ミロラド・パヴィチのレビュー一覧
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読むのに1ヶ月近くかかってしまいましたが,なんか,すごいものを読んでしまった.
「事典」のタイトルの通り,五十音順で見出しが並べられているのだが,それぞれは幻想短編で,全部読むと全容がわかるという構成.しかも事典なので,各国版で並びが違うはずなのだが,それでも全体が一冊の書として成り立つ,という不思議な構成.ああ,この不可思議さは1/100も伝えられていないんだろうなあ.
自分も混乱しているので,巻末の索引を使いながら再読する必要がありそうだ.
てっきりハザールは著者の創造の産物かと思っていたら,訳者あとがきの冒頭が「ハザールの首都発見」で,「?????」となる.実はハザールはかつて実在し,ユ -
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再読。一気読みするとミステリーとしての構造がはっきりと見え、初読時よりエンタメ小説らしく思えた。読み終えてからも各項目の読み直すのがまた楽しい。
前回はあまりに東欧について無知だったが、マイリンクの『ゴーレム』やストーカー『ドラキュラ』の想像力が生まれてくる風土を頭に入れて読み返せば、惜しげも無く詰め込まれた奇譚の豊かさにクラクラする。アテーと鏡の話、人生の一日を閉じ込めた卵の話、天使と契約して聖画を描く悪魔の話、亀の甲羅に文字を彫ってやりとりする秘密の恋人たちの話など。特に妖婦エフロシニアに捧げたドラキュラオマージュの長詩は美しい。
また一気読みしてキリスト教(ギリシャ正教)、イスラーム、ユ -
Posted by ブクログ
ネタバレ一ヵ月ほどかけてじっくり読み切った。
「石蹴り遊び」は子供の頃に読んだ本遊びだが、本書は事典の体裁。
ただし単なる思い付きや目くらましではない。
同じ唯一神を源流とする三つの宗教がいわば視点を成すので、並列することで大いなる相対主義を宣言するもの、
といえば仰々しいが、対立を笑い飛ばしてしまえる機構になっている。
実際各項目内の奇想を辿るだけでも愉しいし、色違いで比較すればするほどに切り口の違いが面白い。美味しい。
さらに時代を貫く生まれ変わりの物語はロマンチックでありミステリアスでありリリカルでもある。
ぜんぜん凶悪でも陰惨でもない悪魔の存在が素敵。
まえがき、付属文書、あとがきで全体像を -
Posted by ブクログ
歴史上実在した民族ハザールに関する事典——の体裁をとった、奇想天外な小説。どこから読み始めても、途中で読み終えても、何語に翻訳されても成立するというポストモダン的な構成。
各項目はキリスト教/イスラーム/ユダヤ教の三つの観点から解説されているが、相互に補完するようでなぜか食い違う内容。奇人変人どもによる奇談珍談の数々を読み進めるうちに、夢と現実/虚構と史実といった区別だけでなく、前後・上下・左右といった方向感覚までも惑わされるよう。あらゆる決まり事や価値観など相対的、こだわるなんて馬鹿らしいぞ——作者のいたずらっぽく笑う顔が思い浮かぶ。小説でとことん遊んでいるようだ。 -
Posted by ブクログ
7-10世紀にコーカサス地方に実在したハザール国についての、架空の事典という形式を取ったいわば事典小説。
ハザール国の国教を巡って争ったキリスト教、イスラム教、ユダヤ教それぞれの事典が掲載されており、各々の視点で、9世紀の国教を巡る論争、17世紀の事典成立のエピソード、20世紀のハザール研究について記す。
どの説が真実かはもちろん藪の中状態、さらにハザールの古の教えが夢と深い関わりがある設定のため、文章が良く言えば幻想的、言い方を変えれば非論理的なので何がなんだかわからなくなってくる。
しかし、事典の各項目が幻想的/非論理的で様々な物事を扱っているため、現代美術の美術展に迷い込んだような