エーリッヒ・ショイルマンのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
シンプルに、恥ずかしいなと思った。
そしてこのところ感じていた、この世の全てがまやかしで、本質的でないような感覚に的確な説明が与えられたようにも思えた。
必要以上にあふれるモノ、必要もないのに生み出されるモノ、そのモノのために頭を悩まし生きる我々。自らうみだした概念で自らを縛り、心を乱す我々。考えるばかりで、自分の身体と心で世界に触れようとしない我々…。
編者や訳者の文中には、ツイアビ氏の文明描写や、提示したりする考えを笑いやおかしみをもって受け止める様子が多く見られるが、ぼくには笑いが込み上げてくるような瞬間は一切なかった。不思議でしようがない。このどこに、そんな面白みがあったか、わからない -
Posted by ブクログ
2018/3/9
・「パパラギは、巻貝のように堅い殻の中に住み、溶岩の割れ目に住むムカデのように、石と石のあいだで暮らしている。」 p.34
→価値観、文化が違いすぎて凄い文章。この章は色んなモノがさまざまな表現で形容されていて普通に面白かった
・「ーーー息をするのにもすぐに丸い金属と重たい紙が必要になるだろう。なぜなら、あらゆるヨーロッパ人が四六時中、新しくお金をとる理由を探しているのだから。」p.51
→痒い所に手が届くいいサービスだーーと思っていたものが、この文章を読んでから、がらっと価値観が変わった。
・「もてなしをしたからといって何かを要求したり、何かをしてやったからといってア -
Posted by ブクログ
サモアの酋長ツイアビが欧州視察の旅で見聞きした白人文化を、サモアの人々に語って聞かせる演説をまとめたもの。ほぼ100年前の話だが、不思議と現代と何も変わらない。忙しさ、お金、時間、仕事、機械、物欲、家族、住まい、都市・・・。白人(パパラギ)の家には光も風も届かない。腕に機械を巻きつけ、時間ばかりを気にしている。仕事を一つ覚え、一生その仕事から離れず魚も取れなければ畑を耕すこともできない。自然のままに生きてるサモアの人々から見ると、白人の生き方は不思議で危険なのだろう。ツイアビがサモアに人々に語りかける内容は、そのまま自分に言われているようで、なんとも気恥ずかしい気分。
-
Posted by ブクログ
痛烈な文明社会批判。耳に痛いというか胸に痛いというか……。ツイアビが生きていたのは19世紀だけれど、今読んでもまさにその通り。技術力はどんどん向上しているけれど、人間は殆ど変わっていない。
でも最早文明社会でしか生きられない身としては、ここまで軽蔑されるのはやはり哀しい。
最初に彼らと触れ合ったパパラギたちが、もっと彼らを尊重し尊敬していれば、ツイアビもここまで頑なにはならなかったんだろうか。考えたところでどうしようもないけれど、つい考えてしまう。考え過ぎると不幸になるって、真理だな。
“自分探し”している人たち、自己啓発本を何冊も読み漁るより、これ一冊を読む方が色々ガツンと来るんじゃ -
Posted by ブクログ
読んでると、生きるってシンプルなんだなと。
何かをできないととか、何かを持っていないと、という心配や悩みは、人間としての本質じゃないのかもしれないなと考えた。
…私、悩む方向性間違ってた?悩まなくていいとこで悩んでた??みたいな、自分の悩みが、実は悩む必要なんてないんじゃないかと思えたというか。笑
子どもの頃から詰め込まれた知識、教養。その環境でのみ適用される常識。
それらにがんじがらめになっているパパラギは、知識病である…
「たったひとつ、知識病にかかった人をなおす方法は、忘れること。知識を投げすてることである。」
最近、知らない国に旅に出たいなとおもっていたけど、旅って知識を投げすて -
Posted by ブクログ
西欧社会を原始的な生活をしている人からの視点で説明している一冊。
(以下、本を読んで現代社会に思ったこと)
人間はいつのまにか自然を忘れて自分だけが得するようにとばかり考えてしまうようになったのかもしれない。
世の中は資本主義、拝金主義、物質主義が蔓延っている。
現代はSDGsなどを掲げてはいるが個々人の理解を促進するには至っていないように感じる。
今や70億を超える人間の生き方というのは地球に合っているのだろうか。
きっと隣人を愛するだけでは事足り無い。
自然を愛するまではいかなくとも自然に触れていくことが現代に求められているような気がした。 -
Posted by ブクログ
パパラギは靴を履いているから、足で木に登れないみたいなところが印象に残っている。
他の章もそうだけれど、文明が豊かにしたものと、それによって失ったものに、そしてここまでの文明を築きあげた人類の歴史に思いを馳せる。
別にどちらが良いとか悪いとか、正しいとか間違っているではなくて。自分の当たり前を疑うことは大切な視点だと感じる。というより単純に面白い。
文明社会に生まれたから当たり前に思っているだけのこと…というか結局当たり前なんてないのだと。
宇宙が存在してることすら奇跡だな…とぶっ飛んだけれど、そこまで飛ぶともうこの本とは関係ないか。と我に返った。
ありのままに物事を捉えられるように、受 -
Posted by ブクログ
独特なタイトルの本書だが、パパラギとは南太平洋の島サモアの言葉でヨーロッパ人のことを指すらしい。私たち日本人も含めた現代人のことを指すと思って良いだろう。この本は機械やお金、思考に支配されてしまったそんなパパラギから本当の幸せを知るサモアの人々を守るために語られた演説集であり、パパラギを病的で、悪魔に憑りつかれているとまで言っている。現代人が当たり前だと思っているものが、独特の言葉で表現され、その本質を見抜く表現には軽快ささえ覚える。
読み終わって、もう現代人はサモアの人々の感じる本当の幸せを感じることはできないのかもしれないという寂しさと、それでも少しでも本当の幸せを取り戻せたらなというほん -
Posted by ブクログ
サモアの酋長、ツイアビによるヨーロッパ紀行を通じて感じた文明批判。ツイアビのようなピュアな目でしか見えてこない文明がもたらす暗雲を浮き彫りにしている。
サモアにあるムシロ、ヤシの木などの少ないアイテムに例えて文明が生んだアイテムを語るとこに可笑しみを感じる。数少ないアイテムで約分して語ることができるほど、文明には不要なもので溢れていることを知る。
文明は貯蓄することを知ることで現在より未来を憂うあまり不必要なほど物や金を蓄えるようになる。他に飢えているひとに分けることもせず、自分の所有物を増やし、見張り、不安に心を砕く。
執筆時である1920年から更に狂った方向に文明が進んでいるようにも見受け -
Posted by ブクログ
サモアの酋長ツイアビの文明批判。彼らがキリスト教徒なのが意外だった。白人すなわちパパラギは彼らにキリスト教をもたらし、彼らを救った。しかしパパラギ自身は神を信じてはおらず、金や物や時間を盲目的に信じ、人間至上主義で生きている。サモア人たちはキリスト教がもたらされたことで古くからの偶像崇拝を捨て、大いなる心・神に感謝して平和に豊かに生きられるようになったがパパラギは現世的で金臭い偶像にとらわれ、本当の豊かさや幸せを見失い、サモア人を貧乏だと哀れみながら疲れた顔で生きている。鋭い文明批判だし、ツイアビの語ることはもっともではあるけれど、今このパパラギと同じ価値観に生きる日本で何ができるだろう。まず
-
Posted by ブクログ
白人が作り上げた文明世界こそ進んでいて、島々で暮らすような未開発な土地で暮らす人々こそ遅れている。
一般的な認識はそうだ。
しかし、ツイアビ酋長は全てが魔法のような文明世界を目の当たりにして、その暮らしを羨むどころか、悲観した。
文明、科学が発達したことにより、物質的豊かさは手に入れたが、それと引き換えに精神的豊かさを失った白人世界。
物質的豊かさは無いものの、精神的に豊かに暮らしている未開発な土地に暮らす人々。
本来人間というものは自然の一部である。
自然、神とつながっているのが本来の姿。
そのつながりを自ら断ち切っていく白人の生活を見たツイアビの言葉は、現代社会を生きる僕達に考 -
Posted by ブクログ
サモア人の酋長が、20世紀初頭に、白人についてポリネシア人向けに語った話をドイツ人が翻訳し出版したもの。パパラギとはヨーロピアン(白人)のことをさす。サモア人酋長ツイアビは、ヨーロッパの国々を回り、白人社会の文化と生活様式を正確に理解し、その思い上がった文明社会に対する批判を仲間達に話した。その話に感銘を受けたドイツ人である著者がドイツ語で出版したところ反響が大きく、瞬く間に多数の言語で出版され白人社会に広がったものである。進んだ科学技術に畏怖を感じながらも自然とかけ離れた生活をし、時間にあくせくして、お金に執着する白人を軽蔑する力強い言葉はとても印象に残った。