深田晃司のレビュー一覧

  • 日本映画の「働き方改革」

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    筆者自身がおかれた労働環境の暴露的なスキャンダラスな要素はそれほど多くなく、予算規模の大きさで他のコンテンツメディアと一線を画する映画産業が持続的に成り立つために何が必要で、行政などの文化支援がどう形成されてきたかを他国との比較を通して一般の消費者側にも噛み砕くことができるように説明が尽くされていた。

    教養を掲げて映画を取り上げる書籍に比べると、個別の題材よりも映画というメディアを考察することに興味がある自分には向いていると感じられもした。「工場の出口」についてなど、映画研究の一端でしかないだろうが学びがある。

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    2024年12月05日
  • よこがお

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    映画が良かったので小説も読んでみた。
    だいぶ映画とは違う。結末も違うし、映画では主要人物だった基子の元カレがほぼ登場しない。市子が基子の元カレを誘惑するくだりは映画では重要なパートだったと思うが、小説では絡みが自体がない。おそらく役者の存在感によって小説とは異なる展開になってしまったのだろうと推測する。
    映画とは異なる展開になっているが、小説は小説で引き込まれた。映画では見えなかった各人の内面や逡巡が明確に表現されていた。

    あらすじとしてはこんな感じ。

    主人公の市子が訪問看護している家庭の次女が誘拐される。事件の犯人は市子の甥だった。悩む市子を精神的に支えようとする長女の基子。しかし、市子

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    2023年04月21日
  • 淵に立つ

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    ネタバレ

    夫の利雄は無口だったけれど、娘の蛍と家族3人での生活に章江は何の不満もなかった。

    夫の古い知り合いだという八坂という男が住み込みで働くようになってから、すでに壊れていた家族の影が徐々に浮き上がってきた。

    人を殺して服役していた過去を持つ八坂。
    八坂の人殺しに共犯していた夫。
    オルガンの発表会を控えていた蛍。

    クリスチャンで信仰深い章江に跳ね返された八坂の欲望は、
    まだ子供の蛍へと向かって行き、結果的に蛍は障害をおい、八坂はそのまま姿を消した。

    生活の自由を奪われた蛍の介護に潔癖なまでにやりとげる章江と夫との生活。
    八坂の息子だというのちに知ることになる貴史との出会い。

    数年越しに行方

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    2019年12月29日
  • 海を駆ける

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    ネタバレ

    ♭ネタバレしてます。

    海岸に打ち上げられた男は、多くの人命を奪った津波のメタファーなのかな。
    出会った人々の多くを死に導き、たった1人の少女を救った男。
    無慈悲に無作為に取捨される命に、ただただ慄然としました。

    【内容紹介:引用】
    かつて大津波に襲われたインドネシア、バンダ・アチェの海岸に、日本人と思しき一人の男が打ち上げられた。彼は記憶を喪失しており、言葉も喋れない。日本から来たサチコは、その男と出会うことで、運命的な愛に引き寄せられてゆく…

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    2019年01月25日