のイラストも、ちょっとグロテスクなんだけどこの本の世界観がこれ以上無いくらいに表現されている。
    まず設定がすごくて、アイアマンガー一族がみんな誕生の品を肌見離さず持っていること、それが一つ一つ名前があって自分の名前を喋ること、クロッドにだけその声が聞こえる(後に一族で何人かはそれが可能であることが判明するが)ことなどなんじゃこれはと思いながらもグイグイ引き込まれて、クロッドや、ルーシーに同調せずにいられない。
    児童むけ?らしいが。ハマった。
    早く続きを読みたい気持ちでいっぱいです。

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    2019年02月23日
  • 肺都

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    550ページを一気読み。
    うん、満足。

    ロンドン市民や貴族たちからは、アイアマンガ―一族や穢れの町の人々など、一段下の人間、または人間以下としか 見られていない。
    しかし原因不明の伝染病が蔓延し、人々はより安全なロンドンへと向かう。
    もちろんロンドンはそれを阻止するために、彼らを迎え撃つ。

    いったい何が原因でこんな戦いになってしまったのだろう。
    最初はアイアマンガ―一族の話だったのに。

    物やごみがあふれかえった堆塵館に住んでいたアイアマンガ―一族は、結集という、ごみが互いに引き寄せあいくっついて、巨大化する現象のため住む家を失った。
    穢れの町では、人間が物に代わる奇妙な病気が流行っていた

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    2018年10月17日
  • 穢れの町

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    いやあ、なんだろう。
    ゴミがあふれかえり、汚物にまみれ、ネズミが逃げ出し、虫が湧く。
    そんな世界の話なのに。
    クロッドもルーシーも決して美形でもなければ清潔でもないのに。
    彼らの愛は美しいと思う。

    ロンドン中のごみの処理を一手に引き受けるアイアマンガ―一族。
    しかし、彼らにとって金の生る木であるゴミに執着しすぎて、ついにごみの山に飲み込まれてしまった堆塵館。
    物に執着しすぎて、物と人間の区別すら曖昧になる。

    前巻で堆塵館から逃げ出そうとして果たせなかったクロッドとルーシー。
    その生死すら定かでないまま巻は終わったのだが、この巻で二人は物に変えられ、離れ離れになっている。
    クロッドは殺人鬼・

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    2018年10月01日
  • 堆塵館

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    ネタバレ

    え~!!
    ここで終わり?
    これじゃ、すぐに続きを読むしかないじゃん!

    というのが読み終わった直後の感想。
    週刊少年ジャンプ並みの引きの強さ。

    19世紀後半、ビクトリア女王の頃のイギリス…からちょっとずれた位相にあるロンドン郊外にある巨大なゴミ屋敷が舞台。
    何しろ地上7階、地下6階の建物に一族みんなで住んでいて、館の中には駅まであるのだから、その巨大さも知れようというもの。

    主人公のクロッドは純粋なアイアマンガーの一族として、地上に部屋を持ち、大勢のおじ・おばや従兄弟・はとこたちと暮らしている。
    両親は彼が生まれてすぐに相次いで亡くなり、彼が物の声を聴くことができるという特殊能力を持ってい

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    2018年09月24日
  • 肺都

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    命が助かるためでも、トースト立てに戻ることを拒絶したローランド・カリスの矜持が痛ましい。私が物に変わるとしたら、何だろうと考えてしまった。理不尽な命の奪われ方をした穢れの町の子供たちもいるので、ハッピーエンドとは言えないけど。エレナーの家族は元に戻れたのか。理不尽な命令を下すウンビットと、子供を助けなさいと命を下したヴィクトリア女王。君臨する者の差が出たね。1876年ってヴィクトリアがインド皇帝になった年なのね。この年を舞台に選んだことと関係あるのかな。ルーシーは最強だった。クロッドはやっぱり優しかった。ウンビットみたいに無慈悲にはなれなかった。だから生き残れたのね。

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    2018年08月03日
  • 穢れの町

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    アイアマンガー三部作その2。
    解説の深緑さんが想起する作品群を列挙してくれている!ディケンズ、エンデ、マーヴィン・ピークの<ゴーメンガースト>シリーズ、レモニー・スニケット<世にも不幸なできごと>シリーズ、ジャン=ピエール・ジュネ&マルク・キャ呂『ロスト・チルドレン』、宮崎駿『天空の城ラピュタ』、大友克洋『スチームボーイ』『大砲の街』、ダール『ぼくのつくった魔法のくすり』…うひひ。

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    2018年04月10日
  • 堆塵館

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    映画の「東京ゴッドファーザーズ」や「ミックマック」をイメージしながら。
    ごみ山って魅力的なんだよなあ…臭くなければ。

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    2018年04月02日
  • 堆塵館

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    「絶賛意見が多いけど、ジュブナイルものだから微温いんだろうなぁ」と失礼なことを思いながら読みはじめたところ、傑作。

    それまで寓話的と思われたストーリーがぐっとリアルになる中盤の展開には唸ってしまう。

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    2017年12月29日
  • 肺都

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    先の展開も、行き着く先も全く予想がつかず、本当に完結するのかとハラハラしたけれど、ちゃんと大団円を迎えたので安心、そして大満足。

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    2017年12月27日
  • 穢れの町

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    英国の話だけど、何かフランス革命を連想した。月桂樹の館はバスティーユ、クロッドがオスカル、ルーシーがアンドレ?クロッドのように誕生の品を同等に扱うのは少数派なんだろうな。いざ、ロンドンへ。アイアマンガーよりロンドンの方が容赦ない。真の敵は誰?

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    2017年11月15日
  • 堆塵館

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    これが児童文学なのか。名前が力を持つ。ロンドンの汚穢を引き受けた一族。富を持つと同時に、差別もされる。当時のロンドンやパリってあまり清潔ではなかったんだな。そういうところはオースティンもブロンテ姉妹も描かない。江戸の方が多分清潔。これからはゴミ屋敷ではなく、堆塵館と呼ぼう。幼い恋の行く末がどうなるか、ルーシーは戻れるの?遅くても来年には次作を出してね、東京創元社さん。

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    2016年12月20日
  • 飢渇の人 エドワード・ケアリー短篇集

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    エドワード・ケアリーの掌編から短編までを含む作品集。
    これまで『堆塵館』や『おちび』などの長編は読んだことがあったが、短編は読んだことがなかった。
    独特な世界観を丁寧に積み立てていくことで構築するタイプの作家なのかと思っていたが、エドワード・ケアリーは短編や掌編でもちゃんとエドワード・ケアリーとしての世界観が確立されていた。それが数ページかそれにも満たない作品であってもエドワード・ケアリーらしいな、と思えた。
    気に入ったのは『アーネスト・アルバート・ラザフォード・ドッド』『かつて、ぼくたちの町で』『おが屑』あたりが特に気に入った。

    そういえばおが屑ってヤン・シュヴァンクマイエルもよく扱うモチ

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    2025年09月11日
  • 望楼館追想

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    ネタバレ

    皆川博子「随筆精華Ⅱ 書物の森への招待」の推薦で興味を持った作家。
    結構分厚いので寝かせていたが、思い立って。
    (文春文庫「もっと厭な物語」で「私の仕事の邪魔をする隣人たちに関する報告書」既読だが、記憶にない)
    章立てが細切れなので、割と読みやすかった。
    つっても焦点の当たる人物が8人いるので、拡散し散漫になりがちな印象を、統合しながら読んでいく努力は必要。
    と、いっても、全員風変り……はっきり言えば変人なので、たとえばジャン=ピエール・ジュネの「デリカテッセン」みたいな、ラフな楽しみ方でよさそう。
    ツイッターで引き合いに出されていたジョン・アーヴィング原作トニー・リチャードソン監督「ホテル・

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    2025年01月27日
  • 穢れの町

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    ネタバレ

    アイアマンガー三部作の二作目.
    一作目は「堆塵館」で,本作は前作のラストでクロッドが金貨にされ,もう一人の主人公であるルーシーも「ボットン」にされてしまった続きから始まる.
    人をモノにしてしまったり,人でないものに命を与えたり,アイアマンガーの総帥である「おじいさま」の目的は一体何だ?
    ゴミの上に聳える堆塵館が第一作のラストで崩壊し,第二作では月桂樹の館工場を打ち捨てアイアマンガーはロンドンに向かうのだが,第三作ではどうやって話を閉じるのかが楽しみ.

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    2024年09月10日