新城道彦のレビュー一覧
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帝国日本に支配された地域の元為政者について,どれだけの知識を持っているかと言われると,恥ずかしながらあまり持ち合わせていない。「満洲国」においては,宣統帝溥儀の名が,弟溥傑やその妻である『流転の王妃』浩とともによく知られている。
かたや朝鮮王朝(大韓帝国)においては,近代日本史で大院君や閔妃を知るだけかもしれない。閔妃は,誰の妃なのか,そこまで掘り下げて教えてくれた日本史の高校教師はいただろうか?『映像の世紀』第11集には,幼少期の李垠が伊藤博文とともに数秒登場するが,その後彼がニュースになるのは,梨本宮方子と結婚する程度であったかもしれない。あるいは,赤坂プリンスホテルの旧館(現在の赤坂 -
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[「家」と「国」の間で]韓国併合に際し、王公族という名目で新たに「準皇族」として帝国日本の枠組みに取り込まれた、大韓の皇帝たちの歩みをまとめた作品。現代から振り返るとあまりに「微妙な」立ち位置にあった一族の歴史や考え方に光を当て、日本と朝鮮の歴史に新たな視点をもたらしてくれる作品です。著者は、九州大学韓国研究センターの講師などを歴任された新城道彦。
関心の置き所が絶妙といえる作品。王公族というあまり知られていない人々に焦点を当てることで、これまで明らかにされてこなかった事実だけでなく、当時の物の見方まで紹介してくれている点が素晴らしい。王公族の処遇や厚遇が、冊封体制と近代国家システムの奇妙 -
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韓国ドラマでは分からない「歴史の深層」と裏表紙に書いてある。
編集の方が描かれたんではないかと思うが、本当に、韓国ドラマでしかあの国を知らない人が読んだら、死んじゃうんじゃないか。
粛清とテロとクーデターの応酬のオンパレード。
「道徳的正当性」に基づいて、我こそ正義反するのは悪の二分で、故に相手には何をしていいと言う潔さの反面、やってることは半径3メートルの政治と利権と権力への飢え。
ヤバくなったら外国に助けを乞い、そのお陰で一息つくと、その隙に急にオレ様オラオラに変わる。
地勢的にすんごい面倒なところであっちこっちに小突き回されて来たのは本当に「気の毒」で逞しいと思うのだが、平気でその周辺 -
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愛新覚羅家のことは何冊か書籍を読んだし有名過ぎる映画も見たが朝鮮王朝のことは王朝があったことすら認識になかった。
閔妃事件を日本史で習ったので朝鮮に皇后がいることは知っていたはずなのだが。
当時は近代史に興味がほとんどなかったのでその時印象に残らなかったのはともかく、大人になってからは日本や中国の近代史の書籍を読んだ中で朝鮮王朝に触れる機会がなかったことに驚いた。
とても面白かった。
併合前後の朝鮮皇室への財政的なアレコレと併合への意識との関係が特に印象深い。
「帝国日本への歪んだ忠誠」言い得て妙だと思う。日本に限らず朝鮮半島の苦渋の歴史を表している。
文献も面白そうなものが並んでいるので -
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この本は複雑な感情を抱いてしまう本だ。類書と違って韓国語が出来る人が書いているので本田節子が「朝鮮王朝最後の皇太子妃」で紹介した閔甲完なる自称「英王の元婚約者」の著書を訪韓した際に初めて読んだらしく「天皇の韓国併合」では本田節子が書いたとおりに評価したのにやんわりと閔が詐欺師と分かるように書いている。一方、李鍝公と朴賛珠の成婚は「当局の意に添う」形で成立したと見做しているらしく?「都合の悪い」からか「木戸幸一日記」前巻のような以前から知られていて市販されている史料が参考文献目録すら出て来ない。李鍝公と朴賛珠が昭和8年に勅許を得ないで婚約の儀を行ったという記述があるのが矛盾するので言及しないの
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韓国併合後、李朝の王や係累を日本は皇族・華族に準じた王公族という待遇で遇じた。かなりのコストをかけて彼らを遇じたのは、併合による朝鮮の人たちの懐柔という面も当然あった。王公族となった人たちも世代により受け取り方が違ったという。高宗太王や純宗王たちとは、その子供たちとは違っていたという。併合後に生まれた李垠や李鍵、李ぐなどは、皇族の義務を果たそうとし、軍務に服したと言う。終戦でその身分も変わり、韓国は直ぐには国籍を認めなかったから、かなり辛い戦後の生活を送った者もいたようである。林真理子の「李王朝の縁談」を読んで興味がありこの本を読んだ。日本も王公族の待遇には随分と気を使って対応したようだが、当
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旧大韓帝国の皇帝一族は、日本の韓国併合後、「準皇族」としての「王公族」という身分となった。本書は、これまであまり目を向けられてこなかった王公族に焦点を当て、日韓近代史に迫ろうとしている。王公族という身分の創設から消滅までの歴史的経緯をまとめるとともに、王公族の各メンバーの人物像も詳らかにしている。センシティブなテーマだが、客観的・中立的な記述がなされているのも好印象。
朝鮮王公族については、その存在は知っていたものの、どのような待遇を受けていたのか、どのようなメンバーがいたのか等についてはほとんど知らなかったので、本書の内容は非常に興味深かった。日本側が、韓国併合、その後の植民地統治にあたって -
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14世紀終わりの李成桂による朝鮮王朝創始から、20世紀の朝鮮戦争までを扱った朝鮮通史。
日本の中等教育における「世界史」で「朝鮮」が採りあげられるのはそれこそ朝鮮戦争くらいで、「日本史」においても秀吉の朝鮮出兵、江戸時代の朝鮮通信使、明治期の征韓論や韓国併合などが部分的に登場するくらいだろう。それ故、このように朝鮮半島を主体にして体系的に歴史を外観するのは新鮮な知的体験ではあった。
本著から受ける印象は、「おわりに」において著者が自ら記している以下の引用部が的確に言い当てている。
(以下引用)
朝鮮半島は、まるで二匹の蛇が絡み付くケーリュケイオン(ギリシア神話の神ヘルメスが持つ杖)のよう