八代尚宏のレビュー一覧
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日米の雇用慣行の違い レイオフ=再雇用を条件にした一時解雇。定年制がない=年齢による差別 実質的な平等主義
金融資本主義は末期症状ではなくマルクスの根本的な矛盾ではない
労働者の需給逼迫で賃金格差は縮小する。アメリカは移民があるので逼迫しない。時間がたつとより高い層に移動しているはず。
健全な市場経済国カナダ 歳出削減で財政再建
アメリカの南北戦争は、保護貿易主義の北と自由貿易主義(綿花の輸出)の南の間の戦争。大きな政府と小さな政府の争いでもある。
自由貿易を通じた世界全体での所得格差の是正のために国内の所得格差が生じる
イタリアの北部、南部の違いは労働力の移動がないので埋まらない。失業給付が福祉政策の一部のため、人が移動しない。北部の独立運動。スコットランドも同じ。
日本は高度成長期に都市部へ労働力が移動し、高度成長を後押しした。労働力の効率性を高めた。全国総合開発計画のころから移動ではなく、地域間の所得格差を埋める政策に移ったため、成長がなくなった。EU内でドイツが南欧を救済するのとお同じ図式。
地域間格差は、労働力が移転して埋めることをためらってはいけない。
ドイツのシュレーダー政権の改革
社会保障改革、医療改革、失業給付の引き下げ、労働市場改革(解雇の金銭補償)
最良手当=残業代ゼロ法案=労働時間規制の改革案
日本の公共サービス効率化法
イギリスの金融市場の活性化(サッチャーとブレア、市場経済主義)
スウェーデンモデル 企業を救済せず個人を守る。その結果、企業は世界的企業になる。日本は中小企業を弱者とみなす。徹底した地方分権。重複行政がない。
米英型と独仏型の資本主義の違い
日本は戦前は米英型(直接金融と流動性の高い労働市場)だったが戦時体制の統制経済で変わった。
ヨーロッパ以上に格差のあるアジアでは、NAFTA型の自由貿易地域に留めるべき。
輸入代替型=国内の幼稚産業を保護=いつまでも保護体質から抜けだせず、成功しない。オーストラリアの自動車産業。
輸出主導型=外資の直接投資を複数導入して競わせる。一つだと牛耳られて植民地と同じになる。
日本の高度成長期は、労働力逼迫によって賃金が上昇し、教育が高まって中流階級を生み出した。
その背景には、労働移動の高さがある。
高い経済成長が労働需給逼迫を通じて所得格差を縮小させ、国内市場が成長した。東アジアの高度成長。
中南米は、先進国からの直接投資が悪かった例。搾取する資本。
日本も、最初は外資規制があった。外資の導入が成功するかは、国際経済環境に依存する。
アジアの成功要因=教育による労働の質の高まり。直接投資の競争。中国の需要を取り込んだ。
中国の高齢化は日本の20年遅れ。労働移動が必要。
シンガポールの都市部の出生率は1.2と低い。老後に備えた強制的な貯金。積立金に利息をつけて個人に払い戻す。
オーストラリアは見込みの無い輸入代替政策を放棄した。自動車、鉄鋼、造船などを時限的な補助金を条件に関税を引き下げた。競争に晒す自由化政策。
年金支給開始年齢を平均寿命の伸びに合わせて伸ばす。
混合医療の推進。
生産者利益が国益、ではない。自由貿易は消費者余剰の増加分が大きい。生産者利益が減少しても。
地域の均衡ある発展、は無理。労働力移動を通じて地域間格差を是正する=最適通貨圏の発想。
援助より貿易を=1960年代の国連。
高関税と援助の組み合わせから、低関税で輸入を増やせば発展する、という提言。人の移動も同じ効果をもつ。所得格差は広がるが、経済全体は活性化する=米国の例。
介護サービスの矛盾=官製相場の弊害。民間の上乗せサービスを市場の需給で決めれば民間事業者の創意工夫が生まれるはず。 -
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新自由主義は、市場原理主義と同じものであると誤解されることが多い。
このような誤解が実際には異なることと、イメージ先行で新自由主義を毛嫌いすることがないように、日本でも織田信長の時代や大阪商人の時代から新自由主義が行われていたことを指摘しつつ、政府の役割等がどの程度必要なのかなどをわかりやすく書いている。
具体的には、歴史に見る新自由主義、サブプライムローン問題、格差が広がったどうか、小泉改革は行き過ぎだったのか、社会保障、労働市場、新産業、TPPと復興、のそれぞれの課題についての分析と新自由主義の点からの解決策を書いている
議論の文化があまりない日本では、二項対立、イメージ論からの議論になることが多いが、どのような主義・主張であるかと差異を聞き、そのうえで対話をすることが大切であると思う。その意味でも、著者の主張は聞く価値があると思う。 -
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「市場原理主義」という誤解を解きほぐしていくことで,新自由主義を擁護する本。公共事業・社会保障・教育・医療・労働など広範囲にわたって書かれているし,論旨は明快,よくまとまってもいる。著者の主張に賛同するか否かは別にして,読んでおく価値はある。
新自由主義といえども,経済を完全に市場に任せる趣旨ではない。市場の失敗や環境破壊の抑止・景気対策や所得再分配等,政府が果たすべき役割は認めている。ただ,有害無益な規制・障壁をなくしていくことを良しとする方向性は徹底している。高度経済成長期に定着してしまった,日本の社会主義的システムは,どんどん作り替えていかなくてはならない。
それを実践したのが小泉構造改革だったわけだが,これは格差社会を招いたとして大変評判が悪い。著者はそれが誤解であることをデータで説明し,改革が不徹底だったことがその後の日本経済の低空飛行につながったと結論づける。
総論としてはもっともな話と感じたが,各論では疑問な点も残った。弁護士増員問題や混合診療の是非など。それぞれのテーマで様々な議論がなされているはずだが,それをうまく取り込んだようには見えず,少々一方的な印象を受けた。
それにしても社会には様々なしがらみがある。小泉改革が誤解のうちに終わったいま,再び新自由主義が復活して改革を押し進めて行くことは,容易でないだろう。 -
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タイトル通り、「新自由主義とは何か」を書いた本。
この主義の本質は世間で批判されるような「格差拡大の主犯」ではなく「市場を最大限に活用し、パレート最適(他人の効用を低めない限り、自らの効用や生産を高める余地が全くない状況)にする。その結果、社会の富を生み出す企業や個人を最大限に認め、その成果を不遇な人々に状況改善に充てることができる。」と主張する。
戦後や最近の政治経済はもちろん、日本の経済史、雇用問題、環境、保育、介護・医療など幅広く取り扱っている。コラムでは経済古典も扱う。
「上記の新自由主義の視点からどのような政策が提案できるか?」その点も新書の割に、具体的で深く掘り下げられていて非常に興味深かった。新自由主義という軸がしっかりしていてどの分野の政策案も論理が全くぶれてなかった。かなりスパッと明快。批判点も多くあるようだが、この明快さが本書のまた一つ魅力となっているのかもしれない。
失われた"20年"を30年にしないためには、市場をフル活用し、政府がそれを整えていく必要がある。
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「日本の伝統を壊した」「格差を拡大させた」「強者の理論」との批判にさらされ、小泉政権以後最も嫌われている経済思想といっても過言ではない新自由主義(neoliberalism)であるが、その主義の本来意図するものは「市場原理主義に基づく『弱者の切り捨て』」でもなければ単なる「自由放任」でもなく、「一定の枠組みの下で、個人や企業が利益を追究する仕組みを活用する方が、社会的に望ましい結果をもたらす」、そのような「不特定多数の人々の利益を最もよく調整できる市場を最大限に活用するための、政府の役割を重視する」思想であることを日本経済史、サブプライムローン問題の事例などを引き合いに力説した。それを踏まえて具体的な政策立案にまで言及している点が評価できる。
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国際基督教大学客員教授(労働経済学・日本経済論)の八代尚宏(1946-)による新自由主義の経済・政治観の紹介。著者は、安倍・福田内閣で経済財政諮問会議の議員を務めていた。
【構成】
第1章新自由主義の思想とは何か
1 基本的な考え方
2 市場と政府の役割分担
第2章資本主義の終焉?
1 サブプラム・ローン問題の本質
2 効率的な金融市場規制とは
第3章市場主義は日本の伝統
1 平清盛から「天下の台所」まで
2 1940年体制から1970年体制
3 分裂国家日本
第4章小泉改革で格差は拡大したか
1 所得格差拡大の真相
2 規制緩和への誤解
第5章小泉改革は「行きすぎ」だったか
1 郵政民営化の明暗
2 進まなかった地方分権化
3 構造改革特区
4 財政再建はなぜ成功しなかったのか
第6章社会保障改革
1 年金制度は何のためにあるか
2 質の高い医療を
第7章労働市場改革
1 雇用格差を縮小する方法
2 新卒一括採用、定年制という悪習
3 女性が活きるために
第8章新産業の可能性
1 コメを輸出産業に
2 医療・介護・保育をサービス産業へ
3 都市の再開発とコンパクト・シティ
終章 震災復興とTPP
小泉政権末期から、そしてリーマン・ショック後の急激な景況悪化から、「小泉改革」についての批判の声は高まった。市場原理主義、マネタリズムを新自由主義を同一視していた人も中にはいたのだろう。ここ数年はケインズに改めて関心が集まっていたように感じる。
しかし、本書の著者は明朗に「新自由主義」を肯定する。本書で展開されている主張は、まさに小泉政権期に展開されてきた構造改革の根拠となってきたロジックである。また、民主党に政権が移った現在でも、経団連を中心とした財界が主張する内容そのものである。
そういった意味で、本書の主張に目新しさは無い。
評者もどちらかと言えば新自由主義の主張を肯定する立場にあるが、現在の日本が抱えている問題の解決策は、本書のようにこれまでの主張を繰り返すことではないと考えている。
中長期的な効率化・生産性向上を目指すあまり、短期的に切り捨てられる人たちの感情に対して、その誤解をていねいに解いて、政策への理解を求めるところにあるのではないだろうか。自民党は、それを行う意思と能力に欠けたが故に政権を追われたのだから。 -
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ネタバレ・2011年に制定されたアメリカの医療保険制度は民間の医療保険への加入を義務付ける制度。
・弱者の切り捨てではなく、その社会復帰を促す福祉制度の効率化
・本来の政府の役割は非効率な事業者を守るのではなく、その円滑な退出のための手段を講じ、市場経済を円滑に機能させること
・「効率的な規制」を目指すことが新自由主義ノットイコールレッセフェール
・役員報酬公開よりも長期保有を義務付けられた株式の支払の方がインセンティブが働く。
・世帯ベースで見た賃金格差は家族の多様化によるところも大きい
・派遣規制→失業者が増えて社会全体で所得格差が広がる可能性がある。
・スウェーデンはセーフティーネットの充実もしているが、企業の保護はいっさい行わない市場主義国家。
・郵便局のような不採算部門を金融機関が補てんするような仕組みは民間では禁じられている。
・地方交付税は地方の税収が上がれば減らされる。頑張ろうというインセンティブにならない。
・特別会計の切り崩し=埋蔵金
Totalの量を増やさなければならない。
・国債の保有は安定資産としてであって愛国心からではない。引き上げは一気に起こる可能性がある。
・農家の生産性向上ではなく、零細農家の保護に走った政府
・農業以外の収入をメインにしている農家を補助。減反は専業農家を苦しめている。
・必要な医療費のすべてではなく、何が必要な医療費かの議論がなされていない。
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小泉改革が格差社会の原因であるとしたり、行き過ぎた市場主義がリーマンショックなどの混乱を生み出したとする議論の矛盾や問題点を突きながら、本来の「新自由主義」は決して市場原理主義(自由放任主義?夜警国家論?)ではなく、政府の役割を無視するものではないという著者の主張は、普通の経済学者、あるいは経済学をちゃんと学んだ者にとっては、言わずもがなのことかと思う。しかし、世の中には俗論がはびこり、いまだ日本は長期停滞から抜け出せないのみならず、小泉改革のときに少しは前進した諸改革さえも後退させられている。
デフレの脱却をまず先に考えましょうとする議論とは趣を異にするが、現在の日本が直面する諸課題に対して徹底して新自由主義の視点から(すなわちまっとうな経済学の立場から)処方箋を書くとこうなるという議論は非常に明快で示唆に富む。
しかし、年金や医療、労働、農業等々とまっとうな処方箋を実行するにはあまりに既得権が強い分野が多すぎることも事実。政治の役割が今ほど重要な時期はないのだが、民主党現政権は……。
歴史的視点からの叙述は、やや(かなり?)粗雑なので、☆1個マイナス。平清盛や織田信長の話はともかく、1940年体制論と1970年体制論をともに受け入れる議論ははじめて読んだ。 -
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①戦前は欧米型市場経済。②1940年体制ではに終身雇用制等を盛り込んだ統制経済。③1970年体制では、「地域の均衡のある発展」を目指した田中角栄の社会主義体制。
これらの社会体制の変化を初めて知って驚いた。一つは欧米型市場経済が日本にあったことと。③の田中角栄の業績は良いものであるとして私の記憶にあったのだが、経済成長率を止めてしまい良くないモノであったということを初めて知って驚いた。年金制度、雇用等様々な点での提言を行っておられるが、全うな者ではないかと思われる。
TPPについては参加というお立場であるようだが、理由が規制を緩和し競争にさらす方が、日本の産業にとって競争力をつける意味で良いという主張と、アメリカからのサービス、医療分野等での侵攻を受け付けないとする人たちへの反対意見として、一度日本も車等でアメリカ市場に殴り込んだではないか、アメリカが同じことをして何が悪いという主張をされていたが、お互いにどれほどのインパクトがあったかまたあるかを記載していなかったため、若干不安を感じた。
全体的には政府の影響力を小さくして行功とする類いの本である。 -
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ネタバレ日本の労働慣行の問題点について様々な視点から論じた本。本書の中で重要と思われることを一部抜粋する。
・バブル崩壊後でも正社員の雇用は増えていた。それは、一時的な不況と考えられていたからである(現在はこの逆)
・日本の海外直接投資の流出が流入を大きく上回っていることは、労働市場へ悪影響を及ぼす
・日本の「解雇規制」の問題は、規制が厳しいことではなく、予見可能性が低いことである
・派遣労働者が正社員の雇用機会を代替することを防ぐために、派遣には期間制限がある
・派遣規制をすると、製造業で海外移転が発生し、正社員の雇用機会も縮小する危険性がある
・失業なき労働移転が可能であった特殊な時代は終わった
・バブル期でも出生率は低下していた
・男女間で結婚相手の学歴に関する非対称性が存在する
・平均的労働時間は減ったが、正社員の労働時間は一定のまま
・定年制の意味は、労働生産性よりも賃金が高いというギャップを清算すること
・公共職業安定所の事業を民間に委託・開放することが必要 -
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「終身雇用」「年功賃金」「企業内組合」が日本的雇用システムの特徴と言われているが、それらはかつてはうまく機能し、日本の高度成長を支えるシステムであった。そのあたりのことを、筆者は下記の通り記している。
【引用】
過去の高い経済成長の時期には、長期雇用・年功賃金の固定的な雇用慣行が、個々の企業内だけでなく、経済全体でも効率的に機能していた。経済成長とともに企業組織も持続的に拡大し、企業は熟練労働者を確保するために、雇用保障や勤続年数に比例した賃金体系が自発的に確立してきた。また長い好況期が期待できる状況下では、短い不況期に一時的に過剰な労働者を抱え込むことは、企業にとって必要な投資でもあった。
労働者にとっても、みずから働いている企業の利益が、そのまま将来の賃金や退職金の増加の形で配分されることを前提に円満な労使関係は保障されていた。企業内での頻繁な配置転換を通じて形成される熟練労働者を最大限に活用するためには、慢性的な長時間労働や転勤は不可避となったが、他方で、いわば家族ぐるみで雇用するための生活給が保障されていた。家事や子育てに専念する専業主婦と一体的に見た家族単位では、仕事と家庭生活との両立は十分に可能であった。
【引用おわり】
これらが続いたのは1990年代前半、平成の最初の頃までと言われているので、主には「昭和の仕組み」でもある。その仕組みを上記はうまく説明しているのではないかと思う。
しかし、と筆者は言う。しかし、環境が変わった。グローバル化、IT技術の進化等により、それまでの製造現場の強さが競争のポイントだった環境が、グローバルに事業を展開する力とか、あるいは、IT技術を使ったビジネスモデル競争等に競争のポイントが変わっていった。上の「日本的雇用システム」は、製造現場の強さを支える仕組みであったが、製造現場の強さが競争上、あまり意味をもたなくなっていき、日本的雇用システムの強みも失われてしまった。
だから、雇用システム、および、雇用システムを支えていた社会システム等も変革していかなければならないということが、筆者が本書で訴えたかったことである。
確かにそうだよね、と思う。
ただ、本書の発行年は2009年であり、今から15年前のこと。そこから更に環境も変われば、政策や法律も変わっている。今の環境、政策、法律を前提に筆者に、もう一度書いて欲しいなと思う。