ウラジーミル・ソローキンのレビュー一覧

  • ドクトル・ガーリン

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    2021年に出た本作は2010年に出た中編『吹雪』の10年越しの続編。
    前作は吹雪の中をひたすらさまよい続ける物語だった。主人公のドクトル・ガーリンが本当に目的地にたどり着ける
    のだろうか、という不安を抱きながら、セキコフという御者にネチネチと愚痴と悪態を付きながら旅を続ける。
    『ドクトル・ガーリン』でもあの厭味ったらしい主人公のネチネチとした愚痴を聞かされ続けるのだろうなあ、なんて思っていたのだが、全然違っていた。むしろかなりポジティブなキャラクターに変わっていて、一体お前に何があったんだ、と気になるくらい。
    また主人公同様に物語もカラッとした明るさがあった。ソローキンにしては珍しく感じたけ

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    2025年09月17日
  • 青い脂

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    未来から過去へ、そしてまた未来へ戻る時系列に少々体力を使った。
    ソ連時代の社会的リアリズムと実在したあらゆる人物たちが、ドストエフスキーよりも多く出てくる。
    注釈でロシアの歴史の勉強になった。
    歴史や人物などかなり詳しく書かれていた。
    エロ・グロ・ナンセンスなので、サド的要素があり好みが別れると思うけど、愛が好きなので大変楽しみながら読めた。

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    2023年12月30日
  • 親衛隊士の日

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    ロシアの小説の翻訳だ。作品は2006年に登場したそうだ。2020年代後半を想定していると見受けられる、所謂「近未来SF」ということになる小説だと思うが、何か独特な、やや不気味な感じもした物語だ。“物語”というよりも、「独特な“近未来”への予感めいた想像に一定の形を与える文章」というような気がしないでもなかった。所謂「“ディストピア”な物語」というような感なのかもしれない。
    本作冒頭に近い辺りから読み始めて、何やら酷く不思議な気がした。作中世界の独自な通称を冠せられているような場合も在るが、それでも「現代」の様々な小道具が普通に使われているように見受けられる。その他方で、何やらやっていることが「

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    2022年09月17日
  • 親衛隊士の日

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    帝政下の親衛隊士たちの敵対者への恐るべき残虐行為と歪んだ疑似家族的愛情が同居する世界を描き出す。
    この非論理的な暴力を、東大先端研准教授 小泉悠氏の指摘する「ロシアのプーチンはヤクザの親分である」がなければ読めなかった作品。
    幾度も挫折しそうになったおぞましい表現の数々は、しかし、現代の悲劇を驚くほど正確に予言していた。ロシアのウクライナ侵攻、国際的な孤立(EUからの拒絶)、そしてブチャでの虐殺や子どもの誘拐といった非人道的な残虐行為の数々。武装集団ワグネルのプリゴジンの暗殺も衝撃を与えたであろう。
    この小説は、単なるグロテスクな物語ではなく、ロシアへの理解に一助となり、暴力行為は映画「時計仕

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    2025年10月24日
  • 青い脂

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     原著1999年刊。
    「怪物」ソローキンによる、破壊と猥雑化の限りを尽くした、妙な小説である。
     読み始めるとすぐに、ボリスなる人物による、何を言っているのか全然わからないような手紙が延々と綴られてゆく。この圧倒的な「わからなさ」「言語の異物感」は、大昔に読んだSF小説『ニューロマンサー』の文章の感覚に似ている。
     ひっきりなしに繰り出される妙な造語は、よく見ると巻末に用語解説が載っている。しかし、そこでピックアップされているのはごくわずかであり、このボリスの文章を理解するにはまったく足りない。
     やがてボリスのパートが終わり、もっと分かり易い文体が出現する。
     第二次世界大戦がロシアとドイツ

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    2024年11月07日
  • 親衛隊士の日

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    ロシア文学はとにかく勢いがぶっ飛んでて素晴らしい。残酷描写もスパッスパッと手際よく進んでいくのでそこまで不快感を感じさせない。最後の儀式のシーンも含め「(ロシアなら)ありそ~~~~」のオンパレード。ソローキン、生き延びてくれ

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    2024年10月02日
  • 青い脂

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    2068年。シベリアの遺伝子研18に所属するボリスは、かつての恋人へ猥語だらけの手紙をクローン伝書鳩で送りつける。その文面から明らかになるのは、ロシアの偉大な文学者のクローンを造り、彼らが作品を書いたあとに体内で生成される反エントロピー物質〈青脂〉を取りだすという計画。だが全てのクローンから青脂を採取した日、パーティー中の遺伝子研をシベリアの地下に拠点を持つカルト教団のゲリラが襲う。未来のインテリが操る中国語とロシア語のチャンポン言葉、プログラム言語のような猥語、クローンが書いた文体模写小説、歴史改変された1950年代ロシアの狂乱などで組み上げられた、鮮烈なヴィジョンと嗤いの書。


    なーんも

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    2022年07月18日
  • 青い脂

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    ロシア発エログロナンセンス問題小説。一部の人に熱狂的支持を受けるタイプの本。ロシア文豪をクローン化(全然似てない)したり、謎宗教団体が大地と性交したり、スターリンとフルシチョフが性交する。

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    2020年11月15日
  • 青い脂

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    現代ロシア文学のスター、いや、スターと言うよりはモンスターと評される若手作者の長編小説。こーれーはヤバイです。ヤバ過ぎて、何度も挫折しかけてやっとの思いで読み終えました。人生で一番読むのに苦しんだ作品と言っても過言ではないかもしれない。前衛アート?奇怪なスラング、文豪のクローン、エログロスカトロ何でもござれ、極め付けはスターリンとフルシチョフの濃厚な濡場。読むのに並々ならぬ体力が必要です。

    你好、私の優しい坊や。やっとお前がくれた書を読み終えた。正直に言おう。一文字目から腐っている。これを書いたのはどこの醜悪な気狂い野郎だ?おかげで私はMバランスを7ポイント失った。マイナス=ポジット。後はた

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    2018年10月17日
  • 青い脂

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    最近ポストモダン文学にハマってる。この作品はその系統だと思う。前衛的というか実験的というか、兎にも角にもはちゃめちゃって感じ。ストーリーの筋自体は複雑ではないと思うが、書き方が複雑かつ、独特の文体でついていくのが困難。もうその文体や造語自体を楽しむしかないって作品。
    小説を書くことで青い脂(青脂=せいし=精子)という奇抜なアイディアも斬新でよき。そういう小説内小説の入れ子構造も楽しい。ロシアの文豪が次々と出てき、各作家の文体に合わせて小説も書かれていた。ナボコフが一番好き。比喩表現が面白いから。
    それぞれの作家を読んでいて、ある程度理解があればもっと楽しめたと思う。
    怒りから子どもが生まれてく

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    2024年08月28日
  • 親衛隊士の日

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    相変わらずソローキンは暴力的だ.
    今回の暴力は,皇帝が君臨する近未来で,「堕落した」人々を取り締まる親衛隊.いわゆるディストピア小説に分離されるが,主人公はディストピアの源泉たる親衛隊士側である.ストーリーはあってなきが如し,支離滅裂で,いつものソローキン.
    しかし,こんなの書いてよくロシアで無事で過ごせてるなあ,と思っていたら,あとがきによると,親プーチン派の青年団体が,青い脂のページを破って火に焚べる,というパフォーマンスがあったそうだ.宜なるかな.

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    2024年08月18日
  • 親衛隊士の日

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    ソローキン入門として手に取ったが、「この人の作品は他言語に翻訳しようがないのでは」と他作品へのチャレンジを躊躇する結果になってしまった。
    本作は一言でいえば「帝政が復活した2028年ロシアにおいて、ツァーリ直属の親衛隊が矛盾に満ちた"粛清"を行う様子を描いたディストピア小説」となろうが、この手の風刺系ディストピア小説は風刺以外にどのような視点を提供するかが肝要(単なる「帝政こわい」であれば小説のフォーマットで長々と読む価値がない)なところ、本作の場合はそれが(おそらく)ロシア語の言葉遊びを躊躇なく極端化した暴力性・異常性のあるモチーフの連続なんだろうが、その言葉遊びが理解で

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    2024年05月05日
  • 青い脂

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    太宰治3号や、夏目漱石2号にも書かせてみたいぞ、なんてのんきに考えていたら、
    スターリンとフルシチョフのくんずほぐれずな濡れ場の登場に、私のLハーモニーやMバランスは崩壊しました。

    前半パートを読んでいる間、ついつい日常的に「リプス・小便!」とか口に出してしまいそうになりますが、確実に変な人に思われるから皆さん気を付けよう。

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    2023年01月16日
  • 青い脂

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    1999年に出版された
    ロシアの作家ウラジーミル・ソローキンの長編SF小説。

    2068年、酷寒の地に建つ遺伝子研(GENLABI)18に、
    七人の文学者のクローン体が運び込まれた。
    クローンたちは新作を書き上げると
    焼け焦げて仮死状態に陥り、
    超絶縁体の《青脂》――青い脂――を体内に蓄積させる。
    研究所員の一人、
    言語促進学者ボリス・グローゲル曰く、
    防衛省が月面にピラミッド型をした不変エネルギーの
    反応器を造っており、
    その原料になるのが第五世代の超伝導体と《青脂》で、
    それは軍事用ではなく、毒性もなく、
    分解可能だが燃えることもない――。

    物語の鍵を握る謎の物体が
    次から次へと人の手に

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    2020年06月03日
  • テルリア

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    戦時中。しばらくするとバスが来てそれに乗れば「国」に帰れるかもしれない。それを逃すと次いつ来るのかわからない。到着したバスは既に人がこぼれ落ちそうになっていた。その人達を引きずり落として、自分はバスに乗らなければならない。極限状態において人はどこまで、自分をさらけ出すことが出来るのか、氏に問いかけられる。(現代人はそういうの隠して生きてるんだよう、剥かないで)けして面白い内容でなく、むしろ読み手を翻弄させる。関わってしまうとザワザワする。ダイレクトに脳細胞に働きかける。恐ろしいけどやっぱり剥かれたいの。

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    2019年02月03日
  • 青い脂

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    ネタバレ

     想像していた内容と良い意味で違った本。ロシアの作家や歴史的な人物が登場したり、パロディが成されていたりする。それに加え、SF要素がある。初めのうちはもう何が何だか分からない。登場人物たちも新ロシア語で話しているし。しかし、読み進めていくうちに不思議と何を言っているかが感覚で理解できるようになります。それに1954年が舞台になると普通の言葉で話すようになるので、言葉だけは理解できるようになります。物語中で起こることは、私の理解の範疇を超えていましたが。
     2068年の作家たちのクローンによる作品は、その作家っぽく書かれていて、作者のの手腕が光っていると思います。
     ところで、結局「青脂」とは何

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    2016年06月05日