本シリーズの実写映画『放課後ロスト』の予習で読んだ。
男1人女2人のだらっとした数日間と痴情のもつれを描く「アイ・ニーヂュウ・ソー」、深夜の街で繰り広げられる予想外の人間模様を描く「深夜のコメディ」、静かで騒がしい夜を徘徊する少女を描く「tonight」、夜を舞台にした全3編からなる偶然と奇跡のオムニバス。
これまでの2巻とは異なり、"放課後"ではなく"夜"が舞台となった第3巻。
読んだら分かるが、もはや映画版とは無関係だった(よくよく考えれば、製作の時点では2巻までしか出てなかったという事情かもしれない)。
「アイ・ニーヂュウ・ソー」のハーレムっぽい展開はいかにも全2巻の作者って感じがするし、思えば「鬼灯さん家のアネキ」もそんな感じやった気が……(漫画は未読。あくまで今泉力哉監督による映画版を観たイメージだが)。
「深夜のコメディ」の同時並行で色んな人物が慌ただしく動いてる感じやら、キャラクターのテンション感とか、なんか「デュラララ」っぽいなぁとは思った。
正直、前作まではまだ退廃的だった性描写が今回はさすがに、成人漫画ギリギリラインに踏み込んでる(というか、越えちゃってる)感はあるのでハラハラする。
そもそも、作者がこの描写を"愛"というよりも、"不安"や"孤独"の表現として使うタイプの作家なので、そこは個人的にはあまり合わなかったかなぁと。
とはいえ、そんなモヤモヤ感も、詩的で美しい第3編「tonight」では煙に巻かれてしまった。
夜、1人歩いたときに感じる「孤独」や「センチメンタルさ」。
最近はあまり抱かなかった感情だったが、改めて物語の中でそれを表現されると、無性にかつての感覚が愛おしくなってしまった。