庄司克宏のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ー あとがきより
ブラッドフォード教授はこのような現象面を提示するにとどまらず、EU法や国際法だけでなく経済学、政治学、国際関係論など広範にわたる学識を駆使して、いわゆる「カリフォルニア効果」に関する先行研究に依拠しつつそれを発展させ、「ブリュッセル効果」が発生する五つの条件を理論的に示している。
第一に、輸入先としてEUが大規模な人口を擁する「市場規模」であることである。第二に、EUが規制を定めてその遵守を確保する立法、行政、司法の「規制能力」が優れていることである。第三に、EUの消費者の生活水準が相対的に高く、公的規制による健康、安全、環境などの「厳格な基準」を求める傾向が強いことである。第四に「非弾力性」であり、規制の対象が輸出市場(すなわちEU)の消費者に販売される産品の健康・安全基準であり、規制面で生産者の選択の余地がないことを意味する。第五に「不可分性」であり、企業がコスト低減や技術的制約のゆえに、EUの厳格な規制に従い、自発的に各国にまたがって生産や事業慣行を標準化し、それにより統一的基準を適用して自己のグローバルな行動を規律することを意味する。
また、ブラッドフォード教授はさらに踏み込んで、「ブリュッセル効果」には「事実上のブリュッセル効果」と「規範上のブリュッセル効果」があることを指摘している。上述した「ブリュッセル効果」は「事実上のブリュッセル効果」に相当する。「規範上のブリュッセル効果」とは、「事実上のブリュッセル効果」によりEUの厳格な基準をグローバルに採用した域外企業(多国籍企業)が、自国で輸出に依存しない国内企業に対して競争上不利にならないようロビー活動を行い、その結果自国政府がEUと同じ基準を制定するようになることを意味する。このようにして、EU規制の影響力は「ブリュッセル効果」を通じて多国籍企業が自社基準として自発的に受け入れるのみならず、域外国の立法等にも及んでいる。 ー
市場競争、デジタル経済、消費者の健康と安全、環境の領域でいかにブリュッセル効果が生じているのかを具体的に論じた勉強になる作品。400ページと分厚いが、読む価値はあった。 -
Posted by ブクログ
This overview gave me a clearer picture of the EU’s overall structure and the complexity that inevitably arises from bringing together multiple major powers. While Japan and the EU share common views in several areas, meaningful cooperation is most effective in domains where our interests genuinely align, such as mutual-recognition frameworks.
At the same time, it is important not to view the EU as a single entity to keep at a distance. Its internal diversity offers opportunities for Japan to engage selectively and shape outcomes where necessary. A balanced approach—focusing on aligned areas while remaining sufficiently involved in more difficult ones—will better protect and advance Japan’s long-term interests.
○欧州議会が制定する法令は国内レベルの法令に優越する。スプラナショナルな民意であるから。
○これを理由にノルウェーは国民投票で参画しないことを決定。他方で、必ずしも優先すべきということでもない。
○EUはもともと複数の国家が主権を制限し合い、相互に戦争が起こらないようにするために作られた側面がある(特にフランスとドイツ)
○EUの民主主義に対する満足度については、「民主主義の赤字」という批判がある。他方、EUと各国内での満足度はほぼ同じ調査結果。
○基本的に、増税など、国家の利益のために必要不可欠であると判断される政策であっても、有権者に不利な場合は政権の支持率を落とし、次期選挙で敗北する可能性もあるが、EUの場合は、こうした不人気な政策を行わせられることができ、責任も押し付けられる。
○ウクライナ侵攻以降、マクロン大統領は、同戦争やエネルギー安全保障などの政治問題を協議するために「欧州政治共同体」を立ち上げ。
○英国のEU脱退は、2016年
○国家を超えたガバナンスは、高度に不完全「M.P. Maduro and N. Komasarより」
○2024年8月にAI法、2026年から全面適用
○日本も2025年5月にAI法が成立。リスクの高いAIの活用に対して政府が調査を行い、指導できるとしているが、罰則措置はない、改善しない事業者名を公表するにとどまっている。
○欧州の難民問題は2015年のシリア紛争の難民危機から顕著に。ドイツのメルケルが受け入れを表明。国際社会からも評価を受けたが、欧州はこの対応に苦心。
加盟国の中で割り当ても考えたが、ハンガリー、ポーランド、チェコなどが猛烈に反対。 -
Posted by ブクログ
中国を始めとする新勢力の台頭やブレグジットなどの情勢変化に伴い、欧州の破綻、EUの崩壊と衰退といった考え方がニュースやシンクタンクの政策分析に登場してきているが、世界におけるEUの影響力は決して落ちていない、それが本書の主張であり、それを ”ブリュッセル効果”を分析することによって明らかにしようとする。
ブリュッセル効果とは、グローバルな市場を規制するEUの一方的な能力を指し、市場がEUの規制をEU域外の市場参加者と規制者双方に波及させている現象と捉える。そして、ブリュッセル効果が生じるためには、①市場規模、②規制能力、③厳格な基準、④非弾力的対象(ある特定の規制体制に拘束される製品あるいは製造者)、⑤不可分性(企業のグローバルな事業展開を管理するための統一基準を適用する行為)の5つの要素が必要であるとする。
第Ⅰ部で理論的基礎が論じられた上で、第Ⅱ部において4つの具体的な規制政策分野における証拠が示される。すなわち、競争法の分野(合併審査、カルテル行為、支配的地位の濫用)、デジタル経済(データ保護~GDPR、オンライン上のヘイトスピーチ)、消費者の健康と安全(食品安全性、化学物質の安全)、及び環境(有害物質と電子機器廃棄物の規制、動物福祉の保護、排出量取引による気候変動の緩和)である。
これらを踏まえ、第Ⅲ部の第8章では、ブリュッセル効果が人々の厚生を増進する上で有益化どうかが問われる。EU規制がグローバルに及ぶことはコスト増を招きイノベーションを妨げるおそれがある、あるいは規制帝国主義の現れであって、域外の権力により自国経済に関して重大な決定が行われてしまい、政治的自律性が失われるおそれがあるといった経済的、政治的批判がなされており、そのような批判についてどのように考えるかが扱われる。そして最終章の第9章では、結びとしてEUの規制パワーの将来予測が示される。
400頁の大冊であり、かなり専門的事項についての記述も多いので決して楽に読めるものではないが、第Ⅱ部の実際例の記述は、正に現在進行形で日本にとっても大きく影響するものであって、ビジネスの観点からも大変勉強になる。また、「規制」に関しての、EUとアメリカの基本的な考え方やイデオロギーの違い、多国間協力がますます困難になる中で、トランプ政権時代に自国第一主義の政策を強めたアメリカに対し、逆説的にEUのブリュッセル効果の影響力が増す結果が生じることなど、いろいろと新しい知見を得ることができた。
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Posted by ブクログ
EUの基本的な構造や、それによって引き起こされている問題点、さらにはその問題を利用して、市民を注目を引く「ポピュリズム」について説明した本。
加盟国の多くは離脱といった極端な選択肢は支持しないものの、移民・難民の受け入れや欧州統合による格差などのEU市民の不満は近年積もりに積もり、極右政党の台頭を許す結果となった。
マーストリヒト条約やシェンゲン協定以来、経済的な欧州統合は格段と進み、ヨーロッパ全体としての一体感を強めていったが、イギリスのEU離脱をはじめ、政治的な統合はおろか、経済的な結びつきも懸念され始め、超国家共同体の限界が感じられる。 -
Posted by ブクログ
EUは各国政治指導者により、代表制民主主義に伴う制約を回避して政策決定を行うことができる保護領域として構築されてきた政治システムbyピーターメア96
当初のEECの目的地と現在のEUの目的を比べると、相当拡張している。「超国家性の妥協」の範囲から大きく逸脱している102
EU自体が代表制民主主義の機能不全に対する「解決策」として存在?110
難民、移民の自由はEUが扱ってるが、その規制やら取り扱いやらは各国に委ねられてる(「移動の自由と人権は大切。但し責任と権限が有るのはEUじゃなく各国」)。だからポピュリストは各国政府を攻撃する最適な材料にする。各国政府も責任の一部はEUだと押し付けられる。つまり都合良く責任の所在が曖昧122
リベラルエリートたちは、自分たちの政策が「よい」だけでなく「必要」であり、「望ましい」だけでなく「合理的」であると示すことにより、(大衆が)抗議したり不満を表明したりすることが受け入れられる術を自分たちの社会に残さなかった。
中欧諸国の国民はEUから「選択の余地のない民主政治」を押し付けられたと感じた125
人権、民主主義、法の支配は、加入するときは各国を排除してEUが行うのに、加盟後は国内政治問題として扱われる(全会一致必要)126 -
Posted by ブクログ
せっかくEU圏に訪れたため、そのときの空気を新鮮に反芻できるうちに読んだ。
複数の国家を統治するEUの成り立ちや現在に至るまでの歴史を知ることで、その仕組みやはたらきの解像度を高められた。自然発生的にとか、よしなに、といったぬるいものではなく、意図して方向性を導き出した先のこの統治の形であることがわかった。また、今のEUという成功事例の要素をそのまま他の連合に当て嵌めるのはやはり難しいこともわかった。それは文化や歴史、国民性、地形すらも含んださまざまな変数に左右される。だからこそ、そのまま当て嵌められないことを理由に思考放棄するのではなく、探索をすることも大事だと思った。企業、部署、家族、コミュニティといったさまざまな組織にも同じことが言えるだろう。