明石康のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
平明で読みやすい文章であったが、盛り込まれた内容は非常に充実している。国連という立場からの平和構築について、現場的な観点から生々しく回想されている。カンボジア、旧ユーゴ、スリランカにおける、私でさえ知っているような政治リーダーたちとの和平交渉の記録は、極めて貴重なものだと思う。明石さんの鋭い観察眼により捉えられた指導者像は、興味深かった(特にシハヌーク、ミロシェヴィッチ、カラジッチ、ムラディッチについて)。
明石さんは、特定の主体に対して肩入れしないポリシーを貫徹し、しかしながら相手の言い分・立場・背景を尊重しながら交渉を行った、慎重、冷静、柔軟、相対的、戦略的、現実主義的な調停者であったこと -
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
冷戦後、世界の安全保障の枠組みが激変するただ中で、カンボジアPKOやボスニア紛争の調停をはじめ、国連が主導した一九九〇年代の平和活動を指揮した日本人がいた。
もっとも困難な立場に立たされた交渉人―明石康は、シアヌーク、ミロシェヴィッチ、カラジッチといった現代史に名を残す政治家・ナショナリストたちと、どのように対話し続けてきたのか?
バルカン半島の現場を熟知するジャーナリスト木村元彦が、一年間にわたって連続インタビューを敢行。
誰よりも苛烈な現場を潜り抜けてきたミスター・アカシの交渉テクニックに迫る。
[ 目次 ]
反抗児
初の日本人国連職員
国連的アプローチ
文民統制
カンボシ -
Posted by ブクログ
* 私は敵を想定しない
紛争調停や平和維持のために行動しているからこそ、敵を想定しない交渉が生まれる。当事者同士は複雑な利害関係で動いており、譲れない点も多く一見欧米のメディアのように善悪二元論を持ち出す方がわかりやすいのだろうが、それでは力関係で物事が動いてしまう。平和を一時的にもたらすのではなく、長持ちさせるためには、当事者たちの納得が必要。信頼の構築には一般的に長い時間が必要だと思うが、それを一年半程度で成し遂げる明石さんはすごいと思う。
* 明石さんがなぜ信頼を獲得できたのか
* 相手を悪者として扱ったりせず、常に中立の立場にたって対話した
* 時間があるときは個人的にあったり、 -
Posted by ブクログ
「いかにも日本人っぽいふにゃふにゃした暖簾に腕押しみたいな奴だなぁ。」
明石さんをそんな風に思っていた時期が私にもありました。
私は海外のメディアに叩かれまくる彼しか知りませんでした。
しかし彼は、骨も筋もあるとんでもない調停者だったのです。
他者の間に入って「調停」を行うのに
変な先入観や正義感などがあってはいけない。
彼は意志と知恵と成し遂げている。
そして自分の行ってきたことを「常に最善だった」と胸を張っていえる。
間違い無くかっこいい。
生きた人間の姿がそこにあった。
弱腰でもなんでもない。信念と責務を全うする男の姿だ。
ただ、惜しむらくはこのタイトル。
内容が全然「独裁者」との -
Posted by ブクログ
国連事務総長特別代表としてカンボジア、ユーゴスラヴィアで
和平交渉にあたった明石康氏の交渉術、とあるが、
実際には「交渉術」というようなハウツー本ではない。
もっと生々しい、人間同士のギリギリのやりとりが語られている。
知らなかったが、明石氏のやり方は欧米では
元アメリカ国連大使ジーン・カークパトリックに
ヤスシ・アカシという人物は災禍だった。国連の歴史にも特筆される大災禍だった。
アカシのためにボスニアでの平和維持活動(PKO)は歴史上でも最も効率の悪い軍事行動となってしまったのだ」
と非難されるなど極めて評判が悪かったらしい。
だがそれはセルビア人=絶対悪として空爆を主張したアメリカ、