芳川泰久のレビュー一覧
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ネタバレレオンとの関係が冷め、しかし借金はかさみ、のっぴきならなくなり、薬剤師の鍵付き倉庫を開けさせて、無理やり砒素をあおる。
自らが招いた、破滅。
夫である医師シャルルは、後に、手紙を発見し、妻の不倫を知る。その後しばらくして亡くなる。
前半は、退屈で、挫折しそうになった。後半から急に話が動き出し、次第に追い詰められていくエンマの様子に夢中でページをめくった。エンマが亡くなって即、物語が終わると予想していたんだが、その後の描写も予想外に長かった。そして、あっけなくシャルルが亡くなったのには、ビックリ。
あとがきを読んでビックリしたのは、実際にあった話を元に小説が書かれた、ということ。こんなことが -
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主人公エンマは自分が既に持っているもの、手を伸ばせば届くものには幸せを見出さず、だからこそ遠くにあるもの、かけ離れたもの、失ったもの、身分不相応のものを追い求める。その気質は奇しくも彼女の忌み嫌う市民的な平凡さそのものとして描かれているように感じた。おそらくフローベールもそのように意図して書いているのだろうと思われた。
対して夫シャルルには特別の同情を禁じ得なかった。ただただ可哀想だった。
また文体や自然描写は悪くはないけれど、一文一文が長くて難解なため、もう一回読まないと全然分からないと思う。フローベールは自由間接話法を初めて小説に取り入れたとされているそうだ。私は語り手と登場人物が -
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翻訳が馴染まないと思って読んでいた。解説に、著者と同じ読点を使ったと書いてあり納得。原文の雰囲気を取るか、日本語にした時の自然さを取るかは難しいところだ。ボヴァリー夫人も、もう少し落ち着いた口調の方が合うのではとか、物語以外のことをたくさん考えてしまった。海外文学は翻訳で登場人物のパーソナリティも全てが変わる。他の翻訳も読んでみたいと思った。
鹿島茂の本に、ボヴァリー夫人は3人いる、と書いてあった。そういえば、初めの方に何人もボヴァリー夫人がいて混乱した。シャルルの母、最初の妻、後の妻だ。この3人が凡庸なシャルルを成功させようとする物語という見方もあるという論に、本作の深さを感じた。 -
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情熱的な恋を夢みるボヴァリー夫人(エンマ)の物語です。夫シャルルは優しくて一途で、エンマも彼のことを好きになれたら普通の幸せを手に入れることができたのだろうと思います。
けれども現実はそうはいかず、エンマは浮気をし、莫大な借金を抱え、服毒自殺をしてしまいます。エンマは幸せを追い求め続けていましたが、決して幸せだとは思えませんでした。彼女にとっての幸せとは何だったのか、よくわかりませんでした。
また、解説を読んで、フローベールが「自由間接話法」を用いて「神の視点」を排除したと知りました。この“表象の革命に値する(p656)”話法には、感心しました。