ドン・ウィンズロウのレビュー一覧

  • 壊れた世界の者たちよ

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    「世界は壊れた場所だ、などとエヴァにわざわざ教える必要はない」 “You ain’t gotta tell Eva the world is a broken place”で始まる「壊れた世界の者たちよ」はニューオリンズの特捜部麻薬課の警察官が、麻薬を積んだボートを襲撃し、その報復で弟ダニーを虐殺した麻薬密輸業者オスカー・ディアスに心が壊れた兄のジミーが凄絶な復讐をする物語。バイオレンスの裏で二人の兄弟の母親で同じ警察で働き仲間の警察官を「うちの子たち」と呼ぶエヴァの母性愛と職務で危険な「壊れた世界」に送り出す葛藤が哀しい。警察官としてのプライド、悲しみ、怒りと憎しみの心が織り込まれた作品。

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    2025年04月20日
  • 陽炎の市

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    シリーズ2作目。
    命からがら逃げだしたダニー一派が、サバイバルから一転する。
    映画「ゴッドファーザー」の内幕を描くようなハリウッドの虚々実々が描かれており、自身映画化作品があるドン・ウィンズロウだけに、ウィットとブラックユーモアが効いた文章でハリウッドが描きこまれる。
    映画ファンだと、実名もどんどん出てくるので実に楽しめる。
    ただ、「犬の力」などの3部作を期待すると、趣がだいぶ違って中だるみに感じるかもしれない。
    鮮やかな出だしで始まり、ラストも上手くつながっていて巧みなプロットに多彩なキャラの絡み合いを楽しめる。

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    2025年03月25日
  • 業火の市

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    「ゴッドファーザー」をジャンル分けしにくいように、この作品もジャンル分けしにくい。

    NYの外れ、狭いエリアで共存していたアイルランド系ギャングとイタリア系ギャングの友情と反目、抗争を描いている。
    そのきっかけが一人の女性から、というところが話のポイント。麻薬でも金でもない。そこが話のサイズを象徴しており、従来の「犬の力」などとは大きく違う。

    長く共存していたことから、2代目達は小さい頃から一緒に育った仲間・知人で会ったにもかかわらず、やがてそれぞれのコミュニティに属するギャング(と言っても日本の小さな任侠ヤクザという感じ)になって、互いに望むことなく闘いに身を投じていくさまがリアルで、切な

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    2025年03月08日
  • 終の市

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    ドンウインズロウ最後の作品。
    後半のたたみかけるような展開、疾走感。ラストよかったけど、終わってほしくなかったなあ。
    今作ではダニーの仲間ではネッド・イーガン、敵役ではクリス・バルンボがクールでカッコいい。ダニーの母親マデリーンもいいんだよな。
    ウインズロウ復帰してくれないかなあ。

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    2025年01月02日
  • ダ・フォース 下

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    「一本の通りを歩いているだけで五つの言語が聞こえ、六つの文化のにおいが漂い、七つの音楽が聞こえ、百もの人種とすれちがい、千もの物語が存在する。そのすべてがニューヨークだ。」

    「そうしておまえは略奪者になった。純然たる犯罪者に。それでも自分は犯罪者じゃないと自分に言い聞かせた。奪う相手は銀行ではなく、ヤクの売人なんだから。ヤクを奪うのに人を殺したことはないんだから、と。」

    上巻はニューヨーク、マンハッタン、その街、“City”の話。街の名所やそこにあるカルチャー、エピソード、ヒーロー刑事、あるいは貧富の差や人種差別、ドラッグ、そして警察、市政の汚職。綺麗な部分も汚れてみえる部分もどちらも詳細

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    2024年12月27日
  • 終の市

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     主人公ダニー・ライアンがラスヴェガスで実業家として成功した姿から最終章は始まる。

     ラスヴェガスでカジノ事業を展開する実業家にマフィアの影は禁忌だが、ダニーがマフィア出身であることが色々なほころびから見えてくる。また、ライバルのホテル王ワインガードのマフィアとの関係も露になる。ライバル関係は抗争を呼び、ダニーの古くからの仲間や、ビジネスパートナーも犠牲になる。第2部の陽炎の市では、なりを潜めていた暴力要素が爆発だ。

     最終章ではダニーの子供イアンが事業を引継ぎ、発展させている様子が描かれる。世代交代がマフィアとの関係をロンダリングしたかのようだ。

     ラスヴェガスでのカジノビジネスの、公

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    2024年11月20日
  • 業火の市

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     アメリカ東海岸の港湾都市を仕切るアイルランド系マフィアとイタリア系マフィアの対立を描いた小説で、3部作の第1作にあたる。作者のドン・ウインズロウが本シリーズをもって筆を絶つ宣言をしているので、心して読まねばと意気込むが、巻頭の登場人物一覧表と、人物相関図を見ると、憶えきれるかどうか不安が沸き起こる。

     不安は杞憂に終わり、読み始めこそ相関図を確認するが、キャラクターが立っているので自然に全体が把握できる。アイルランド系マフィアの一人が主人公となり、悪徳FBI捜査官と組んだイタリア系マフィアに追われる形で、彼らのシマである東海岸の港湾都市を追われることになる顛末が魅力的に描かれている。いろい

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    2024年09月28日
  • 終の市

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    CL 2024.8.15-2024.8.18
    ダニー•ライアン三部作の完結編。
    まっとうでない世界でまっとうに生きようとしたダニー•ライアンの一代記。
    どれほど成功して富を得ようとも、ダニーをまとう哀しさはなくなることはなく、どこか切ない。
    ジミーやアルター•ボーイズたちが集まってきてからの後半が断然面白い。
    ドン•ウィンズロウ最後の作品。残念すぎる。ある書評家が書いていたようにいつだって戻ってきてくれていいんだよ。

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    2024年08月18日
  • 終の市

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    三部作、
    やめられなくて短期間で読みました。

    すっきりと品がある文体読み易く、
    殘酷な描写も
    相殺されてしまうかも。

    あとストーリーに夢があるのがいいですね。

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    2024年07月21日
  • 業火の市

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    長年均衡を保っていた関係が、些細なこと(あるいは1人の身勝手な行動)で急激に崩れ去る。そんなマフィアの物語です。主人公は今のところ何をやっても上手くいってないですが、第二部以降の巻き返しに期待します!

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    2024年05月27日
  • 業火の市

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    ウィンズロウ新三部作。

    ロードアイランドのアイルランド系マフィアとイタリア系マフィアはそれぞれの縄張りをもって、共存していた。

    しかし、一人の女性が現れたことにより共存が崩れていく。

    たった一人の女性で過去からの共存が崩れるのか?とも思うが、そこはウィンズロウのうまいところ。ストーリーを破綻させることなく、現実味を帯びた展開で読む人を腹落ちさせる。

    ネタバレになるので、多くは語らないが今までのマフィア物長編とは違うタッチで進むのも面白い。

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    2024年05月24日
  • 陽炎の市

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    「業火の市(CITY ON FIRE)」での抗争に敗れて西へ向かったダニー・ライアンの物語の第2弾(「陽炎の市(CITY  OF DREAMS)。西には”Dreams”があったが陽炎のように....。
    映画的で(ハリウッドが舞台の1つ)、スピード感にあふれており、さすがのウインズロウ&田口俊樹の世界でした。ダニーの部下のアルターボーイズ、ネッド・イーガン、親友マック、母親マデリーン、ハリウッド女優ダイアン....。「犬の力」...シリーズのように上下巻ではないので、もう楽しみが終わってしまう...と思ってしまいました。
    来夏刊行予定の「荒廃の市(CITY IN RUINS)」が待ち遠しいですが

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    2023年11月19日
  • 陽炎の市

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    CL 2023.8.25-2023.8.28
    中盤万事うまく行き始めたダニーを信じてはいなかったけど、ラストは捻りもあり、よかった。
    次作「荒廃の市」が楽しみだけど、ドン•ウィンズロウがそこで引退するのはやめてほしい。

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    2023年08月28日
  • 陽炎の市

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    すごく読ませるし面白いけど、待ってたモノとちょっと違った。
    おまけに巻末についてる次回作の冒頭は何なんだ!!
    すっかり表舞台の話になっちゃうの??

    いやあ、ヒリヒリしたギャング同士の戦争が読めるもんだと思ってたからね。
    メキシコのカルテルがいつハリウッドに乗り込んで来るのかと思ったら全然だったな。。。
    かと思ったら変なヒッピーからは一発でつながるし、こんなん笑わせる気か!

    まあ3巻も出たら買うだろうけど。

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    2023年08月16日
  • 壊れた世界の者たちよ

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    短編ではなく6篇の中編集。なんと過去作品のキャラが不意に出てきたりする作品があり、嬉しい驚き。
    やはり最初の作品の「壊れた世界の者たちよ」は、警察の麻薬班とマフィアとの闘いで、復讐の応酬は暴走し止まらない。まさに”壊れた世界の者たち”の話しで。

    「サンディエゴ動物園」は、チンパンジーの脱走から始まる話で、コミカルで楽しい作品。

    他ももちろんよいのだが、最後の「ラスト・ライド」も逸品。国境警備隊と不法入国者とそれにまつわるトランプのルール変更のアメリカの苦悩の話し。最後が切ないね。

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    2023年07月18日
  • 業火の市

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    ネタバレ

    CL 2022.9.4-2022.9.6
    アイルランド系マフィアとイタリア系マフィアの抗争。復讐に次ぐ復讐。負の連鎖。
    そんな暴力の最中にあっても人は人を愛する。
    夫や親友や愛する人を殺されれば深く深く傷つき哀しむ。家族や仲間を無条件に愛して守ろうとする。

    ギャングも紙おむつや粉ミルクを買うお金に苦労するし、まして病気には歯が立たない。

    パットもマーヴィンも、ほかにもゴロゴロ死んで、ダニーが死なないのが奇跡みたいに思えてくる。

    3部作だということで、次作が楽しみだけど、どれくらい覚えていられるかが問題。

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    2022年09月06日
  • 業火の市

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    86年、ロードアイランド州プロヴィデンスはアイルランド系とイタリア系マフィアが仕切っていた。前者マーフィー家の娘と結婚したダニーが主役。前者の厄介者リアムが後者モレッティ家の息子の女に手を出す。諸悪の根源はここから始まった。

    面白面白かった。読みやすい&先が読めない。「ゴッドファーザー」をまた観たくなった。

    「 犬の力」は途中脱落した。短文を連ねる叙事詩的描写が合わなかったから。しかし、もう一度読むと違うかも。

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    2022年07月26日
  • 壊れた世界の者たちよ

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    古本屋で購入

    短編集といいながら、ブックカバーを選ぶような分厚い本。
    一編が150ページ以上の短編を6作で編纂しており、トータルは700ページを超える。

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    2022年07月12日
  • ザ・ボーダー 上

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    40年に及ぶ麻薬戦争3部作完結編の上巻。
    作者畢生の大作である。
    犬の力から読み始めて15年が経った。
    評価云々関係なし。勿論面白い。
    絶対おすすめです。

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    2021年10月24日
  • ザ・ボーダー 下

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     著者が20年をかけて表現した世界は、暴力に満ちていた。「犬の力」、「ザ・カルテル」では麻薬供給元のメキシコの情勢を、最終章の「ザ・ボーダー」では、顧客となるアメリカの情勢が描かれている。

     密売人や中毒者も描かれているが、その背景に筆は至り、固定化された階級社会であったり、麻薬をしのぎとして利用する公職者も描かれている。トランプ前大統領がモデルの人物も登場する。

     主人公の公聴会での証言をクライマックスに物語は完結する。読み応え十分、現実の一つを見せつけられたシリーズでした

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    2021年10月17日