平岡篤頼のレビュー一覧
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大学生の身でありながら学問はさぼりがちで
人妻訪問にばかり精をだす
ウージェーヌ・ラスティニャックがそうするのは
社交界で人脈を作ることこそ、出世の早道と信ずるからであるが
なにしろそのためには金がかかるのだった
そんな彼の前に、二人の男が現れては破滅し、去っていく
ジャック・コランとゴリオ爺さんだ
一人は、資産家の娘を篭絡してしゃぶりつくすことをそそのかす悪党
もう一人は、娘たちへの愛情だけを杖に生きてる惨めな老人
ウージェーヌは、そのどちらにも一定の共感を抱くが
しかし、どちらの示す道をも選ぶつもりはなかった
いわば父性との決別
それがナポレオン・ボナパルト斃れし後の
フランス共和主義の気 -
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すべてを愛す
裏返しは盲目
カミュの紹介から。
流れるような矢継ぎ早の表現に絡め取られて、煙にまかれてしまいそうになる。
同じパリに生きる人間を描いているというのに、サガンのそれとはまるで違う。サガンはたった数人の人間関係を持続させることで、気怠いパリの空気を吐き続けた。
バルザックは、その気怠さを金と愛の汚泥から容赦なく叩きつける。
描かれる人間それぞれに人生(ドラマ)を与えていて、きちんと役割をこなす。美しいものは美しく、汚れたものはとことん汚く、その予定調和さにどこか嫌悪を覚えてしまう。パリのみせる二面性があまりにもクリアなのだ。
ヴォートランの存在は作品全体に色濃く印象を与えていて、 -
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ネタバレバルザックはフランスではとても有名な作家ですが、その作品を初めて読みました。1835年の作品ですから、19世紀の前半、フランス革命やナポレオン帝政の後、7月王政の時代です。パリも都市として大きく発展していたころで、この小説の主人公ラスティニャックのように、地方から出てきて出世を目指していた若者も多かったようです。
娘を溺愛しながらも省みられることなく最期を迎えるゴリオ爺さんが物語の中心にはあります。しかし、それを取り巻くしたたかな人物設定(特にヴォートランや下宿のおかみヴォケー夫人)や、パリの社交界が狩猟社会の様相を呈しているあたりの描写(192頁)が基調を作っていますので、読んでいて悲痛な