ドン・ウィンズロウのレビュー一覧
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ドン・ウィンズロウ『陽炎の市』ハーパーBOOKS。
『業火の市』に続く、ダニー・ライアン三部作の第2弾。
確か『業火の市』の巻末にはこの第2弾の冒頭が『虚飾の市』というタイトルで収録されていたが、『陽炎の市』というタイトルに変更されたようだ。
ドン・ウィンズロウらしいハードでストレートなギャング小説。圧倒的な面白さ。
一人の女性を巡るマフィア同士の抗争に巻き込まれたダニー・ライアンが仲間と共に自由を求め、逃亡し、家族のために全うな人生を送ろうともがき苦しむ。やっと掴んだと思った幸せな時は砂漠の陽炎の如く消えていくが、それでもダニーは諦めずに安息の時を追い求める。
プロローグ。199 -
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生産・流通を担っている麻薬カルテルを描いてきた著者が、一大市場であるニューヨークの麻薬市場を書いた作品が本書だ。麻薬を取り締まる警察官の活躍が描かれるが、蛇の道は蛇で、警察官の守る正義は一筋縄ではない。
知らず知らずに正義を踏み外していく刑事たちは、なぜ踏みとどまれなかったのか。それは一歩一歩、少しづつ踏み外していったからだ。ただ、彼らの胸の内にあふれる正義感は熱くあふれている。
冒頭で留置されている刑事が書かれ、過去にさかのぼり正義から逸脱していく様が語られる。終盤、伏線を回収するように逸脱の背景が書かれ、刑事たちの哀愁が立ち昇るように感じられる。
市警察、市行政、連邦捜査局、 -
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読後の興奮冷めやらず、すぐにレビューが書けないほど、この本のカオスにやられた。そしていつもながら、ウィンズロウの文章にやられた。ともかくキックの強い作品なのだ。いつも。キャラクターたちの運命が神の視点で書かれてゆく悲喜こもごもの人間絵図。愚かで、強欲で、弱くて、それでも必死に生きてゆき、時に美しく、明るく、悲しく、それぞれの生を楽しんでいながら、運命の残酷に翻弄されざるを得ない男たち、女たち。
この初夏、この本の出る少し前の頃、大画面TVに新調した我が家で、ぼくはコーエン兄弟のTVドラマ『ファーゴ/FARGO』シリーズ4作に、遅まきながらはまっていた。ユーモアと残酷を取り混ぜながらの人間 -
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ドン・ウィンズロウ『業火の市』ハーパーBOOKS。
新しい3部作の第1弾。
ドン・ウィンズロウらしいハードでストレートなギャング小説という感じだ。角川文庫の『犬の力』とか『フランキー・マシーンの冬』に雰囲気は近いだろうか。まだ第1弾なので壮大な物語の発端に過ぎないのだろうが、大いに期待出来そうだ。
1986年のアメリカ東海岸の通称ドッグタウンを仕切るアイルランド系マフィアのファミリーの中で、ダニーは昔からの仲間と共に平穏に暮らしていた。ダニーに不満があるとすれば、ファミリーのドンの娘と結婚しながら地位が上がらないことだった。
ある日、ダニーが所属するファミリーの一員がイタリア系マフィア -
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小説に圧倒されるというのはどういうことを言うのだろう。かつてドストエフスキーやトルストイの大長編作品群にぼくは確実に圧倒された。加賀乙彦の『宣告』に圧倒された。五味川純平の『戦争と人間』全9巻に圧倒された。船戸与一の『猛き箱舟』に、高村薫の『マークスの山』に、ジェイムズ・エルロイのLA三部作『ブラックダリア』『LAコンフィデンシャル』『ホワイトジャズ』に圧倒された。劇画でいえば白戸三平の『カムイ伝』に圧倒された。手塚治虫の『火の鳥』に圧倒された。そういう圧倒的なパワーに打ち倒されるような感覚を失って久しい。敢えて言えばアンデシュ・ルースルンドの『熊と踊れ』二部作がその類いだったろうか。
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小説に圧倒されるというのはどういうことを言うのだろう。かつてドストエフスキーやトルストイの大長編作品群にぼくは確実に圧倒された。加賀乙彦の『宣告』に圧倒された。五味川純平の『戦争と人間』全9巻に圧倒された。船戸与一の『猛き箱舟』に、高村薫の『マークスの山』に、ジェイムズ・エルロイのLA三部作『ブラックダリア』『LAコンフィデンシャル』『ホワイトジャズ』に圧倒された。劇画でいえば白戸三平の『カムイ伝』に圧倒された。手塚治虫の『火の鳥』に圧倒された。そういう圧倒的なパワーに打ち倒されるような感覚を失って久しい。敢えて言えばアンデシュ・ルースルンドの『熊と踊れ』二部作がその類いだったろうか。
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『犬の力』、『ザ・カルテル』の続編。前2作と比べて激しい戦闘シーンが少なめの上巻。それでも駆け引きや計画を練るところなんかは緊張感がある。麻薬戦争の終わりが見えないアート・ケラーの日々。現場に戻りカルテルを潰そうとする計画。今作も群像劇でたくさんの人たちのことが語られる。それぞれの思惑、欲がよりわかる。静かななかにも張り詰めたものがあり徐々に膨れ上がっていく。そして下巻に入り物語は加速していく。麻薬を通してアメリカの暗部がこれでもかと描かれ権力のために麻薬を利用し金を得ようとする。ケラー対アメリカのような構図。一人の人間が麻薬に溺れていくさま、悪に染まっていくさまには絶望を感じる。ラスト近くに
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ドン・ウィンズロウ『ザ・ボーダー 下』ハーパーBOOKS。
『犬の力』『ザ・カルテル』に続くシリーズ第3弾。完結編に相応しく、上下巻で1,500ページを超える超大作。読み応えが充分過ぎるほどある。
壮絶、凄惨極まるメキシコの麻薬戦争はアメリカ国内へも連鎖する。このメキシコ麻薬戦争三部作を読むと、メキシコに対するイメージが大きく変わってしまう。また、アメリカがメキシコとの国境に壁を作ったのは麻薬の流入防止が理由の一つであろうとも考えたりする。
腐敗したアメリカ政財界とメキシコの麻薬カルテルとが結び付き、アート・ケラーの命を賭けた麻薬カルテル撲滅の闘いは無駄となる。アメリカからの麻薬資金の流 -
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ドン・ウィンズロウ『ザ・ボーダー 上』ハーパーBOOKS。
『犬の力』『ザ・カルテル』に続くシリーズ第3弾。完結編。 上下巻で1,500ページを超える超大作。
まるでノンフィクションのような麻薬戦争の実態。面白い。冒頭から麻薬の利権を巡る血煙と硝煙が漂う暴力と殺戮の世界が描かれる。人間の欲望は果てしなく、留まるところを知らない快楽への欲求が愚かな人間たちを麻薬の世界へと向かわせるのだろう。
メキシコの麻薬戦争はアート・ケラーが望む結果とはならず、アメリカへのヘロインの流入は止まらない。麻薬の利権を巡り、次々と新たな麻薬カルテルの支配者が生まれていく。麻薬取締局の局長に就任したアート・ケラ