園部哲のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ヨットでの単独無寄港世界一周レースといえば、現代ではヴァンデグローブというレースがあります。海のF1みたいな超ハイテクのヨットによるレースですが、本書が取り上げるゴールデングローブレースは、GPSもない1960年代後半に実施されました。参加したのは9名。様々な背景を持った参加者が集ったのですが、中にはまともに外洋でセイリングをした経験が無い人も含まれていました。
イギリスをスタートし、大西洋を南下、赤道を越えて南氷洋付近を西から東へと進み、アフリカ喜望峰を通過してインド洋、太平洋へと進み、南アメリカのホーン岬を通過して再び大西洋に入り、北上してスタート地点に戻るというコースをたどります。
南緯40度~南緯50度付近は"吠える40度"と呼ばれ、強い西風が吹いてヨットにとっては好都合とも言えるのですが、一旦海が嵐で荒れると、とんでもない時化となります。これを経験した数人の参加者は早々にリタイアを選択。最終的にモワテシエ(フランス)、ジョンストン(イギリス)、クロウハースト(イギリス)、テトリー(イギリス)の4名が残りました。
このうちクロウハーストは実際には大西洋をウロウロしているだけだったのに、現在地を偽装していました。GPSが無い時代、ヨットの現在位置に関する情報は参加者自身からの無線報告に頼るしかなかったのです。嘘を重ねた彼は次第に追い詰められ、謎の死を遂げます。彼のヨットは無人のままに発見されました。キャビン内部はそれなりに整頓され、荒天時に誤って海に転落したのではない様子が、さらに謎を深めます。
モワテシエはゴール直前、たどったコースを今度は逆方向へ航海する旨、連絡してレースから脱退しました。レースに優勝することで得られる名誉や賞金などの世俗から、自分の魂を救いたいという悟りに近い境地に達していたようなのです。
テトリーはゴール直前にヨットが沈没し、救出されますが、レースを完走できなかったことにとらわれ続けた結果、後に自殺してしまいました。
結局ゴールしたのはジョンストン一人だけ。参加者の多くが”一年間太陽を浴びてのんびりし、その後帰国して世界一周をしてきたと言ってみる(本書抜粋)”ことの誘惑にかられる様子はGPSが無い時代だからこそ心に浮かぶ誘惑かもしれません。現代ならスポンサーとか種々のしがらみがある中でそう簡単にリタイアを決断できないだろうと思えますが、嵐に遭遇してあっさりリタイアする様子などからも、ビジネスやお金がそれほど絡んでいない時代の人間臭いドラマが感じられます。”単独無寄港で外洋をヨットで航海する”という非日常を疑似体験できるノンフィクションです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ映画「喜望峰の風にのせて」の原題は「The Mercy」。邦題はひどいが映画の内容は衝撃的だった。本書のヨットレースに参加したクロウハーストが主役の映画だ。本書のおもしろさは、まるまる1本の映画では足りないかのようなドナルド・クロウハーストが9人もの登場人物の1人にすぎない!ということだ。濃厚極まる冒険譚が連続する。問答無用のページ・ターナー。9人のヨット・レースを描く1本の映画をみてみたい気もするが、クロウハーストの映画はもうあるので、あと8本みてみたい。モワテシエはドキュメンタリーがあるっぽいけど、あとで調べてみよう。いやーすごいやヨットマン。とんでもない。あまりの面白さに2日で一気読みした。
-
Posted by ブクログ
通算30年にわたるイギリス暮らし。
スイス人の妻と一人娘の三人家族。
その著者が語る ロンドンにおける 異邦人たちのお話。
いまやロンドンの住民の40%が外国生まれだと言う。著者の住むコミュニティには 特に多そうだ。一人暮らしのスペイン人のおばあさん、ジャマイカ出身の青年、ハンガリー出身の女性のオーペア(住み込み家事手伝い)時代、ハリウッドからやって来た年配の女性、ブラジル人、香港人、などなど。聞けば それぞれに歴史あり。
お嬢さんにまつわる学校、イギリスの教育、階級、食事事情も。
そして 空から落ちて来た人たち。
異邦人たちを惹きつてやまない“ロンドンの実像”が 描かれる。
なかなか興味深かった!
-
Posted by ブクログ
第三帝国を旅した、とあるが実際には第一次対戦後のワイマール共和国時代辺りからドイツを訪れた主に欧米の人たちがナチスの興隆をどう見ていたのか、についてまとめたもの。あのような異常な世界はある日突然ではなくじわじわと成り立ったものだろうとは思うのだけどそのじわじわ感を知りたかったので手に取ってみた。何より驚いたのは当時のドイツを訪問したアメリカ人、イギリス人の多さ。同じゲルマン人のアングロサクソン族とチュートン族という部族違いという親近感があったようで第一次大戦を同じ側で戦ったフランスよりもよっぽど親しみを感じていたという。音楽、哲学など高い文化に触れるためという理由もあって多くの人が訪れ、ドイツの側もナチスがどんどん権力を握っていくのだけれどその過程においても外貨を得る目的もあって観光客を熱心に集めていたという。実際にドイツを訪問したバプティストのマイケル・キングという牧師などは感激のあまり自分と息子の名前をマルティン・ルターに改名したという。ちなみにマルティン・ルターはアメリカではマーティン・ルーサーと読む。ナチスですら初期においては観光客にフレンドリーで強制収容所まで見学させていた〜ただしその目的は共産主義者の矯正という名目〜そうでユダヤ人排斥などは不気味なムーブメントと思いつつ、そして自分たちもそもそもユダヤ人に好意を持っていないこともあってあそこまで酷いことになっているとは誰も思っていなかったらしい。共産主義者を死刑にせず矯正させようというのは文明的という評価すらあったほどどだという。タバコも吸わず酒も飲まずポルノを排斥する総統が悪い人であるはずが無い、という当時の観光客のコメントには考えさせられた。ナチスは政権を握った直後にオリンピックを成功させるのだが期間中はユダヤ人排斥を感じさせないようにして黒人も公平に扱って彼らを感激させる。しかし母国再訪のためにオリンピック終了後もドイツに留まったアメリカ代表のユダヤ人選手が途端にレストランにも入れなくなるなどすぐに馬脚を現してしまう。結局チェコスロバキア併合まで欧米諸国はおかしなことになっていると思いつつも誰も危険な状態に気がつかなかったわけだがじわじわとおかしくなっていく状況が多くの人の証言で明らかになっていくところが素晴らしい。欧米人だけではなく中国からの留学生の手記なども丹念に取材しておりかなりの労作だと思いました。ページ数も多く簡単に読める作品ではないけどもこれはおすすめです。
-
Posted by ブクログ
アメリカ人のジャーナリストが上海でタクシー運転手として触れ合った市井の人々の声をまとめたのが本書だが、コンセプトが面白すぎる。なにせ、「無料で目的地まで乗せる代わりに、あなたの話を聞かせてほしい」という条件のフリータクシーなのだから。
登場する人々はアメリカの留学から戻ってきたばかりのビジネスパーソンや、国内の人権弾圧に抵抗する市民活動家など、多岐に渡る。
とはいえ、10人にも満たない登場人物だけで中国という国について何かを語ろうとするのはさすがに無理がある。そうではなく、本書の面白さは、幅は狭いかもしれないが、その一人一人の生活を詳細に聞き出す”深さ”にある。シンプルに異国で生きる一人の人間が、何を考えてどう生きているのか。その生々しさを体感できるという点こそ、本書の魅力である。 -
Posted by ブクログ
非常に興味深く読みました。
著者がアメリカ人ジャーナリストであることも
大きいですね。
もし、日本人ジャーナリストが
「フリータクシー」という手腕を使ったとてしても
ここまで赤裸々な「中国」は浮かび上がってこなかった
ことでしょう。
たまたま乗車した人たちが
(中国籍の)市井の人たちであることもまた
余計に その信憑性につながっている
そして
著者であるラングフィットさんと
インタビューをされたそれぞれ個々の中国の方たちが
そのだけ時の関係だけでなく、ちゃんとその後も何度も
逢って、話を積み重ねておられるところも
たいへん興味深く、味わい深く感じてしまう。
そこまで語らせてしまい、信用されてしまう
ラングフィットさんはきっと人間的な魅力を兼ね備えておられるのでしょう
中国が
世界に向けて発信される
外向きのニュースが
また違って読み取れる楽しみが増えました -
Posted by ブクログ
1960年代に英国の新聞社主催で行われた、単独無寄港世界一周ヨットレース。
当時、月に向かい、北極に向かい、世界が新たなフロンティアに挑む風潮もあってか、全く人命とか安全とか考慮なしに、欲と栄光と金と話題が渦巻く。
9人参加して、走り切ったのは一人という過酷な勝負。
9人の参加動機も海の男としての技量もまちまちで、主催者も一切考慮していない。同時スタートでもなく、準備期間もない。新聞広告出して、この条件で回ったら、賞金あげるよん、という、賞金稼ぎを煽るような構想。
当然、棄権は続出する。自然余りに過酷で、読んでるだけで恐怖する。無理。
それでも海難で亡くなった人がいないのがすごい。
自ら命を絶った人はいる。それも、意外な展開で。
本としても極めて面白いのだけど、登場人物が多い上にヨット専門用語がバシバシ出てくるし、地理上の場所がよくイメージ出来ないし、南半球の話なんで、南北のイメージがまた混乱する。
用語集と地図も掲載されてはいるのだが、それでも足りない。この手の本は、その解説の挿入が難しいと思う。
最後に、各参加者の足取りを、1からもう一度まとめてくれれば読みやすかった気がする。 -
Posted by ブクログ
1968年世界初の単独無寄港・無補給ヨット世界一周をするレース「ゴールデングローブレース」の実際にあった話。
冒険ものは好きなので題材としては最高なんだけど、翻訳物なので読みにくかった。
参加者、それぞれの関係者、ヨットの名前、地名など全部が横文字。
読んでるうちに誰が誰かとか、何となくここらへんかなと場所はわかるようになっていったけど、何より難解なのはヨット用語だった。
なのでどこが壊れたとか、どこの不具合でこうなったかなどちゃんと理解できてないままだが何となくでも読めたし、ヨットの話は初めてなので終盤にかけて面白くなっていった。
ただ、それぞれの結果=史実には色んな感情が湧いた。一番は驚きかな。
このことで有名なのか、ともわかった。
ネタバレせずに書いてるので何のこっちゃ?かもですが、希望峰やホーン岬がそんなに危険とは知らなかったし、当時そんなところをたった1人動力のないヨットで渡っていった話には惹きつけられるものがありました。