中丸美繪のレビュー一覧
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良く取材してあり、なかなか読み応えのある本で、読み終えるのに時間がかかった。
小澤征爾というと、世界的な指揮者であり、いつもニコニコしていて人柄も良いというイメージだったが、この本を読んで、そんなイメージが一変した。人柄が良いのはその通りだが、野心家で、非常に政治力もあり、チャンスは、必ず手に入れるという貪欲な人物である。秀吉は信長の草履を懐に入れて暖めたというが、小澤さんはカラヤン、バーンスタインの草履を舐めたと書かれている。
世界で活躍するには、実力だけではダメだという厳しい世界を感じた。
それにしても、小澤さんが日本の音楽界に与えた功績は大きいと思う。 -
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昨年亡くなられた小澤征爾氏の本格的な評伝。小澤氏と言えば、日本人として(東洋人としても)初めて欧米で認められた指揮者、ちょっと型にはまらない指揮者というイメージです。本書は小澤氏が指揮者として生きることを決意し、そして単身ヨーロッパに乗り込んで、巨匠カラヤンやバーンスタインに認められてキャリアを形成する生涯を丁寧にたどっています。
ギリギリの資金を調達し、貨物船にスクーター1台とともに渡欧、そこで指揮者コンクールに優勝してキャリアを積んでいく様子は、読んでいてワクワクします。コンクール課題曲を勘違いし、徹夜で課題曲を勉強しなおして優勝したとか、どんな長い大曲でも常に視線をオーケストラに飛ばすた -
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日本屈指に有名な指揮者の評伝
芸事の中で指揮者は
生前に評価を得なければ
形として物が残られない
ところから役者俳優演技者に近いものがあるのかもしれない
指揮棒を振っている背中は評価されないので
自分が演奏していない音にどれだけ自分の名前をこすりつけられるか
という点で
評伝にするには興味深い題材であると思う
読んでいるこちらに音楽知識が皆無なので
話題意の取り落とし多そうだが
例えば(当然だが)解説と比しても評より伝よりの評伝
「昭和の企業経営者」伝もの風な日経私の履歴書みたいな書き様は
過不足なく感じた
音楽を文章で伝えろったって無理な話であるそりゃそうだ -
Posted by ブクログ
楽団員が去ったホールに呼び戻され、ステージのすぐ下で拍手する聴衆に軽く頭を下げる朝比奈隆の写真を何かのきっかけで見た。そんな光景は見たことがなくて憧れた。「95歳まで舞台で上がる」と言い続けたのを初めて知った。他の国では生まれえないし、これからの日本でも決して生まれないだろうマエストロの来歴と音楽に対する思いを丁寧に、丁寧に書き尽くしている。筆が走っている部分、止まりそうになった部分もはっきりとわかる。著者の朝比奈に対する敬愛の思いが伝わってくる。表題は朝比奈が語った言葉ではない。けれど、心に秘めていたのだろうと納得させられた。敬遠してた「朝比奈のブルックナー」を急いで購入した。
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2008年9月に文藝春秋から出た指揮者・朝比奈隆(1908-2001)の評伝の文庫化。
朝比奈隆という日本を代表する指揮者の生涯は、とてつもなく長い。
すでに戦前から京大オケ、大阪中央放送局オケさらには上海、ハルビンのオケと指揮者としてのキャリアをスタートさせていた。
そして、戦後にあっては大フィルの設立、育成・発展に尽力すること半世紀。
本書はその出生の秘密から紐解き、朝比奈の暗い生い立ちを描く。朝比奈自身が父母に対して複雑な思いを抱くのは分かるが、それをさらに投射するように息子の千足が父への思いを吐露している。家族に対して愛情を注ぎきれない朝比奈隆の内面である。
一方、表の姿である指