エーリッヒ・ショイルマンのレビュー一覧
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往来堂書店「D坂文庫 2013夏」からピックアップした一冊。
パパラギ(白人)の文明社会に触れた西サモアの酋長ツイアビが、島の人々に語って聞かせている内容をまとめたもの。現代文明への強烈な批判であり、アンチテーゼだ。でも、小手先ではなく、人間の根源に響く話になっているので、ただ批判に終始しているようには聞こえない。
パパラギは「あの職業は尊いとか卑しいとか、しきりにごたくを並べている」が、そもそも「すべての職業は、それだけでは不完全なものなのだ」と説く。そう考えると何かフッと肩の力が抜ける。それは取りも直さず、現代文明の中でいかに肩に力を入れて生きているか、ということの証拠でもある。少し力を抜 -
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ネタバレ南太平洋の島国サモアの酋長ツイアビが、ヨーロッパをその目で見て自国で語ったとされる100年ほど前の演説集である。
第三者の視点から近代ヨーロッパを見て、徹底的な観察と批評がなされる。
それは衣服や金銭、所有に依存した精神などに始まり、あげく時間そのものや、考えることへと移る。
確かにこれらは現代人が見てもより深刻に捉えられる問題であり、もはや世界的に同一の考え方で染まりつつある。
私たちはこれらの概念や、科学技術が支える進歩を義務とした生活から抜け出すことが容易ではない。100年近く前の話だが、時代は続き不動なものとなっているらしく、今読んでも新鮮な驚きがある。
だが最終章近くでそこまで -
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「パパラギ」ツイアビ
白人の世界で1人の人間の重さを測るのは、気高さでも勇気でも心の輝きでもなく、1日にどれくらいたくさんのお金を作る事ができるか?どのくらいたくさんのお金をしまっているかである。
ギラギラ光り、ピカピカ輝き、しじゅう色目を使って自分を目立たせようとしている白人の物は、体を美しくしたとしても、その目を輝かせた事もその心を強くした事もない。
私たちの言葉に「ラウ」というのがあって、これは「私の」という意味であり、同時に「おまえの」という意味でもある。
白人はいつも早く着く事だけを考えている。早く着けばまた新しい目的に呼ばれる。こうして一生休みなしに駆け抜ける。
同じ仕事 -
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「パパラギ~はじめて文明を見た南海の酋長ツイアビの演説集~」
ウポル島、という。
オーストラリアの右上あたりに、サモアという地域があります。島々です。
その中の一つが、「ウポル島」。小さな島です。
少なくとも、この本が書かれたころは、大らかな原始共産制の暮しだったそうです。
1910年代のことです。
その島の酋長のツイアビという人が、いました。
いろいろあって、ツイアビさんは、ドイツに留学したそうです。
ツイアビさんというのは、酋長だったそうですから、ともあれ大人ではあったのでしょう。
さて、そのツイアビさんが、故郷ウポル島の人々に、
「ヨーロッパの人たちは、こんな暮らしをしているんだ -
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本書は、ドイツ人エーリッヒ・ショイルマンにより1920年に発表され、その後1977年にドイツで復刊された原書を、1981年に日本語訳、2009年に文庫にて再刊されたものである。
著者は、まえがきで「この話は、ヨーロッパ大陸の進んだ文明から自分を区別し、解放しようとする原始の人びとの呼びかけであり、それ以外のなにものでもない」、「世界大戦によって、私たちヨーロッパ人は、人間そのものに対する不信を持つにいたった。今こそもう一度、物ごとを調べ直し、私たちの文明は、果たして本当に私たちを理想へ向かわせるものであるかどうか考え直さなければならない」と語っているが、第一次大戦終戦直後のヨーロッパにあって、