550ページを一気読み。
うん、満足。
ロンドン市民や貴族たちからは、アイアマンガ―一族や穢れの町の人々など、一段下の人間、または人間以下としか 見られていない。
しかし原因不明の伝染病が蔓延し、人々はより安全なロンドンへと向かう。
もちろんロンドンはそれを阻止するために、彼らを迎え撃つ。
いっ
...続きを読むたい何が原因でこんな戦いになってしまったのだろう。
最初はアイアマンガ―一族の話だったのに。
物やごみがあふれかえった堆塵館に住んでいたアイアマンガ―一族は、結集という、ごみが互いに引き寄せあいくっついて、巨大化する現象のため住む家を失った。
穢れの町では、人間が物に代わる奇妙な病気が流行っていた。
あふれかえるごみと、人間がゴミになる病を連れてロンドンに来たアイアマンガ―たちは何を企んでいるのか。
アイアマンガ―たちも穢れの町の人たちも、ロンドンの人たちですら次々に命を落としていく。
これは、自分たちの居場所を求め、守るための戦いの話だったのか。
いやいや、やっぱりこれはクロッドとルーシーの愛の物語だったのだ。
200ページを過ぎるまでルーシーの生死はわからない。
ルーシーの生存が明らかになるとクロッドに危機が迫り、クロッドが危機を脱出するとルーシーが敵に襲われ…。
少しずつ近づいているはずなのに、なかなか出会えない二人。
構成の妙は目次にも表れている。
第1部 外から見ると
第2部 中から見ると
第3部 裏が表に
第4部 表が裏に
第5部 逆さまに
幕切れ 新しい居場所
でも実は一番純愛だったのは、クロッドの婚約者のピナリッピーじゃないかと思う。
クロッドがルーシーを愛しているのを知りながら、年上で、毛深い自分を振り向いてくれないかと願う。
そのためにはルーシーの命を奪うことになっても構わない。
大事なのはクロッドと自分だけ。
ものすごく自己中だけど、純愛ってそういうものじゃないかしら。
自己中と言えば、物に執着する私たち。
物はいつかゴミになる。
壊れたら、汚れたら、年月が経ったら。
ゴミになるはずのものを大量に抱えている私たちが、アイアマンガ―であり、ロンドン市民なんだなあ。きっと。
ゴミと汚物にまみれた物語の最後は、生き残った者たちの安らぎの日々。
初めて居場所を得た人たちの穏やかな表情は、あの苛烈な日々があったからこそなのか。