「ドロへドロ」は、魔法が日常的に使える異世界の物語である。
この世界では、魔法使いが住む世界と、扉の向こうの「ホール」という二つの世界がある。
魔法使いは扉を使ってホールに行くことができるが、ホールの住人は魔法が使えないので魔法使いの世界に行くことはできない。ホールの住人は魔法の練習台にされており、
...続きを読む常に魔法使いに対する恐怖を抱きながら生活しているのである。
主人公は、ホールに住むカイマンという青年。彼は魔法被害者(魔法使いの練習台にされた人間のこと)で、魔法によって頭部を爬虫類にされてしまい、しかも魔法をかけられる前の記憶がない。
カイマンが魔法使い狩りを行い、本当の顔と記憶を取り戻すために自分に魔法をかけた魔法使いを探す、というのが主なストーリーの軸となっている。
…ごちゃごちゃと書いたが、このような説明では全く表せないほどドロへドロの世界観は圧倒的で、一言で魔法使いと言っても通常イメージする姿とはかけ離れている。
一見「ホールVS魔法使い」で「善VS悪」というような図式に見えるが、物語が進むにつれ、二つの世界はどんどん交錯していき人間関係も謎も複雑化していく。
この物語、本当の意味での悪人が出てこない。カイマンと敵対している魔法使い側の人たちも、憎めないどころかだんだん主人公サイドより健全に見えてくる始末。敵味方がはっきり分かれておらず、今後ストーリーがどのように展開していくか予想がつかないのである。ファンタジー、ミステリーの両面からお勧めできる傑作。
まぁ、スプラッタが苦手な人は読みたくないと思うかもしれない漫画である。
確かに、「こいつら痛覚ないのか?」と聞きたくなるほど、首は飛ぶは内臓は出るわ爆発するわで、戦闘に入るたびに恐ろしい目にあっている。(しかもなぜか絶対に死なない)
でもそれが不思議と全くグロく見えないのは、絵柄のせいもあるのかもしれないが、ストーリーの絶妙なギャグの効果ではないだろうか。意外な魅力であるが、この漫画、めちゃくちゃギャグが面白い。ほのぼのと野球やらパイ屋出店競争やらやってる間にどんどん話が進んでいく、殺伐とほのぼのが共存した不思議な漫画である。
内臓が半分飛び出てようがなぜかほのぼのしてしまう、そこらへんの不思議な感覚は読んで実感して頂きたい。