小林英夫のレビュー一覧
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満鉄調査部
著:小林 英夫
講談社学術文庫 2290
アメリカにはそうそうたるシンクタンクがあるのに、なぜ日本には著名なシンクタンクがないのだろうとの疑問から、手に取ったのが、本書である。
国策を補佐し、国運を左右する人材を提供するのが、シンクタンクだとおもっていたが、まさに、
満鉄調査部は、日本初のシンクタンクであった
日露戦争が終結し、南満州の殖産興業を要とする、南満州鉄道が敷設されていく。
その第1代総裁に選出されたのが、後藤新平であった。
後藤新平は、台湾総督府にあって、台湾人との融和を図り、また、満州の植民地経営の要として、満鉄を率いて、さらに、関東大震災にあたっては、その復 -
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元祖シンクタンクとも呼ばれる満鉄調査部の実態を描いた一冊。単なる満州の情報収集機関にとどまらず、ロシア革命後は反共の最前線としてソ連情勢を分析し、満州事変以後は関東軍と連携して中国の政治・経済情報を収集するなど、その活動は一鉄道会社の枠を超えた国策シンクタンクの性格を帯びていた。
興味深いのは、反共の砦でありながら内部にマルクス主義者も存在し、ゾルゲ事件の尾崎秀実と関係した人物がいたために憲兵隊の捜査を受けたという皮肉な一面。
また、満鉄総裁として後藤新平や松岡洋右といった歴史上馴染みのある人物が登場する点も印象深かった。戦後日本の政治や経済には、満州で活動した人々の影響が色濃く残ったとも言わ -
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社会主義といえば計画経済、資本主義といえば市場経済というのが常識だが、本書の主張はその常識を覆すものだ。
日本は、1930年代に中国に満州国を作り、官僚指導の下に国家統制により国防産業を急速に育成した。満州国で「計画経済」を行ったのだ。このノウハウと人材が戦後日本にそのまま移植され、高度成長をリードしたとの主張を本書ではしている。要するに、日本の1950~1970の高度成長は、「計画経済」によるものだというのだ。そしてその準備をしたのが、岸信介を筆頭とした満州で実際に高度国防国家を作るために活躍した「満州人脈」であるというのが本書の主張である。
まあ、ゴルバチョフ旧ソ連大統領が「日本は最 -
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ネタバレメモ
ロシア通で満鉄調査部にいた宮崎正義がソ連の計画経済を規範にして作った「満州産業計画五か年計画」を実行したのが、商工省のキレものだった岸信介をはじめとする若き官僚たち。彼らはここで実務経験を積んだ。満鉄の力を弱め、日産を引き込んで一大コンツェルンを作り上げる。これが満州重工業開発株式会社。主要人物は2キ3スケ(星野直樹、松岡洋右、鮎川義介、岸信介)
戦後、岸は巣鴨に収監されていたが、東条内閣の閣僚のうちなぜか唯一無罪で釈放される。アメリカ軍との密約説などがあるが、真相ははっきりしない。
政治活動を再開した岸の政治信念はアジアの盟主を目指すという点では変わらなかったが、各国のナショナリズ -
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ぼんやりとですがずーっと、
「第二次世界大戦、日中戦争、十五年戦争、ノモンハン事件、インパールなどなど...あのあたりの事って言うのは、どうして起ったんだろう。誰がそうしたくて、誰が儲かったんだろう。それから、どうして戦後に出来た自民党さんっていうのは、具体的な理由がまったく無いのに憲法を変えたがるんだろう」
という興味があります。
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2005年に出た新書。
大変に短い、読みやすい本。ブックレットのような。
中国近現代史についてなんとなく読みたい、という気持ちと、「岸信介」という人についての本があればこれまた読みたいな、という気持ちがあって、衝動買い。
タイトルの通り満州国という、実質「関東