甲斐萬里江のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
今巻は、シリーズの中でも最大の政治的陰謀。
それに加えて、アイルランドに古くからある精霊信仰の根強さが重要なテーマになっていて、読みごたえがあった。
ここらへん、日本人には理解しやすいが、この手の土着の信仰を「異端」として排除するのがローマカトリックの真骨頂なので、エイダルフが戸惑うのも当然だけど、今巻ではそういう小さな齟齬が二人の間にちらほら見えて、コンビネーションがいまいち、というのももどかしかった。
最後は両人とも、背中がかゆくなるほど鈍すぎだし!お互いに、もっとストレートに話そうよ!と、大きなお世話を焼きたくなる。
超人的なまでに何でもできる完璧かつ独善的なヒロイン、フィデルマも、自分の色恋沙汰はニガテなのね、と思うと、少しかわいらしい(笑)けど、このコンビが見られなくなるのはイヤだ。
今後のモアン王国の立て直し方とか、犯人の処罰とか、せっかく法廷劇の形式になっているのだから、最後まできちんと決着をつけるところまで書いてほしかった。 -
Posted by ブクログ
このシリーズの最高に面白いところは、馴染みのない古代アイルランドと、当時のキリスト教についてうまく解説しつつ、その「ほとんど異世界」である舞台にすんなり読者を連れて行ってくれるところだと思う。
作者は本職のアイランド歴史学者だそうだけれども、だからといって、蘊蓄が語られすぎることもなく、登場するキャラクターもフィデルマと、ワトスン役のエイダルフ修道士はじめ、魅力的なキャラクターばかりだ。
今回もモアン王国を襲った未曾有の危機に際して、ほとんど孤軍奮闘するフィデルマとエイダルフ、筋立ては複雑で、読者もミスリードされまくる。
しかし、あえて難を言えば、いくつかの仕掛けはわりと最初の内に見えてしまうということと、ラストはせっかく法廷劇のしつらえであるのに、実際にはすぐさまいつもの、フィデルマによる「名探偵みんな集めてさてと言い」になってしまうところ。
現国の弁護人ソラムがあくの強いキャラクターであるだけに、法廷劇らしい部分がとても短かったのは残念だ。
そして、「真犯人」がどのように処断されたのかについても曖昧なまま。これは読みようによっては竜頭蛇尾とも感じられる。 -
Posted by ブクログ
古代アイルランドの王国の王女にして、上級裁判官兼弁護士「キルデアのフィデルマ」の名推理を描く短編集。古代アイルランドの風俗を背景としながら、発生する驚愕事件をフィデルマが見事に解決していくのが楽しい。
主役のフィデルマは、上から目線の知的な美人という人物設定で(笑)、最初は少しとっつきにくかったのであるが、わっさわっさと奇妙な事件を速攻解決していくので、逆に頼もしさを感じました。(笑)物語の進展も、奇妙な謎の提示→論理立てた回答という流れで、特に奇をてらった解決でもないのであっさり感もあるのだが、短編集ということでこれはこれで良いと思いました。
自分として良かったのは、旅路の旅館で遭遇する幽霊話の「旅籠の幽霊」と、封印されているはずの大王古墳の中から声が聞こえ・・・の「大王廟の悲鳴」のエピソードで、どちらも謎の不思議性と明快な推理が魅力的だ。
テレビドラマ向けのミステリーのようにも思える。ドラマ化して日本放送してくれないかな。 -
Posted by ブクログ
たなぞうで知った本。中世アイルランドが舞台であり、探偵役が修道女であるという点は異色だが、謎解きやトリックは正統派のミステリ。端正な雰囲気がある。キリスト教が支配的になりつつも古い信仰の影響も色濃く残る時代、ともすれば迷信に捕らわれがちななかで、理性的に事件を解決していくフィデルマが爽快。作者ピーター・トレメインは歴史学者でもある。この時代の法律「ブレホン法」や、フィデルマがその資格を持つ「ドーリィー(法廷弁護士)」など、アイルランド中世史を垣間見ることもできて楽しい。このシリーズは他に3編の長編が既訳。短編・長編合わせて未訳のものが十数編あるようだ。結構、固定ファンがつきそうなシリーズだと思う。機会があれば長編も読んでみよう。*何だか一時期、たなぞうでしょっちゅう見かけたような気がしていたけれど、登録されている感想は4人分。・・・あり・・・? もっと見かけた気がするのに・・・?*本の内容に文句はないが、この邦題はいまいちかなぁ。何だか取って付けたようで。『修道女フィデルマ短編集』で十分だと思うのだが。
-
Posted by ブクログ
ネタバレフィデルマがモラン師のいるタラの学問所に入学し、最初に解決した盗難事件を描いた「化粧ポウチ」他6篇を収録する、フィデルマ・シリーズの短篇集4作目。
最初の2作「化粧ポウチ」と「痣」はフィデルマの学生時代を描いた作品なのだが、こんな圧迫面接どころか圧迫〈日常の謎〉をやってくる法律学校があっていいのか? 権威ある大法官と問答するプレッシャーだけならいいけど、わざと遅刻させて精神を追い詰めるために学生のドアを押さえつけることが正当化されるのは最悪なので、フィデルマはモラン師に試験の定義から見直すよう提言すべき。
「死者の囁き」「バンシー」「昏い月 昇る夜」の3篇は古代アイルランドの法と経済がホワイダニットの鍵になる、フィデルマらしい"いつもの味"の作品たち。「昏い月〜」はロス船長が再登場するのが嬉しく、判決シーンはフィデルマ版「ヴェニスの商人」のようで面白かった。
そして今回一番楽しかったのは、ローマ貴族が偽史づくりにフィデルマを担ぎ上げようとする「消えた鷲」。ブリテン島の歴史とローマ人の誇りとフィデルマの冷笑が絡み合い、歴史ミステリーとして面白かった。『蛇、もっとも禍し』では宝探しとフィデルマの冷静さが相性悪いなぁと思ったが、今回はうさんくさい捏造貴族にピシャリと鉄槌を食らわすスカッとケルト!な展開だったのでしっくりきた。
フィデルマ・シリーズも、読んでいないのは邦訳最新作の『憐れみをなす者』だけになってしまった。水戸黄門のように安心できるミステリーなので、これからも邦訳が続くといいなぁ。 -
Posted by ブクログ
フィデルマはアイルランドのキャシェルの先王の王女であり、上位弁護士の肩書をもった美貌の修道女。彼女の行くところに事件あり、な短編集。
巡礼の地、ローマの小さな教会で起きた毒殺
フィデルマの幼なじみにかけられた夫、子殺しの嫌疑
吹雪の中、逃げ込んだ山荘に出る亡霊
大王即位に必要な宝剣の盗難事件
千五百年前の王の墳墓から見つかった死体
淡々と事件を解決するフィデルマがカッコイイ!
事件解決後の一言がじんわりした後味だったり。
まずは短編で様子をみて、と手に取ったけど、長編も読みたくなる。
中世アイルランドの政治、キリスト教のせめぎ合いが絡むのでそういう意味でも面白かった。 -
Posted by ブクログ
王女で弁護士で裁判官で修道女でしかも美人、というハイスペック極まる女探偵が活躍する中世ミステリ。
ハイスペック設定だけ見ると、富豪刑事(筒井康隆)を思い出しました( ^ω^ )
財産を湯水のように使って犯人逮捕の罠を張る神戸大介も良かったですが(笑)、今作のように教会の権威や王族を前に堂々と渡り合うタイプの探偵も良いですよね〜( ^ω^ )私はこれこれこうする権限を持ってるのよ!と事件現場に颯爽と登場する修道女の姿は読んでいて小気味良いです\(^o^)/
ただ、謎解きに関しては論理性にやや欠けているような印象を受けました。牽強付会とまでは言いませんが、根拠が薄弱だったり発想の飛躍が目についたり…。そこを強引に思わせず軽やかにねじ伏せながら推理を披露するフィデルマの手腕、これに尽きるような気がします。
提示される謎自体は非常に魅力的で読み応えがあるので、「読者が犯人当てを楽しんだり探偵の推理展開を楽しむ」と言うより、このフワフワしたミステリアスな世界観を楽しむ方が正解な作品です。多分←
◎聖餐式の毒杯…教会で聖体拝領の儀式が執り行われる中、最初に聖杯のワインに口をつけた青年が急死した。偶然その場に居合わせた美貌の修道女・フィデルマが解決に乗り出すが…。
◎ホロフェルネスの幕舎…夫と子供を殺した容疑で拘束された親友を救う為、捜査に奔走するフィデルマ。殺害動機や目撃証言など、状況証拠が圧倒的に不利な状況下、彼女は親友を救うことができるのか?
◎旅籠の幽霊…吹雪を避ける為、助けを求めた旅籠の主人夫婦は、奇妙な現象に悩まされていた。果たして幽霊の正体とは?
◎大王の剣…王位継承の正当な証として不可欠な剣が、即位式の前日に何者かに盗まれてしまう。
◎大王廟の悲鳴…悪名高い暴君が眠る墓から響いた断末魔の悲鳴。掘り起こした廟からは、つい先ほど絶命したばかりの男の死体が発見される。