武田友宏のレビュー一覧
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角川ソフィア文庫の『ビギナーズ・クラシックス』シリーズ。
原文(全文)、現代語訳、解説の3点セットで掲載されており、これ一冊で『方丈記』がまるっとわかります。
『方丈記』を読み始めるあたっての最初の一冊としておすすめです。
鴨長明・『方丈記』・無常観、その程度の知識しかなかった私が初めてこの本を手にしたのは20歳の時ですが、私のものの見方やこころのありようはこの書によって明確に形作られたと認識しており、今なお人生のバイブルというべき書になっています。
『方丈記』は大きく2部構成。
前半は、青年期の長明を襲った火災、風災、遷都、飢饉、地震と、それに伴う人の命と住まいの儚さを描いています。
後 -
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古典を専門にしている先生が、『方丈記』を読めるくらいが、標準的な古典文法を理解できているレベルだという話をしていたのを思い出して、高校生ぶりに読んだ。福原遷都の話になる前、大火事、辻風、飢饉のくだりまでの文体が特にかっこいい。結末はすっかり忘れていた。念仏を唱えて終わるんだったか。
すごくアホな感想かもしれないけれど、方丈の家の自慢話のところが長いのは、後で自分の住居への執着を自己批判するための伏線であるというくだり、解説者の人の解説のテンションにすっかり騙された。解説者の人は、鴨長明を普通に本当に批判しているんだと思った。解説も伏線だったのね。
すっかり古典から離れていたので忘れていたが、 -
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ネタバレ著者、鴨長明。1155生~1215没ということは、平安末期から鎌倉時代前半に生きた人物であり、60年間の人生における社会の様相などをルポルタージュした作品である。
当時、世の中の様相は自然災害が頻発しており、長明が記している災害だけでも、大火、竜巻、飢饉、大地震等
と、被災した民衆は多数に及び、悲惨な光景を嫌でも目の当たりにしていたようである。
しかしながら、著者は一人暮らしであったほか、被災から守られ、むしろ客観的に、世の中の様子をとらえていたようである。現在でいうルポライター、またはジャーナリスト的な存在だったかもしれない。
この「方丈記」、まずは鴨長明の「無常観」から始まり、最後は -
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「冬は雪をあはれぶ。積もり消ゆるさま、罪障にたとへつべし。」p.120
どこかに出典がありそうでもありますが、この例えは好きです。
罪は自然に消えず、行動で雪ぐしかないという固定観念があったのですが、雪に例えるなら時間と共に消えてしまうものになります。
それは方丈の庵での生活の清々しさが洗い流してくれるからということなのでしょう。
鴨長明の方丈自慢について解説文は批判的ですが、私としては鴨長明に憧れてしまうので、大目に見て欲しいですね。
ビギナーズクラシックスは大抵抜粋ですが、方丈記は短いテクストなので全文訳です。
シリーズの体裁上、語釈がないのですが、その分意訳多め、解説長め、図版多めにな -
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大宅世継と、夏山繁樹という二人の語り手についての解説から始まる。
世継の名前はいかにもな感じがしていたけれど、皇統を語る役回りであり、光孝天皇后斑子女王に仕えていた設定もそのことと関わっているという説明に納得。
夏山繁樹は、歌語「夏山の繁き」からきている、その時々の繁栄を表す名であり、ゆえに藤原忠平に仕えていた設定であるというのは、本書で初めて知った。
雉がご馳走であったことの解説が出てきて、時康親王(のちの光孝天皇)が、配膳係が主賓の膳に雉足がなく、親王の膳からとっさに移すというミスを隠したエピソードがよく理解できた。
望むらくは、もっと近い箇所で解説が出ていたら、と思う。
せっかく解説入