綾川梓のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレやはりミス・マープルはクリスティに愛されていたよう。
同時期に書かれたポワロの最終作同様、作品全体は不穏で落ち着かない雰囲気が貫かれているけれど、こちらはまだまだ元気に活躍してくれるのではという想像の余地を残してくれている。
謎を追う主人公に危害が及ばないように自主的に庭で張り込み(おせっかいから庭の手入れをするおばあさんに擬態)をしているのもさりげなくキュート。
最終作の位置付けの割に主役では無く登場も少なめなのがやや物足りないけれど、若い主人公に言葉を額面通りに受け取ることの危険を指摘し、指南役としてきらりと光る存在感を残している。
真実に向かって誘導していくマープルから読み手も一緒にヒントをもらえるため、要所要所で立ち止まって咀嚼し、犯人と結末を考え考え読み進めるのが楽しかった。
読み終えて、私もやっぱりミス・マープルが好き、と満足しました。
-
Posted by ブクログ
初めてのミスマープルもの。
ポアロよりマープルのがキャラとしては好きかも!
ヒロインのグエンダが「いままで一度も訪れたことのない国の、一度も来たことのない家」を買って、張りたいと思い描いた壁紙と全く同じものがそこに張ってあるのを見つけるシーンが、なんとも言えず不可解で最高の導入。殺人を見る夢も不気味でよい。
クリスティー作品の、これから素敵な謎が展開していくぞ、とわくわくさせる始まり方、好き!
解説が恩田陸さんなのも得した気分。
「ふとした瞬間に、ざわざわとした胸騒ぎを覚える小説」「ゆったりとした、語られぬ部分を余白として感じられる小説」まさに!
-
Posted by ブクログ
ネタバレマープルシリーズで一番最後に発表された作品という事で、中々読む事が出来なかった。ポアロシリーズ最終作の「カーテン」は学生時代学校の図書室に作品があって、知識がないまま読んでしまったが、「スリーピングマーダー」については読んだらいよいよマープルシリーズが終わってしまうという想いもあり中々読むことが出来なかった。
クリスティ作品が大好きでほとんど作品は読み終えた為、いよいよ今作を手に取った次第だ。
ミスマープルと若い夫婦の組み合わせはかなり抜群で、過去にもマープルと若い女性を組みあわせた作品がいくつかあり、とても面白い作品になっていた。今回もリード夫妻の無鉄砲な冒険に対し、マープルは心配しながらも、適宜彼女たちをフォローしながら、事件の真相に染まっていく彼女のシリーズの独特の展開になっている。
事件自体は、十数年前の過去に起きた殺人事件と言う題材であり、実際に殺人が起きたかどうかも不確かな状態。
グエンダは田舎に家を探しており、イングランドでヒルサイド荘という家をみつける。グエンダは初めてイングランドに来たはずだが、家の内装に既視感があり、更には細かな部分を想い描く事が出来てしまう。不安の中、彼女はその家で女性が首を絞められて殺害されていた風景を思い出し・・。
冒頭がかなり魅力的なのは、マープルシリーズの特色であり、マープルシリーズでは必ず1番最初に読者を惹きつける全くの謎が提示されそれがマープルの手によって解き明かされていく手法だ。今回の事件においても、グエンダは全く持ってヒルサイド荘の記憶をなくしているわけだが、幼少期に一度済んだ時期があり、それがきっかけとして過去に起きたはずの事件と言う題材が進んでいく。
マープルはどちらかと言えば、フォロー的な立ち回りになっているが要所要所に目覚ましい活躍をしている。また、マープルの終わりの人たちや警察組織の人たちは彼女のことをしっかり認知しており、彼女はこの次元に首を突っ込むことを了承し、他のミステリーにあるような探偵をすることを阻害され、無駄に時間が過ぎるような事は無い。
スリーピングマーダーはマープルシリーズの最終作だが、執筆されたのは少し早い時期だったと記憶している。晩年の作品にも面白い作品はたくさんあるが、今作もとても呼びやすく、面白い作品だった。
最近近代のミステリーと比べて思った事は、マープルシリーズはとても読みやすく、人物描写が巧みだと言うことトリックも面白いが、作品全体としての完成度が高く、とても楽しむことができた作品だった。 -
Posted by ブクログ
やったー犯人当てられたーっ
といっても、別にトリックで当てたわけでもなく、仕込んであったアリバイ操作を見破ったわけでもない。
多分クリスティなら、コイツを犯人にするだろうなあという、そういう推理小説を読み解くのにそれはどうよという……いわゆる当てずっぽう的なものである。それでも毎度毎度外しまくっていた身としては、それなりに嬉しい。
ミス・マープルシリーズでは一番最後、完結作品としてクリスティの死後に発表された本作は、ある意味思いっきり作者の書き逃げ的なものなんだろうと思う。なんせ感想を持ったとしても、書いた本人はもうこの世にいないのだ。ただ最後のポアロ作品で同じく死後に発表された「カーテン」に比べると読後感は良くて、最後の完結作品であるという感覚はない。むしろ、ミス・マープルに恩義を持ったであろう若夫婦が、彼女の後継者として活躍してくれるんじゃなかろうかと、そんな予感をさせてくれる。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ若妻のグエンダがイギリス南部に買った趣のある家。訪れるのは初めてのはずなのに、なぜか見覚えがある。
ある夜ミス・マープルと彼女の甥夫婦とともに観劇をしていたグエンダは、かつてその家で起きたと思われる殺人のシーンを唐突に思い出し、それと同時に幼少期にやはりこの家に住んでいたということを確信する。分別のあるマープルは、殺人事件の真相を暴くと意気込むグエンダ夫妻を諌めるものの、二人の好奇心を止めることはできない。経験則から知らない方がいいこともあると知っているマープルと、知らずにはおれない若い二人の対比がクリスティらしくて非常に良い。
結局はマープルも夫妻をサポートするため動き出す。グエンダ夫妻とマープルはそれぞれにかつての関係者たちを訪れ、殺害されたと思しき女性はヘレンという名のグエンダの継母だということが判明する。ヘレンはグエンダの父と離婚してどこか外国へ行ったと思われていたが、本当は殺されているのかもしれない。だとすると犯人は一体誰なのか。三人は「彼女の生涯における男たち」を辿っていく。
普通のフーダニットと異なり、そもそも殺人が本当に行われたのかということがスタートでありゴールでもある。
「若い男女を優しく見守る」スタンスは、ポアロにもマープルにも見られるクリスティの持ち味。 -
Posted by ブクログ
眠れる獅子を起こすと厄介な事になる。それは誰もが胸に留めるべき教訓なのだけど、本作で起こしてしまうのは殺人
誰も殺人と思わなかったワンシーンが一人の女性の回想により突如起き上がる。序盤は唐突に、そして話が進む毎にゆっくりと殺人犯の足音が忍び寄る様子にはクリスティーの熟練さがそこかしこに活きていると感じられるね
本作の他にも殺人と思われていなかった過去の事件が現代に殺人として蘇る事件はクリスティー作品には幾つか有るけれど、本作の場合はそもそも事件とすら思われておらず、被害者のヘレンは駆け落ちしたと殆どの者に信じられていた点が特徴
グエンダ自身もこれまでヘレンの事など欠片も覚えて居ないどころか、殺人現場に自分が居た事すら覚えて居なかった
なのにとある台詞を聞いた瞬間から彼女は眠れる殺人の存在を確信するわけだ
その導入はホラー感が有りつつも、幼少時の鮮烈な記憶が残っていたという納得感が有る為に読者にも眠れる殺人の存在を確信させるもの
本作を面白くしているのは殺人を思い出すグエンダの存在だけでなく、彼女と共に事件を探るジャイルズの存在が有ってこそだね
若い新婚夫婦が選んだ家は妻が昔住んでいた家でおまけに殺人が有ったらしい。それに興奮して余計な捜査を始める二人の様子はかなり危なっかしくて他のミステリならば被害者候補に成りかねないもの
だというのに、ジャイルズは意外な賢さを見せるし、グエンダも素晴らしい直感によって選ぶべき道を選んでいる
また、田舎のお婆ちゃん感たっぷりのマープルが二人を支えているものだから、尚更に事件だけじゃなく事件に接する主要人物も魅力的に感じられる作りになっている
本作の主題となる眠れる殺人はとあるポイントを過ぎるまで本当に殺人が有ったのかあやふやままに展開する。唯一頼りになるのはグエンダの曖昧な記憶だけ
だから関係者も時には読者でさえも「本当に殺人が有ったのか?」と疑いながら捜査は進んでいく
そのような展開だったからこそ、眠れる殺人が起き上がり過去に関係する人物に牙を向いた瞬間には恐怖すら感じられ、その恐怖の正体が解き明かされた瞬間には興奮を覚えずに居られない
本当に上手い構成になっている作品ですよ -
Posted by ブクログ
ネタバレ記憶もないほど幼い頃に過ごした海辺の快適な家、おぼろげながら幸福な印象にそぐわない惨劇の場面…曖昧な中から浮かび上がる明暗のコントラストが魅力的。オカルト的な要素は珍しいけど、心地よさと怖さを結びつけるところがまさにアガサ。クレプスキュールレーベルのfrom Brussels with loveというアルバムに入っていたHelen’s songというきれいだけど背筋が寒くなるような曲を思い出した。謎解きは定番的なため、リリーが手紙を書く時点で死亡フラグ+相談相手=犯人確定。この犯行のトリックも読めた。テニスネットのエピソードで元の事件も確信。新たな死者が出たのは気の毒だけど、若い命を断たれ汚名を着せられたヘレンのためにはせめて真実が明らかになってよかった。復讐の女神と同じ話で、今の時代ジェンダー問題になるけど、こういう事件は犯人が男性ならしっくりくる(女性ならライバルを襲う)。ミス・マープルはおとり捜査が好きみたいだけど、動く指のミーガンの時みたいに事前調整してあげたほうが良かったと思う…ウォルター・フェーンの家に死人がいる気がすると言うグレンダの直感はガセだったのか、「マギンティ夫人は死んだ」のアリアドニ・オリヴァ的なオチはなかった。