田宮彩のレビュー一覧
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妖精に魅せられて
タイトルともなっている「森の妖精」とはいったい何者なのか、は明かしません。本作品は雰囲気で読ませる藍川作品の中でお特にヤマ場である男女の営みに持っていくまでの過程が秀逸です。舞台は十和田湖、八甲田山。京都など古都をよく場所に用いる著者にしては珍しいが、北東北の数々の名所の美しさがヒロインの揺れ動く心情に投影され、妖精の魔法にかかったがごとく甘美な空間を演出しています。性描写も丹念で、一歩一歩丁寧に読者の気分を高めてくれます。ただ一つ、個人的な趣味かもしれないが、ヒロインの設定が子持ちというのがちょっと、生活感が出てしまい、盛り上がりを冷ましてしまうかも。そのため星は一つ差し引いて四つとしました
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中盤以降、燃え上がる情炎
独身・熟女・京都・突然の邂逅・・・藍川作品の何種かの神器、本作でも炸裂。出逢いの現場は、洛北は戻橋。ただ類作と異なるのは、相手の男の出現からベッドインまでの展開が速いこと。凝縮されたというより、やっつけで飛ばされたという文章。意欲が筆先に乗ってないな、などといっぱしの評論家気取りで幾分否定的に読み進めたものの、いざ本番に差し掛かるや、180度とはいかないまでも、120度ほどは作品に対する見方が変わったのである。ヒロインは冒頭からの記述ではうかがえないほど、男女のことに貪欲な肉食女子であり、組んずほぐれつのタフな肉弾戦が読者の気持ちを盛り上げる。このキャラクター設定は大いに当たり、プレイの幅を多
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白梅一輪、描写も作中でポツンと
還暦間近の男が新婚の娘夫婦とともに初詣にやって来た鎌倉で、かつて懇意となった部下の女との偶然の再会を果たす。その折はホテルまで一緒に行くも結局は唇すら合わせることなく終わったふたりだが、時を超えて再び巡り逢い、今度こそ・・・となるが、読んでいていささか違和感あり。寒風に耐え、他に先駆けて咲く一輪の梅花の描写は可憐でつつましく、それでいて力強さを感じさせるが、物語と同化していないというか、白梅が単独で浮いてしまっており、メインである濡れ場と断絶されている。既婚者となっていた女性がどのような心の移ろいを経て主人公との不倫まで犯す気になったのか、という点まで踏み込んでおらず、深掘りされていないという