【感想・ネタバレ】狂人たちの世界一周のレビュー

あらすじ

アポロ8号の有人月面周回がなされた1968年。地上では、ヨットによる無寄港世界一周レースという、無謀かつ歴史的な偉業に挑んだ男たちがいた。レースはスポンサーによって《ゴールデン・グローブ・レース》と名づけられた。

5000ポンドの賞金を賭けて、海軍少佐、商船船長、船乗り、素人のビジネスマンなど様々な経歴の9人が参加。最終的にただ1人がゴール、残りの8人は脱落、遭難、失踪するという異様な結果となった。
「嘆かわしいまでに正常」なノックス=ジョンストン、放浪に憑りつかれたモワテシエ、謎に満ちたクロウハースト……。
このレースは歴史的偉業として称えられるとともに、海洋競技史上最大の謎「ドナルド・クロウハースト事件」としても、人々に長く記憶されることになる。

通信衛星や電子測位システムが登場する前の時代に、人間の限界を試したいという強迫観念に突き動かされた男たち。想像を絶する過酷な海にあって、決断が生死を分ける緊迫した場面の数々。
ちっぽけなヨットに乗った9人の男たちは、史上最長の、最も孤独な航海になぜ旅立ったのか? 絶望の淵へと追われた彼らの運命は? 成功と破滅を分けたものとは?
成功と破滅に翻弄された彼らの運命に迫る、傑作ノンフィクション。

ニューヨークタイムズ、ウォールストリートジャーナル、ガーディアン、パブリッシャーズウィークリーほか各紙絶賛!!

装丁:木庭貴信・岩元萌(オクターヴ)

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Posted by ブクログ

ヨットでの単独無寄港世界一周レースといえば、現代ではヴァンデグローブというレースがあります。海のF1みたいな超ハイテクのヨットによるレースですが、本書が取り上げるゴールデングローブレースは、GPSもない1960年代後半に実施されました。参加したのは9名。様々な背景を持った参加者が集ったのですが、中にはまともに外洋でセイリングをした経験が無い人も含まれていました。

イギリスをスタートし、大西洋を南下、赤道を越えて南氷洋付近を西から東へと進み、アフリカ喜望峰を通過してインド洋、太平洋へと進み、南アメリカのホーン岬を通過して再び大西洋に入り、北上してスタート地点に戻るというコースをたどります。
南緯40度~南緯50度付近は"吠える40度"と呼ばれ、強い西風が吹いてヨットにとっては好都合とも言えるのですが、一旦海が嵐で荒れると、とんでもない時化となります。これを経験した数人の参加者は早々にリタイアを選択。最終的にモワテシエ(フランス)、ジョンストン(イギリス)、クロウハースト(イギリス)、テトリー(イギリス)の4名が残りました。
このうちクロウハーストは実際には大西洋をウロウロしているだけだったのに、現在地を偽装していました。GPSが無い時代、ヨットの現在位置に関する情報は参加者自身からの無線報告に頼るしかなかったのです。嘘を重ねた彼は次第に追い詰められ、謎の死を遂げます。彼のヨットは無人のままに発見されました。キャビン内部はそれなりに整頓され、荒天時に誤って海に転落したのではない様子が、さらに謎を深めます。
モワテシエはゴール直前、たどったコースを今度は逆方向へ航海する旨、連絡してレースから脱退しました。レースに優勝することで得られる名誉や賞金などの世俗から、自分の魂を救いたいという悟りに近い境地に達していたようなのです。
テトリーはゴール直前にヨットが沈没し、救出されますが、レースを完走できなかったことにとらわれ続けた結果、後に自殺してしまいました。

結局ゴールしたのはジョンストン一人だけ。参加者の多くが”一年間太陽を浴びてのんびりし、その後帰国して世界一周をしてきたと言ってみる(本書抜粋)”ことの誘惑にかられる様子はGPSが無い時代だからこそ心に浮かぶ誘惑かもしれません。現代ならスポンサーとか種々のしがらみがある中でそう簡単にリタイアを決断できないだろうと思えますが、嵐に遭遇してあっさりリタイアする様子などからも、ビジネスやお金がそれほど絡んでいない時代の人間臭いドラマが感じられます。”単独無寄港で外洋をヨットで航海する”という非日常を疑似体験できるノンフィクションです。

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2025年05月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

映画「喜望峰の風にのせて」の原題は「The Mercy」。邦題はひどいが映画の内容は衝撃的だった。本書のヨットレースに参加したクロウハーストが主役の映画だ。本書のおもしろさは、まるまる1本の映画では足りないかのようなドナルド・クロウハーストが9人もの登場人物の1人にすぎない!ということだ。濃厚極まる冒険譚が連続する。問答無用のページ・ターナー。9人のヨット・レースを描く1本の映画をみてみたい気もするが、クロウハーストの映画はもうあるので、あと8本みてみたい。モワテシエはドキュメンタリーがあるっぽいけど、あとで調べてみよう。いやーすごいやヨットマン。とんでもない。あまりの面白さに2日で一気読みした。

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2024年12月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

50年前に無寄港世界一周してたという衝撃
参加者それぞれのドラマが面白い
モワティシエのゴール素通りでもう一周は最高
帯に書かれた自殺者が誰なのか気になってミステリーっぽくも読めた

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2025年04月10日

Posted by ブクログ

1960年代にあったヨットでの単独無寄港世界一周レースのノンフィクション。
当時の設備でそんなことを実現した人がいるなんて、まさに狂人。
ヨットのために全財産を賭け、家族も置き去りにして、自分がどこまで出来るか試す。
ヨットの操り方を知らないまま参加する人もいたりする、自信ありすぎ。

ヨット用語と世界地図を1ページごとに見直しさないと理解して読むのが難しかった。
図がちょくちょく載ってるけど、1回読んだだけやと理解しきるのは無理。
けどレースの成り行きは分かるから不思議。
なんとなく読んでいける。

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2025年02月09日

Posted by ブクログ

船の知識があるならきっともっと楽しめたんだろうけど、そういう知識が全くなくても「なんとなく」読み進められてかつ面白い。
翻訳ものの常として、登場人物を覚えるまでが一苦労。一通り頭に入ったら、ぐいぐいと物語に引き込まれた。
ただ、やはり航路が「なんとなく」なので、レース結果が判明している最後付近にその図をまとめていてほしかった。

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2025年02月07日

Posted by ブクログ

1960年代に英国の新聞社主催で行われた、単独無寄港世界一周ヨットレース。

当時、月に向かい、北極に向かい、世界が新たなフロンティアに挑む風潮もあってか、全く人命とか安全とか考慮なしに、欲と栄光と金と話題が渦巻く。

9人参加して、走り切ったのは一人という過酷な勝負。

9人の参加動機も海の男としての技量もまちまちで、主催者も一切考慮していない。同時スタートでもなく、準備期間もない。新聞広告出して、この条件で回ったら、賞金あげるよん、という、賞金稼ぎを煽るような構想。

当然、棄権は続出する。自然余りに過酷で、読んでるだけで恐怖する。無理。
それでも海難で亡くなった人がいないのがすごい。
自ら命を絶った人はいる。それも、意外な展開で。

本としても極めて面白いのだけど、登場人物が多い上にヨット専門用語がバシバシ出てくるし、地理上の場所がよくイメージ出来ないし、南半球の話なんで、南北のイメージがまた混乱する。
用語集と地図も掲載されてはいるのだが、それでも足りない。この手の本は、その解説の挿入が難しいと思う。

最後に、各参加者の足取りを、1からもう一度まとめてくれれば読みやすかった気がする。

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2025年09月23日

Posted by ブクログ

1968年世界初の単独無寄港・無補給ヨット世界一周をするレース「ゴールデングローブレース」の実際にあった話。
冒険ものは好きなので題材としては最高なんだけど、翻訳物なので読みにくかった。

参加者、それぞれの関係者、ヨットの名前、地名など全部が横文字。
読んでるうちに誰が誰かとか、何となくここらへんかなと場所はわかるようになっていったけど、何より難解なのはヨット用語だった。

なのでどこが壊れたとか、どこの不具合でこうなったかなどちゃんと理解できてないままだが何となくでも読めたし、ヨットの話は初めてなので終盤にかけて面白くなっていった。

ただ、それぞれの結果=史実には色んな感情が湧いた。一番は驚きかな。
このことで有名なのか、ともわかった。

ネタバレせずに書いてるので何のこっちゃ?かもですが、希望峰やホーン岬がそんなに危険とは知らなかったし、当時そんなところをたった1人動力のないヨットで渡っていった話には惹きつけられるものがありました。

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2025年01月07日

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