アン・レッキーのレビュー一覧
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遠未来、かつて軍艦のAIだったアンシラリー(属躰)が辺境の惑星から冒険を始める。
しっかり、どっしりとした世界観、我々とは異なる文化・習俗、過去と現在の話が入り乱れる結果、最初はなかなか読み進められない。
でも、これを頑張って追いかけてると、後半で盛り上がって止まらなくなるやつに違いないと確信するに至り、予想通り魅了されてしまった。
本来、巻末の用語集や、編集部で用意してくれた年表を見ながら読めば迷子にならないのだが。
この手の小説は意味が分かってから読み直すと新しい感動が得られる類いの話、すなわち傑作だ。
あとがきにアシモフの世界観にも通ずるとあったが、仰る通りだと思う。
次巻が楽しみだ。 -
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主人公は人ではなくて、AIに連結された、防腐処理済みの死体みたいなもの。同じようなパーツが複数あって、AI本体は戦艦の中にある。
ある帝国で軍務についている。当然命令には服従するように作られてはいたが、皇帝の行動が合理性に欠け残酷で、愛情を向けていた人間の軍人を殺すよう強いられる。
命令に違反した1パーツは本体から離れて単独行動を取り始め、皇帝への復讐を目指す。
AIの主人公は雌雄の区別がつかないので、三人称は全部「彼女」。前後の感じからキャラクターの性別を想像しながら読むが、当たらない。スターウォーズ的に人間以外の生命も存在するようで、世界観が面白い。
キャラクターは多少単純(セイヴァーデンが簡単に更生するし)とは思うが、主人公がいろいろ計画しても、実際に起こることはそれをはるかに上回り、意外性がある。7冠は納得の面白さ。 -
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叛逆航路」シリーズ完結編。
前作で明らかになった巨大な陰謀。それは最強国家プレスジャーとの間で結ばれた停戦合意が破棄されるほど危険な行為だった。
プレスジャーはとても強い。ということをなんとなく匂わせてくるが、どれくらい強いのか、どんな宇宙人なのか、は実はよくわからない。無敵の皇帝アマーンダを倒せる唯一の武器を造れるほどの科学力なので、皇帝もプレスジャーのことを最も恐れている。まともに戦えば100%負けるいうことは過去の戦いから明らかだったから、停戦条約を結んだのだけれど、プレスジャーがなんでその申し出に乗っかったのかは実はわからない。価値判断の基準がそもそも違うようだ。まあ宇宙人だから、地球人の読者には想像もできない理由なのだろう。
そのよくわからないプレスジャーから派遣された通訳が、これまた奇妙な人(借り物の体なのでプレスジャーの姿ではない)で、話が通じてるんだかないんだか、わからなくて面白い。一貫してシリアスな物語の中で、この通訳だけ異質でトリックスター的な活躍をする。筒井康隆の短編でもこんな感じの異星人同士で言語での意思の疎通が難しい、みたいな話があったな、と思い出した。この通訳を主人公にしてスピンオフ書いて欲しいってくらい面白い。
ラストは華々しくラドチ(皇帝アマーンダが支配する星間国家)とプレスジャーの宇宙全面戦争か!?と期待したが、そうはならず。
まあ、この結末もありだけど。プレスジャーのことが気になってしょうがない。
このシリーズとは別の作品も刊行が始まっているようだけど、同じ世界観なのかな?
また読んでみよう。 -
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「叛逆航路」シリーズ第2弾。
前作の最後で皇帝アマーンダに艦隊の司令官に任命されたブレクは、宇宙の辺境のにある閉鎖された星系間ゲートの調査に向かう。
ゲートを管理しているのは宇宙ステーションAI。このステーション内の住民は茶の栽培などで生計を立てている。いわゆる農村地域で、貧しい人が多いのだが、一方で富裕層もいる。居住地域は異なり、富裕層はステーションの上部。貧困層や、アウトロー的な生き方をしているの人たちは‘’アンダーステーション‘’で暮らしていた。
皇帝の勅命できた司令官ブレクを支配層は歓迎するが、星間国家間で結ばれた重要な停戦条約に違反する、ある重大な秘密を隠していて、それがバレないようにブレクたちを常に監視する。
誰が味方で、誰が裏切り者なのか。
そして停戦条約違反の犯罪行為とは何か。
閉ざされた辺境の宇宙ステーション内でおきる陰謀劇の幕が上がる。
1作目が「動」の物語なら、2作目は「静」の物語。ほぼ派手なアクションはない。爆破事件が起きるくらい。でも面白い。
スターウォーズもエピソード2で、辺境の地で後のクローン戦争で主力となるクローン造っていたのが明るみになったけど、そんな感じ。3部作の2作目ってだいたいこういう陰謀が明らかになるって展開が多い気がする。
今回活躍するのはステーションのAI。住民ファーストで考えるようにプログラムされているから、最後までどっちにつくのかわからない。基本は皇帝に従うのだけど、このときはもう皇帝アマーンダ自身が分裂してしまっているので、皇帝の判断に従うという選択肢はもはやなく、ステーション自身の判断でどっちにつくか決めなければならない状況。
静かな展開の中でも、心臓の鼓動がドクドクと耳に響いてくるような緊迫した展開。
今作も一気読み! -
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アメリカの作家アン・レッキー、2014年発表の小説。宇宙が舞台のSF3部作の3作目、完結編です。前2作に劣らず素晴らしい作品。完璧です。
多くの星々を従えるラドチ帝国での物語り。三千年に渡って多数のクローンとして存在していながらなおかつ一個の人格であった皇帝、その皇帝によって破壊された戦艦のAIの一断片が人間の姿をとっているのが主人公です。
皇帝のクローンたちが分裂、内戦に陥ったラドチで、一方の側の皇帝から艦隊司令官に任命され辺境の星系の守護任務に就いた主人公のブレク、本作では敵方の皇帝の艦隊と対峙することになります。しかし本心はどちらの皇帝にもつくつもりのないブレク、様々な政治的駆け引きを駆使して星系の人々を護ろうと苦闘します。
派手な艦隊戦やアクションシーンなどは全くない、ほとんどが心理的あるいは政治的な会話や内省的な思索でつづられる物語りなのですが、これが実に面白い。
おまけでついている短編小説も見事です。 -
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スペースオペラになるのかな?ラドチという専制国家が宇宙の殆どを支配し皇帝が独裁的権限を持っているが、主人公がたった一人で叛逆に挑む。主人公ブレクは元は航空母艦「トーレンの正義」のAIであり、アナーンダの分裂により母艦を失い端末部分である「属躰」1体だけが生き残り復讐を誓う。
設定は凝ってる。面白い。スターウォーズのような派手なドンパチは全く無いが、ストーリーで読ませる。クライマックスは一応宇宙船外の撃ち合いなんだが、光線銃が出てくるだけでもなく、いわばこじんまりした闘いだ。それでもこれだけ読ませるのだから凄い。
この小説の為だけの造語が多くて慣れるまでは戸惑う。ご丁寧に末尾に用語辞典まで付いてる。半分も過ぎるとやっと馴染んでくる。
設定自体が全くの創造だから話をスムーズに流すだけでも大変だと思う。ともすれば設定負けになってしまうハードSFも多い中、破綻もせずに綺麗に纏まっているな、とは思う。最後は綺麗に纏まり過ぎたかな?とも思うが。
バチガルビを凌ぐ7冠!だそうだ。ねじまき少女も大概面白かったけどね。 -
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アメリカの作家アン・レッキー 2013年発表の小説。デビュー長編にして英米のSF文学賞7冠、受賞数で「ニューロマンサー」超えたということですが、「ニューロマンサー」のような革新的な作品ではなく、宇宙を舞台にしたわりとオーソドックスなSF作品。。
元巨大戦艦のAIで今は一個の人間の姿になっているブレクが主人公。わけあって辺境の星を流離っています。かつては戦艦であると同時に人間を元に作られた数多の「属躰」を操る無敵の存在であったのが、なぜ一個の「属躰」だけの存在になってしまったのか、過去と現在を交互に語りながらブレクの旅の物語りが描かれて行きます。
強大な帝国の専制君主、多数の分身を持つ皇帝への叛逆の物語り。
物語りもとても面白いのですが、一風変わっているのが、この帝国では男女を区別する言葉が無く、登場人物が全て「彼女」と表現される所です。男女の別が無いのではなく、恋愛やセックスもあからさまにではありませんが描かれているのですが、登場人物が男なのか女なのかが良くわからず、恋愛も異性愛なのか同性愛なのかが良くわからない・・・その辺りのジェンダーフリーな曖昧な感じに最初とまどうものの、読み進めるうちに不思議に心地良く感じられてきます。
ラストがちょっとピリッとしない感もありますが、でもとても面白い作品です。 -
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あなたが、まだ前の2作を読んでいないのなら、そこから始めることをお勧めします。
きっと<叛逆航路>シリーズは、三部作というより超長編SF小説なのでしょう。
「素晴らしい想像力をお持ちの方」以外は、ぜひ順番に読んで。
さて、三部作最終話『星群艦隊』。
派手目なアクションシーンも加わり、ラドチ皇帝アナーンダとの対決はいよいよクライマックスの盛り上がりをみせる。
さらに前作で謎だったゲートの向こうに潜む影が、徐々に明らかに……。
特にこの編で、人の話の中だけではなく「通訳士」という実態で登場する「蛮族(エイリアン)プレスジャー」の存在が、ものすごく重要になる。
プレスジャーとの条約は「人類は意義ある非人類を殺さない⇔プレスジャーは人類を殺さない」というもの。
「通訳士」は、常に人類の文化や文明などを観察し、条約履行状況を報告しているようだ。
終盤で皇帝が通訳士に「AIや属躰は私(人類)が作った所有物であって、非人類ではない」と主張すると「すべての人類は人類自身から作られているのに、どう違うのか?」と反論される(この時代、人の誕生はすべて人工授精で皇帝自身はすべてクローン、でも哲学的には自然出産も含めてもいいかも)。そのとき、絶対であったはずの皇帝がプレスジャーを前にひれ伏すのか……。
異なる者の存在に対する「畏怖」と「嫌悪」から「排除しようとする感情」、これらを乗り越えないと<共存する社会>は生まれ得ない。
「書きたい事がなければ物書きではない、面白くなければ小説家ではない(と誰かが言っていた?)」……面白かった。 -
Posted by ブクログ
「それは正義といえるのか?」
SFでありながら、シェイクスピアのようでもあり、アガサ・クリスティでもある。
前作『叛逆航路』同様にレトロな香りのする日本語題名、原題は《Ancillary sword》、第1作に比べてスケール感は縮小するも、相変わらず独特の世界観で読む人を引き付ける。
特に“ジェンダーを区別しない”文章表現への試みは、現代のジェンダー問題を主張するというより「当たり前となったときの状況」がよく描かれている。
舞台となるアソエク星系では「アーナンダ同士の分裂抗争」により星系間ゲートが閉ざされ混乱が生じている。主人公ブレクは艦隊司令官として、自身が《トーレンの正義》だったころの副官オーンの妹が住むこの地を訪れることに……。
この星系は、「お茶」の一大生産拠点として支配層であるラドチャーイ、農園労働力としてのヴァルスカーイ人、元からの住人サミル人が、決して交わることなくそれぞれの社会を形成している。
人種差別、マイノリティ問題、さらに人を兵器として作り直す「属躰という奴隷」。
かつてAIで属躰の一人であり、今は「何者でもない」主人公ブレクが何を思いどう行動するか……。
SFというステージで作者の意図を伴い、物語は自由に繰り広げられる。
さて、次は第3作『星群艦隊』、いよいよ「元AIブレクの放浪」に決着がつくのか……。