G.W.F.ヘーゲルのレビュー一覧

  • 精神現象学 上

    Posted by ブクログ

    最初ちょっと何言ってるかわからないって感じだったけどヘーゲルの文体が体に馴染んでくる。
    人が意識を通じ、外界という否定性を内に引き入れるように肥大していく精神の永遠の旅。
    ロマン主義の土壌があるドイツならではのビルディングロマンスとしての物語としても読める。
    何度も何度も読み直すことが大事。

    0
    2025年04月15日
  • 精神現象学 下

    Posted by ブクログ

    面白かったですね。
    (数年前に一度読んでいて、今、再読中)

    もちろん哲学書の御多分に洩れず難解なのだけれど、この難しさの質は「何とかなりそうな」難しさです。私たちにも馴染みのある合理や理性の射程範囲にあるような。まあそれでも私のような凡人には難解極まりないのですが。

    私個人としては哲学のテクストに文学性や矛盾性のようなものを求めているふしがあります。ヘーゲルのこれはまさにその宝庫で楽しく味わえます。

    本書の面白さの一つは、困難や苦難を肯定し、受容するきっかけを与えてくれる(かもしれない)こと。
    荘子の「楽しむところは窮痛にあらざるなり」を思い出します。
    対立や衝突というものをどのように見

    0
    2022年08月05日
  • 精神現象学 下

    Posted by ブクログ

    P154 381
    「反抗する自己意識である場合にのみ、自己はみずから自身が引き裂かれ、分裂していることを知っている。そしてそのように分裂しているのを知ることで、自己はただちに分裂を超えて高められているのである。」「肯定の対象となるのは、ひとり純粋な〈私〉そのものだけである」
    この辺りとか、本当にナショナルアイデンティティとかに悩んだりしていた私には刺さる表現だった。ヘーゲルは国家を枠組みとしてみているけど、同時に国家の限界も思考しているという印象。

    0
    2021年09月16日
  • 精神現象学 下

    Posted by ブクログ

    1年ぶりに読み返したけど面白かった!
    良心が赦しによって相互承認に至る過程は特に面白い。しかし、現代に引き付けて考えてみると、ヘーゲルの言うような「赦し」による和解が難しくなっているように感じる。むしろ、道徳の段階のような、自己の正しさに固執する契機の方が目につくのではないだろうか。自己の知の有限性を自覚する良心だからこそ、和解が可能なのか。そうなると、情報が溢れる現代社会において、良心の段階に達することこそが難しいのかもしれない。

    0
    2021年07月29日
  • 精神現象学 下

    Posted by ブクログ

    『精神現象学』のうち、精神、宗教、絶対知の各部を収める。理性にまで達した人間の意識は、それからも遍歴を続ける。精神においては、人倫、教養、道徳が問題とされる。しかし道徳に至ってなお、精神と対象の分裂が終わったわけではない。そこで宗教へと精神は展開されるが、そこでもまた分裂は終わらない。最終的に、意識ないし精神と対象との和解がもたらされるのは、絶対知すなわち学の境地においてであるとされる。人類の知の展開と自己の意識の展開とをパラレルなものとして把握しながら、自己の知を歴史のもとに把握する、というのは卑俗な概括かもしれないが、ヘーゲルの目指した学の何たるかを理解しようとするのであれば、この書は非常

    0
    2012年12月24日
  • 精神現象学 上

    Posted by ブクログ

    哲学・思想史でヘーゲルの名を不朽のものとしている名著。本訳では、序論、緒論、「意識」、「自己意識」、「理性」を上巻に収める。序論では、ヘーゲルの学の理念が語られる。それ以降は、精神の現象学すなわち「意識の経験の学」が展開されるが、それはあらかじめ不動の観点に立って意識を観察するというものではない。むしろ、意識の形成を「感覚的確信」から、あたかも意識を遍歴していくように、各々の観念を展開しては廃棄していく。そうした運動こそが「概念」であるというヘーゲルのテーゼは、概念についての概念の変革を企てたものだと理解できるだろう。意識がいかなる経験を経て、究極的にいかなる境位にたどり着くのか、それが「精神

    0
    2012年11月19日
  • 精神現象学 下

    Posted by ブクログ

    読み通すだけで一年三ヶ月かかった。
    キリストの死と再生と三位一体、ギリシャ悲劇「アンティゴネー」の解読(というのか?)などまで飲み込んでしまう破格の展開にびっくり。

    0
    2009年10月04日
  • 精神現象学 上

    Posted by ブクログ

    ただでさえ難しい内容の上、専用の辞書がいる直訳調の翻訳。「即且対自的」「自独存在」「対自存在」って言われて何のことだかわかります?長谷川宏「新しいヘーゲル」「『精神現象学』入門」、西研「ヘーゲル 大人のなりかた」を脇に置いてなんとか上巻は読み通す。★五つは読み通した自分へのご褒美。

    0
    2009年10月04日
  • 精神現象学 下

    Posted by ブクログ

     後半は〈精神〉章から。普遍性と個別性の統一的表現である〈ことがらそのもの〉に到達した自己意識が、立法的/査法的理性を持って恣意的にこれを認識しようとしたのに対し、社会制度を本質的なものとみなしこれを自らの行為で作り上げようとするのが〈精神〉。「精神」という名前とは裏腹に、それは万人の行為の根拠であり、自己の本質を内在化した人々の自覚的行為で作り上げられるような社会的な実体を指しているようだ。
     個人と社会が美しく調和した〈人倫の世界(ギリシャ)〉では、精神は普遍的実体としての〈人間の掟〉と個別的意識としての〈神々の掟〉の二態で構成されるが、そこでは自ら考え行動する自由な主体が存在せず、個人は

    0
    2023年05月03日
  • 精神現象学 上

    Posted by ブクログ

     古典哲学を解説本でなく直接原訳を読もうと思い立ち、デカルト、カントの次に選んだのがこのヘーゲル。カントの認識論を読んで大陸合理論に興味を持ったのが理由の一つだが、調べてみるとどうやらヘーゲルは哲学研究者の間では素人が迂闊に手を出してはなら哲学者の最たるものとされているらしい。普通はもっと他の哲学者に親しんでから手を出すべきもののようだが、しかしそんな遠回りをしていては僕のような門外漢の遅読者はいつまで経ってもヘーゲルに辿り着かずじまいだろう。だから、順序なんか関係ない、理解できなければそれまで、という軽い気持ちで読み始めた。僕は学徒ではないのだし。もちろん徒手空拳で挑む愚を避けるべく、事前に

    0
    2022年01月03日
  • 精神現象学 上

    Posted by ブクログ

    非常にわかりやすい新訳という触れ込みであったが、残念ながら流し読みができなかった。
     わかりづらい。文字が大きいので老眼にはいいとは思ったが、文字間隔と行間隔が詰めてあるのでそれほど読みやすいとはいかなかったのが残念。

    0
    2019年11月16日
  • 精神現象学 下

    Posted by ブクログ

    再読。
    しかしヘーゲルは苦手である。何度読んでもやっぱり苦手だなと思った。
    西洋哲学史上最も重要な代表作の一つとして尊重されている本書、最初の方は、「どうしてわざわざここでこんな概念を持ち出さなくちゃならないんだろう」と腑に落ちないながらも、まあ、すこぶる複雑な論理に知的興味を惹き付けられないでもなかった。しかし、ヘーゲルの言う「精神」は実体化し、いつのまにか共同体や果ては「国家」をも支える原理となってしまう。このへん、ルソーの「一般意志」とも共通点があるのかもしれないが、それと同様に危険な思想でもある。本書を読んでいると、あの「エーテル」というヘンテコな(誤った)当時の科学的常識が思い出され

    0
    2016年08月14日