百舌涼一のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
コメディタッチでありつつ哲学的でもある、ハートフル・ノンメモリーストーリーです。
主人公は、ちょっとお腹の弱い限界社畜SE。ある日、休日出勤をしようとした電車の途中でとんでもないビックウェーブに襲われる。なんとか途中下車して滑り込んだ多機能トイレでは、鍵はかかっていなかったのに美しい女性が眠っていた。追い詰められたところでの異常な事態に、彼の括約筋まで動きを止めて――ともすれば社会から抹殺されてしまいそうな状況の中目を覚ました彼女は、お腹を下してひどいことになっている主人公を家に招き入れ、シャワーと洗濯を提供してくれた。素直に感謝だけをしたいところだけれど、彼女が主人公につけたあだ名は『ゲーリー』――下痢で漏らしたからなんて不名誉なつけられ方をした名は、いつしか主人公に馴染んで一体となっていく。美人だけど強気でチャンネルがどこかずれている彼女は、主人公に『運命の人』を見つけて欲しいと言う。手掛かりは『とあるバーに飲みにくる客』というだけのため、主人公もそのバーに通うことになるのだが、そこにやってくる客は癖の強い者ばかりで、本当に運命の人は見つかるのか。
魅力的なキャラクターがたくさん出てくる良作でした。文体が読みやすいです。最後の解説まで読みましたが、まさに、という感じでした。読み始めてすぐに『そんなことってある!?』とツッコミを入れたくなるような展開で、小難しくかつ緊迫感のある描写で書かれているけれど、確かに緊迫した状況なのだろうけれど、結局下痢で切羽詰まっているという状況。初めからあまり綺麗なスタートではないにも関わらず下ネタが下品な感じには思われないのは、豊かな描写がぐっと引っ張ってくれるからなのだろうなと感じました。いや、文章って自由だなと改めて思います。
謎の美女がとにかく美しい女性として描かれている割に、性格や酒量、何より飲むと記憶を無くすノンメモリー状態になってしまうなどなかなか情報が多く、後から判明する事実も相まってなかなか魅力的です。
バーのマスター、客たちもまた様々な面を見せてくれるのですが、一番意外性のあるキャラクターが主人公だったということがびっくり箱のようでした。主人公の一人称で物語が進むため、主人公が自分で自らのことを話さないと気付かないものでしたが、後半にいくにつれてどんどん引力が増していくのも面白かったです。
コミカルな展開の中にも、作者の芯のようなものを見ることのできる、希望を感じる一冊でした。 -
Posted by ブクログ
母を亡くした継実(♂)は、しわがれ声で老婆のような口調の自称魔女(見た目は20代なかば)がやっている葬儀専門の花屋でアルバイトを始める
常識にはとらわれない花の選び方は「花言霊」を葬儀に添えるためのものだった
継実の特徴として、母親から「その声で話しかけないで!」と言われてからしゃべることができなくなったが、思っていることがなぜか魔女は理解できて会話が成立する
自称魔女の小説が僕の好みなんだけど、やはりこれもそういったオチでしたか
なんか、終盤の種明かしが怒涛の展開で、結構無理があるんだけどね
まぁ、好きな部類です
描かれている葬儀は以下のようなもの
不倫していた会社の重役
神サーファーと慕われていたのに、実は丘サーファーだった先輩
腹上死した女社長
ホストクラブで葬式をするホスト
ゾンビメイクで死んでいた人
デブ専クラブの女の人
遺体が、兄ではないと主張する妹
生前葬をする俳優
あと、継実の母親の仏花もこのお店のセレクションだったよう
一番面白かったのは、ホストのやつかな
「生まれた日を祝うのと死んだことを哀しむのはいっしょだよ」とか
「店長、葬式でピンドン開けないっしょ?」「開けりゃいいじゃねーか。ホストの葬式だぞ。ピンドン開けないでどうすんだよ」のやり取りがクスッときた
お葬式って誰のためのものなのかね?
今までは、ただ単に残された人たちが気持ちの区切りをつけるものと思ってた
でもこれを読んだら、不謹慎と思われたとしても故人がやりたかったお葬式によって笑い飛ばしつつ故人に思いを馳せるものもアリなのかと
「死」はすべての人に訪れるものだけど、そのときにどうやって送られるかがその人の人生の総括なんじゃなかろうか
ま、今までそんな型破りな葬式なんて参列したことないけどね -
Posted by ブクログ
中学1年になった汐は、いつのまにか公園がなくなっていることに気づく。
近所のおじいさんが子供の声がうるさいからと苦情を言ったとか…
幼馴染の佑大に言うと聞きに行こうとなり、だがおばあさんが言うには、おじいさんは認知がありホームに入ったからねぇ、そんなこと言うわけないと。
知らない間に児童館が老人ホームになっていた。
学校では島から転校してきた美玖が、島では猫何いちばん多くて次にじいばあで、子どもはいちばん少ないと言う。
島で8人だけで同級生もいなくて、友だちができて嬉しいと喜ぶ。
だけど3人にはそれぞれに悩みがあって…
ひとりっ子の汐は、大切にされているが血の繋がりはなくて、佑大は大家族で地元では知らない人はいないほどで、美玖は母親が再婚することで島を離れたわけで。
誰がいちばん辛いのかとか不幸だとかじゃなくて、友だちなのに秘密にしているみたいで、それが悲しくもあったのだろう。
SSRとは、スーパースペシャルレアなこと。
卑屈になったりせず、けっして不幸なことでもなく、SSRってカッコイイじゃないかと言う彼らを応援したくなった。
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Posted by ブクログ
失声症の青年と『魔女』の花屋で繰り広げられる生と死と人とのつながりのお話でした。
主人公は過去の母親との諍いに傷つき、小学生の頃から声が出ない『失声症』になってしまった青年。急な事故で二人暮らしだった母を亡くし、他に身内もいない天涯孤独の身になった十八歳。声が出ないためなかなかアルバイト先も見つけられず困っていたところ、ダメ元で当たった花屋で採用してもらえることに。そこは、見た目二十代後半なのに老人のような言葉で話す『魔女』が営む、弔い花の専門店で、通夜や葬儀の花を『花言霊』で飾る仕事をしていた。アルバイトとしてそれに関わるうちに、主人公は思いもよらないところから自分の家族や『魔女』に向き合うことになっていく。
花言葉はよく聞くことだけれど、『花言霊』という、それより少し強くて不思議な力を持ったもので、そっと葬儀や通夜を後押しする不思議なお話でした。作中に出てくる花の名前は、確かに普通の葬儀では使われないものも多く出てきて、そんなこともできるのだろうかと思ってしまいます。葬儀の時、身内はとにかく悲しむことよりも決めなくてはいけないことの多さと忙しさが先に立って、そんなことを考えている余裕がある人などほとんどいないのが現状だと思うので、いざ祭壇を見て予想外の花が飾り付けられていたら、その意外性から『花言霊』にかかってしまうかもしれません。
現実にはあまりないだろう話の展開も多くありましたが、家族との有り様を考えさせられるお話でもありました。 -
Posted by ブクログ
優柔不断、と聞いて、ドキッとする人は、どれぐらいいるだろう?
実は、自分も優柔不断。主人公の勇者くんほどではないけれど。でも、「AとB、どっち?」という選択肢で、迷ったことはない、という人の方が少ない気がする。多少なり、迷うことは誰にだってあるでしょう。その極端の最先端を行ってるのが主人公・勇者くん。
そんな勇者くんに悪魔の手(救いの手?)を差し伸べる、生協のルイーダさん。
生協と通しての仕事なのに、おもいっきりブラックな匂いしか漂ってこない、一癖も二癖もある怪しげなバイト。
生協を通してと言うより、ルイーダさんを通して、が正解だろうけど。
それぞれ一話完結スタイルだと思っていたけれど、最後にそう繋がるのかあ、と意外でした。何も考えずに読んでいたので。
ところで、これは、続刊が出るのかなあ? 一応完結はしたけど、続きそうなラストでもあったので。仮に出たとしても、もう「バナナむいちゃいました」は、もう出てこないだろうけど。
優しくて、柔らかくて、断れない。そんな勇者くんの冒険(バイト)は、まだ始まったばかり。
ラスボスは、やっぱり、ルイーダさん!? 軽く読めて面白かったです。