八代尚宏のレビュー一覧
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日米の雇用慣行の違い レイオフ=再雇用を条件にした一時解雇。定年制がない=年齢による差別 実質的な平等主義
金融資本主義は末期症状ではなくマルクスの根本的な矛盾ではない
労働者の需給逼迫で賃金格差は縮小する。アメリカは移民があるので逼迫しない。時間がたつとより高い層に移動しているはず。
健全な市場経済国カナダ 歳出削減で財政再建
アメリカの南北戦争は、保護貿易主義の北と自由貿易主義(綿花の輸出)の南の間の戦争。大きな政府と小さな政府の争いでもある。
自由貿易を通じた世界全体での所得格差の是正のために国内の所得格差が生じる
イタリアの北部、南部の違いは労働力の移動がないので埋まらない -
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新自由主義は、市場原理主義と同じものであると誤解されることが多い。
このような誤解が実際には異なることと、イメージ先行で新自由主義を毛嫌いすることがないように、日本でも織田信長の時代や大阪商人の時代から新自由主義が行われていたことを指摘しつつ、政府の役割等がどの程度必要なのかなどをわかりやすく書いている。
具体的には、歴史に見る新自由主義、サブプライムローン問題、格差が広がったどうか、小泉改革は行き過ぎだったのか、社会保障、労働市場、新産業、TPPと復興、のそれぞれの課題についての分析と新自由主義の点からの解決策を書いている
議論の文化があまりない日本では、二項対立、イメージ論からの議論 -
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「市場原理主義」という誤解を解きほぐしていくことで,新自由主義を擁護する本。公共事業・社会保障・教育・医療・労働など広範囲にわたって書かれているし,論旨は明快,よくまとまってもいる。著者の主張に賛同するか否かは別にして,読んでおく価値はある。
新自由主義といえども,経済を完全に市場に任せる趣旨ではない。市場の失敗や環境破壊の抑止・景気対策や所得再分配等,政府が果たすべき役割は認めている。ただ,有害無益な規制・障壁をなくしていくことを良しとする方向性は徹底している。高度経済成長期に定着してしまった,日本の社会主義的システムは,どんどん作り替えていかなくてはならない。
それを実践したのが小泉構 -
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タイトル通り、「新自由主義とは何か」を書いた本。
この主義の本質は世間で批判されるような「格差拡大の主犯」ではなく「市場を最大限に活用し、パレート最適(他人の効用を低めない限り、自らの効用や生産を高める余地が全くない状況)にする。その結果、社会の富を生み出す企業や個人を最大限に認め、その成果を不遇な人々に状況改善に充てることができる。」と主張する。
戦後や最近の政治経済はもちろん、日本の経済史、雇用問題、環境、保育、介護・医療など幅広く取り扱っている。コラムでは経済古典も扱う。
「上記の新自由主義の視点からどのような政策が提案できるか?」その点も新書の割に、具体的で深く掘り下げられてい -
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「日本の伝統を壊した」「格差を拡大させた」「強者の理論」との批判にさらされ、小泉政権以後最も嫌われている経済思想といっても過言ではない新自由主義(neoliberalism)であるが、その主義の本来意図するものは「市場原理主義に基づく『弱者の切り捨て』」でもなければ単なる「自由放任」でもなく、「一定の枠組みの下で、個人や企業が利益を追究する仕組みを活用する方が、社会的に望ましい結果をもたらす」、そのような「不特定多数の人々の利益を最もよく調整できる市場を最大限に活用するための、政府の役割を重視する」思想であることを日本経済史、サブプライムローン問題の事例などを引き合いに力説した。それを踏まえて
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国際基督教大学客員教授(労働経済学・日本経済論)の八代尚宏(1946-)による新自由主義の経済・政治観の紹介。著者は、安倍・福田内閣で経済財政諮問会議の議員を務めていた。
【構成】
第1章新自由主義の思想とは何か
1 基本的な考え方
2 市場と政府の役割分担
第2章資本主義の終焉?
1 サブプラム・ローン問題の本質
2 効率的な金融市場規制とは
第3章市場主義は日本の伝統
1 平清盛から「天下の台所」まで
2 1940年体制から1970年体制
3 分裂国家日本
第4章小泉改革で格差は拡大したか
1 所得格差拡大の真相
2 規制緩和への誤解
第5章小泉改革は「行きすぎ」だった -
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ネタバレ・2011年に制定されたアメリカの医療保険制度は民間の医療保険への加入を義務付ける制度。
・弱者の切り捨てではなく、その社会復帰を促す福祉制度の効率化
・本来の政府の役割は非効率な事業者を守るのではなく、その円滑な退出のための手段を講じ、市場経済を円滑に機能させること
・「効率的な規制」を目指すことが新自由主義ノットイコールレッセフェール
・役員報酬公開よりも長期保有を義務付けられた株式の支払の方がインセンティブが働く。
・世帯ベースで見た賃金格差は家族の多様化によるところも大きい
・派遣規制→失業者が増えて社会全体で所得格差が広がる可能性がある。
・スウェーデンはセーフティーネットの充実もし -
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小泉改革が格差社会の原因であるとしたり、行き過ぎた市場主義がリーマンショックなどの混乱を生み出したとする議論の矛盾や問題点を突きながら、本来の「新自由主義」は決して市場原理主義(自由放任主義?夜警国家論?)ではなく、政府の役割を無視するものではないという著者の主張は、普通の経済学者、あるいは経済学をちゃんと学んだ者にとっては、言わずもがなのことかと思う。しかし、世の中には俗論がはびこり、いまだ日本は長期停滞から抜け出せないのみならず、小泉改革のときに少しは前進した諸改革さえも後退させられている。
デフレの脱却をまず先に考えましょうとする議論とは趣を異にするが、現在の日本が直面する諸課題に対し -
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①戦前は欧米型市場経済。②1940年体制ではに終身雇用制等を盛り込んだ統制経済。③1970年体制では、「地域の均衡のある発展」を目指した田中角栄の社会主義体制。
これらの社会体制の変化を初めて知って驚いた。一つは欧米型市場経済が日本にあったことと。③の田中角栄の業績は良いものであるとして私の記憶にあったのだが、経済成長率を止めてしまい良くないモノであったということを初めて知って驚いた。年金制度、雇用等様々な点での提言を行っておられるが、全うな者ではないかと思われる。
TPPについては参加というお立場であるようだが、理由が規制を緩和し競争にさらす方が、日本の産業にとって競争力をつける意味で良いと -
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ネタバレ日本の労働慣行の問題点について様々な視点から論じた本。本書の中で重要と思われることを一部抜粋する。
・バブル崩壊後でも正社員の雇用は増えていた。それは、一時的な不況と考えられていたからである(現在はこの逆)
・日本の海外直接投資の流出が流入を大きく上回っていることは、労働市場へ悪影響を及ぼす
・日本の「解雇規制」の問題は、規制が厳しいことではなく、予見可能性が低いことである
・派遣労働者が正社員の雇用機会を代替することを防ぐために、派遣には期間制限がある
・派遣規制をすると、製造業で海外移転が発生し、正社員の雇用機会も縮小する危険性がある
・失業なき労働移転が可能であった特殊な時代は終わった
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「終身雇用」「年功賃金」「企業内組合」が日本的雇用システムの特徴と言われているが、それらはかつてはうまく機能し、日本の高度成長を支えるシステムであった。そのあたりのことを、筆者は下記の通り記している。
【引用】
過去の高い経済成長の時期には、長期雇用・年功賃金の固定的な雇用慣行が、個々の企業内だけでなく、経済全体でも効率的に機能していた。経済成長とともに企業組織も持続的に拡大し、企業は熟練労働者を確保するために、雇用保障や勤続年数に比例した賃金体系が自発的に確立してきた。また長い好況期が期待できる状況下では、短い不況期に一時的に過剰な労働者を抱え込むことは、企業にとって必要な投資でもあった。