リチャード・J・サミュエルズのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
日本のインテリジェンスの変遷がよくわかり、抽象的な事象と具体的な事例のバランスが取られた一冊。
日本のインテリジェンスとそれに基づく危機管理、意思決定などに興味がある方向け。
日本語訳者の小谷賢氏も日本のインテリジェンス史に関する書籍を出しているので併せて読むと理解も深まると思われる。
収集、分析、伝達、保全、秘密工作、監視という6つの要素から近代以降の各時期の日本のインテリジェンスを評価している。
また、将来の日本のインテリジェンスの能力拡充や対外的協力体制構築の方向性についても示唆を与えてくれる。
日本は(どの国でもそうだが)、内外の政治情勢、技術的な進歩、そして「失敗」に影響を受けてインテリジェンスを進歩させてきた。
戦前戦中と陸軍中野学校に代表されるようなヒューミントの発展を成し遂げたし、シギントについても善戦した。
一方、スパイゾルゲのような事例から、防諜は不完全のようにも思われる。
また、陸軍海軍の間で情報共有が消極的だったようにサイロ化も否めない。
戦後は元軍人によるインテリジェンスの再興は見送られ、警察を中心にインテリジェンスを再スタートさせた。
アメリカへの偏重とそれに対する不信などがありつつも、あらゆる経験を得た。
ソ連にはスパイ天国として活動を許した。
MiG25の強制着陸ではレーダー探知能力の問題点に加えて警察、自衛隊、法務省、外務省で官僚の管轄争いを演じた。
後藤田、中曽根、その他キーパーソンがスパイ防止法、外務省のインテリジェンス強化などを図るもいずれも道半ば。
その後も阪神淡路大震災で首相がテレビで第一報を知るなど危機管理の甘さも残存。
防衛省に情報本部を設置するも結局のところ警察に情報がたどり着き溜り場ができる状態。
国家の意思決定や政策関心とインテリジェンスコミュニティ各省庁の連携は程遠い。
拉致問題の解明は政治家の北朝鮮との関係改善という思惑が邪魔して遅れたとの見方もある。
町村、安倍などの政治家により特定秘密保護法制定、NSC設置などにより、情報保全強化と日米情報共有の推進、インテリジェンスコミュニティのサイロ化排除や一体化などが進んだ。
それでもヒューミント不足、NSSの専門的な分析人員不足、未だに残る省庁間の権限争い、サイバーセキュリティ対策、など課題は依然として残っている。
今後は情報共有の協力国の軸を見定め、それに向けて日本も自助努力し、サイバー、宇宙利用など技術的な進歩も含め発展させる必要がある。
今までは失敗からの手直しを続けて来たが、
例えば台湾情勢などを念頭に、
どんな失敗を回避すべきかを考えながら必要な力を備え、「普通の国」を目指していきたい。 -
Posted by ブクログ
3.11によって日本の「安全保障」「エネルギー政策」「地方自治」はどう変わったのか、あるいは変わらなかったのか。国及び地方の政治家や各界の有識者たちの言動を掲げ、あるいはボランティア、自衛隊、米軍の活動を子細に検証しながら、客観的かつ明瞭な評価を示してくれる。3.11への対応は「復旧」という再建にとどまらず、「復興」という滞っていた現状から繁栄につなげる大いなる機会であった。が、その機運がなかなか行動に至らぬうち、「原子力ムラ」が復旧、いや復興しつつある。とはいえ、阪神淡路大震災での失敗を教訓に、地方自治体の協力関係と自衛隊の活動においては著しい成果もあげている。不幸にも大震災が頻発する今日、この親日米学者のあまりに適切な分析にしっかりと耳を傾けたい。
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Posted by ブクログ
多くの関係者インタビューをもとに、日本のインテリジェンスの歴史やその問題点を分析する良書。NSS立ち上げ後も内調とのアクセス争いがあることなど、収集・分析機関間の争いや政策との関係が引き続き問題であることがよく分かる。結局は、不確実性を含むインテリジェンスを政治家・政策部局がどれほど重視できるのかという文化の問題かもしれない。以下興味深い点。
・戦前のインテリジェンス・コミュニティでは秘密工作の方が分析よりも高く評価された。
・東條英機はインテリジェンス不信。ナチスドイツのソ連侵攻に関する情報を信じようとせず。防諜組織も持っていなかった。
・合同情報会議は1986年に創設。この頃、内調室長の総理ブリーフは週一回だった。
・1985年、中曽根総理がスパイ防止法を作ろうとして失敗。
・1998年、官房長官を議長とする内閣情報会議が創設。しかし、縦割りや政策側との混線問題は取り組まれず。
・1997年に防衛庁情報本部の創設。
・インテリジェンス改革の促進要因:テポドン実験など安全保障環境の悪化・米国の圧力
・町村は「政治指導者によるインテリジェンスの放棄」の状況を変えようと決意。
・2005年でも内閣情報官の総理ブリーフは週一回。
・NSSは内調に頼るのではなく外国の情報源を開拓しようとした。ソニーピクチャーズへのサイバー攻撃について米から情報を得たのはNSS。
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Posted by ブクログ
日本における諜報の変遷を、アメリカの立場で検証している一冊。
現在アメリカにとっての極東地域同盟国の一つ日本ですが、戦前戦中のアジアでは全ての白人国家と渡り合える唯一の黄色人国家でした。
それには諜報・防諜の技術が必要であり、日本でも活用されてきました。
本書の焦点は戦後の日本に当てられています。
戦後日本の情報の扱い方がどのようなものか、詳細に解説されています。
どうしても難いものとなりますが最近の総理大臣や拉致問題など記憶に新しい話題も絡んできますので、多くの日本人が関心を持てる内容であると思います。
情報を得て未来を予測し要領良く行動する術は個人でも重要ですが、国家規模となれば必要です。
日本は民主主義で代議制の国なので、有権者である国民が今後のインテリジェンス・コミュニティの舵取りについても第一歩の判断をすることになります。
その判断の一助になること請け合いの一冊です。 -
Posted by ブクログ
東日本大震災、311は日本を変えたのか? それとも変えなかったのか?
米国の知日派という第三者の目から、特に「安全保障」「エネルギー政策」「地方自治」の3つの点に焦点を絞って分析している。
震災から5年目に出版された本書、当然執筆されたのはそれ以前のものであり、2013年頃までの状況を分析したものとなる。
本書にかかれた状況が、おそらく現在まで継続されているものは、自衛隊、防衛省をめぐる状況であろう。
311による大きな被害に、いち早く組織的に対応したのは、自衛隊と強力な同盟関係にあるアメリカ軍であった。
自衛隊は独立し行動できる部隊として、いち早く被災地に入り、被災者救出から被災地復旧、そして時には行政の支援までを引き受けることにより、多くの国民からの心理的支援を受けるようになり、それは組織、予算そしてステータス向上に大きく資する結果となった。
同時にいち早く被災地入りした在日米軍はじめ多くの米軍人は、やはり被災地支援に力を発揮したことにより、強固な日米同盟関係を確認し、実践対応でも力を発揮できることをしめした。
しかし、その後の国内事情の変化により、在日米軍を取り巻く環境は徐々に変化しつつあり、オペレーションの部分では統合による大きな成果を遂げたにもかかわらず、日米関係の強化については、現在はそのちからが減衰していると言えるかもしれない。
他方、エネルギー政策については、原発事故直後こそ、原発を将来的に廃止していくという機運が盛り上がりはしたが、強烈かつ継続的なロビー活動やステークホルダーの活躍により、本書が書かれた時代からは大きく舵を切り直され、原発中心のエネルギー戦略に揺り戻されていると思う。
地方自治についても、国の下一元化した号令をかけるだけの体制では災害に対応できないことは明らかになり、地方分権が進むかに見えてはいたが、明治以降生き残っている中央官庁の力は未だに強く、やはり中央集権的なちからの構造は変化していないように見える。
本書は、まとめでも書かれているように、書かれた時期がまだ311震災の影響を総括するには早すぎ田のだと思う。しかし、その時点までに何が起きたかを克明に記憶しておくことは、後世研究するのに非常に価値のあることだと思う。
残念ながら、日本国内では、利害関係者の顔色を窺わずに事実を書き残すことは難しい。したがって、公式な記録であっても、時の為政者の都合の良いように記録され、記憶される。
できれば、本書を執筆したような海外の研究者が、その後の日本を研究し、誰がどこで、どのように誤ったか。
そして、今後日本は何をすべきかを、日本人に向けて突きつけてほしいと思った。